【感想・ネタバレ】水曜日のアニメが待ち遠しい:フランス人から見た日本サブカルチャーの魅力を解き明かすのレビュー

あらすじ

日本のアニメやマンガがフランスで大きな支持を得ているといわれています。
実際、フランスで行われている「ジャパン・エキスポ」の来場者数は右肩あがりで、20万人を超す集客を誇るイベントに成長。
しかし、どうしてフランスで日本のアニメやマンガが受け入れられるにいたったのでしょうか?
本書では、フランスにおける日本のアニメ・マンガ文化の輸入史を黎明期から振り返るとともに、人気となった理由をわかりやすく分析。
フランスにおける日本アニメの放映が本格的にスタートした1970年代に幼少期を過ごした当事者だからこそ知るエピソードや実体験も豊富に交え、「クールジャパン」の正体に切り込みます。

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Posted by ブクログ

実は、サブカルチャーに限定せず、フランス(の人々)の歴史と現状を教えてくれる良書。昔のフランスでの日本アニメ(安価な埋草)は、最近の日本でいうと韓国ドラマと考えれば近いのかと。”クールジャパン”には、わたしも違和感があります。創造力の無い官僚が、乗っかっただけとしか。海外(特に欧米)で人気が出ると、手のひらを返したように態度(評価)を変えるエリート層の存在も、フランスと大して変わらないものと思います。

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2016年01月07日

Posted by ブクログ

フランスで幼少期、次々放映される日本アニメを夢中になって観ていたフランス中流家庭の男児が、長じて日本で日本語で、当時の思い出とその流行について分析した本。未知の文化圏から入ってきた無国籍風なテレビアニメが、既存フランスの人種的、社会的なカテゴリーを越えて人々を結びつける有効なツールであった、という視点は新鮮だった。
それにしても、日本の子供がテレビを観ながら味わっていた楽しさとワクワク感を、時代と文化を越えてフランスの子供が同じように味わっていた事を思えば、当時のアニメ制作者方には感謝しかない。ありがとうございました。

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2017年10月01日

Posted by ブクログ

日本のアニメ・マンガオタクのフランス人自称第一世代の著者が語る、フランスにおける日本アニメ・マンガ興隆史(ゲームも)とそこから発展した日仏比較文化論です。
1978年夏にフランスのテレビ番組『レクレ・ア・ドゥ』で放送された『UFOロボ グレンダイザー』が日本アニメ浸透の引き金になったとは意外な話でした。自分も小学生の頃に観ていた記憶があります。確か『マジンガーZ』シリーズなんですよね。しかし、ちょっとこれまでのマジンガーとは毛色が違っていて、兜甲児(声:石丸博也)も登場するのですが、これがまた脇役になっていてマジンガーZにも乗らないんですよね。子どもながらにこれには違和感があったことを憶えています。
どちらかというとマイナーなアニメだったと思うのですが、なぜかこれがフランス人の子どもにウケてしまった!『レクレ・ア・ドゥ』の当時の子ども視聴率は100%だと言われたそうで、場所も変わればわからないものですね。(笑)
日本のアニメがフランスの子どもたちにウケた著者の見解としては、様々な偶然や創造的誤解、フランスの社会や価値観とは異なる世界観への興味や親しみなどいろいろな要素があったとのことです。フランスにはないジャンルであったこと、翻訳などフランスっぽい編集がなされたことなどのほか、何よりも悪役にもそれなりの理由を見出す物語構成となっている日本アニメは、個の権利(自由)を優先させるフランスの価値観とは異なる他者への「共感」の世界観を挙げています。
そうして『レクレ・ア・ドゥ』そしてそれに続く『ドロテ・クラブ』で次々と放送される日本アニメのおかげで、フランスの子どもたち、特にエリート層とも移民層とも違うプチブル層の子どもたちに広く浸透したということです。また、このような「共感」の世界観は、これを題材に移民層の子どもたちとのより広いコミュニケーションにも発展できる可能性があったことを指摘しています。
そういえば自分の学生時代、研究室にはフランス人留学生がいましたが、『キャプテン翼』の話で盛り上がったことがあったっけ。(笑)
しかし、1980年代、フランスの価値観とは異なる日本アニメの世界観の故に、エリート層から巻き起こったパッシングの対象になったとのことです。誤解が逆向きになった時、異文化交流のマイナス面が強調されてしまうということでしょうかね。
その後、規制された日本アニメの放送に代わって、有志者は受動的に「アニメを観る」ことから能動的に「マンガを買う」スタイルとなっていたとのことですが、2000年代、フランス人オタクが集うエキスポに目を付けた日本の官・産が「クールジャポン」として進出することになったということでした。
個人的には「クールジャパン」など商売根性見え見えの上から目線のいかがわしさを感じるのですが(それに自分で「クール」と言うとは恥知らずなことよ)、その点は著者も同じでしたね。(笑)
著者の経験からして、ある文化やサブカルチャーの異文化への受容は、そのように「日本」であることを強調・洗練するように上から仕組まれることではなく、逆に偶然や創造的誤解により日常とは違う何かに巻き込まれた結果であり、冒険的なものであったからこそ魅力的であり、異文化の「間」に落ちる過程が面白かったということで、案外、何だかわからない変なものの方が人々の心、特に子どもの心には響いてくるのかもしれませんね。
著者はマンガ『北斗の拳』の翻訳も担当しているとのことで、そのうちフランス人と『北斗の拳』でも盛り上がる日がくると面白いな。

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2016年03月23日

Posted by ブクログ

アニメが大好きなフランス人から見た日本論。ジャパンエキスポに批判的なのがオタクらしい。シャルリーエブド事件にまで言及しているのが驚きだった。

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2015年11月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

フランスの漫画熱。この始まりはなにだったか。その当時日本の漫画のシャワーをたっぷり浴びたこどもじだいをすごした作家自身の言葉で綴られる。「北斗の拳」のフランス語訳も筆者。サブカルチャーまで広く知識は広がり,研究書といった感も。

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2016年02月15日

Posted by ブクログ

ああ~、どこの国でもオタク世代差における隔たりはあるものなのだなあ…一般化による特別感の薄れと、安易さへの危惧ってやつね…と思ってしまったのはやはり私が共感大好き日本人だからなのかもしれない。
日本アニメの受容方法の変化は、確かに最初から「外」のものとして受け取るよりはそりゃあ、そんなこと意識せず共感できた方が自分の体験として落とし込めるだろうなあ、と思うけども、インターネットに色んなものが溢れかえっているこのご時世では、たとえ子どもであっても「オリジナル」の情報を知らずにいるのは最早難しいことなのではないかなあ…と思ったりもした。
まあ、わからんけども。
しかしそれはそれとして、確かに「クールジャパン」はちょっと、と思う。思った。もう懐かしいワードのような気もする。

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2016年01月31日

Posted by ブクログ

フランス人から見た日本アニメ論ということで興味を持った。著者は「フランス人オタク第一世代」という日本史研究家であり、にして、フランス語版『北斗の拳』などマンガの翻訳も手がける人物。
「とにかく安かったから」という理由で、子ども向けプログラムが欲しかったフランスのテレビ局に買われた日本製アニメ。『UFOロボグレンダイザー』に子どもたちは夢中になった。悪役にも人間性があったり、アウトローが主人公であったりするストーリー性の深みは、アメリカ製子ども向けアニメにはないものだった。しかし、暴力的であるとの批判を受け、バッシングを受けるようになる。テレビアニメが下火になるとこんどはゲームやマンガといったカルチャーに人は流れ、しだいにファンが組織化され、ジャパンエキスポが台頭するといった流れが解説される。
 おおまかな流れの説明のなかに、彼自身の経験や、フランス人と日本人との考え方違いなどが挟み込まれていく形で、たいへん読みやすい。著者は「日本マンガの未来は明るいとは限らない」として、『NARUTO』終了後にヒット作がなく、市場は停滞もしくは縮小傾向にあると指摘している。また「クールジャパン」に対しても〈「二歩の作品」であることをひとつのブランドのように押し出したり、それを自ら「クール」と言ってしまうようなその政府のやり方は、過去の「偶然」に基づく成功理恵を無批判に再生産しようとしているようにも見える〉と否定的だ。
 また、日本特有の文化――たとえば部活動や先輩後輩といった学校文化をどう翻訳するか、といった問題への苦慮なども書かれていたりして、興味深い。

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2015年12月06日

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