あらすじ
5年近く内戦が続き、ISを生み出し、難民問題も生じているシリア、秩序が形成できないイラク、強硬路線を選択しつつあるサウジ、米国との宥和を狙うイラン、安定への道を歩もうとするチュニジア--。
IS(イスラム国)、イスラム教内の争い、近隣諸国への難民とシリア問題は国際情勢の危機の震源地となっている。過激派掃討やアサド政権の退陣など何を優先するかをめぐって関係国の間に大きな隔たりがあり、ISなどの掃討には地上部隊の派遣が欠かせないが、米国やアラブ諸国は消極的だ。米国は各国にシリアの安定のために協力を呼びかけているがうまくいっていない。
もうひとつ中東を不安定化させているのが、サウジアラビアとイランを一触即発の状態にしている宗派対立だ。イスラム教徒全体はスンニ派が9割を占める。イスラム教が生まれた現在のサウジアラビアやカタール、アラブ首長国連邦(UAE)などに多い。シーア派はイランやイラクなどに広がる。基本的に多くの信者は他の宗派を敵視しているわけではない。宗派対立が問題になるのは、経済の利権や政治の権力争いに結びつくからだ。
トルコでもクーデター未遂が起きるなど、中東では問題がない国はありえないといっても過言では無い。
本書は、「なぜ中東は崩壊してしまっているのか」という視点から、このような事態を生み出している歴史・経済・政治・社会・民族・宗教など様々な要因を解きほぐし、現地記者の目線で、最新の情報も織り込んで解説する。
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Posted by ブクログ
もちろん新聞の国際面をきちんと読み込んでいればこの手の本も必要ないのだけど、こと中東情勢に関してはいかんせん地理的に遠いうえ状況は複雑さを増すばかりで、少し気を緩めるとすぐに「あれ、エジプトの大統領ってモルシじゃなかったっけ?」とか「シリアの宗教的マジョリティってシーア派だっけ、スンニ派だっけ?」ということになってしまう。一度情報を再整理する意味でも、どこかのタイミングでこういった「まとめ本」に目を通すのは有益だと思う。歴史、対外関係、国別の内情等の複数の切り口から中東情勢が解説されており、決して深みはないものの簡潔にまとまっており大変読みやすい。