あらすじ
赤羽・立石・西荻窪──。古き良き呑み屋街にはそれぞれの歴史がある。アメリカ生まれの著者が酒のグラスの向こうに見たのは、闇市のにぎわう猥雑でエネルギッシュな東京の姿だ。歴史探索とはしご酒という二重の“フィールドワーク”を敢行し、居酒屋文化に頭脳と肝臓で切り込んだ渾身のノンフィクション。
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Posted by ブクログ
著者のマイク・モラスキーはアメリカ人の日本文学・文化研究者であり、ジャズピアニストとしての顔も持つ才人であるが、もう一つの顔が日本の赤提灯こと居酒屋をこよなく愛する”居酒屋ナショナリスト”としての顔である。
本書は、溝口、立川、大井町、府中、赤羽、立石、西荻窪などの町にある居酒屋を巡った飲み歩きエッセイという体裁を取っている。しかし研究者たる著者の力量がここからという感じなのだが、単なる飲み歩きだけではなく、その町の成り立ちやそのような居酒屋文化が発祥した背景としての町固有の歴史に関する調査もセットになっている点がこの手のテーマの本と一線を画しているポイントである。
町によっては公営ギャンブル、戦中・戦後の街娼、米軍による占領時代の記憶など様々な町固有のエッセンスが見え隠れする。そうしたちょっと硬めの内容と、極めてエッセイ的に柔らかい飲み歩きの記録が良い塩梅にミックスされて読者を飽きさせない。
もっとも、2011~2012年ごろの新聞連載を元にしているため、既になくなっている店も多いだろう(例えば、直近では大規模な再開発が始まった立石はその代表格)。その点で既に消えつつある飲み屋を懐古的に振り返られる、という意味合いも既に本書には生まれている。