あらすじ
ポップ史観で60年代を辿る自伝的エッセイ。
1960年、12歳。坂本九の「悲しき60才」でポップスに目覚めた亀和田少年は、ビートルズの登場で、それまで全盛だった和製ポップスが懐メロ化してしまったと嘆く。渋谷道玄坂で、毎月1がつく日に開催され、プロ作家も参加したSF好きの「一の日会」に通い、東京オリンピック開会式の日は、お祭り騒ぎに興味がなくて、ひとり千鳥ヶ淵でボートを漕いだ。吉祥寺の私大で右翼学生と渡り合い、デモで別セクトにいた美少女に恋をする。そして、童貞少年が夢中になった吉行淳之介の性小説、新宿のジャズ喫茶、映画館など、多感な少年時代をポップに生きた著者の痛快ネタ満載。「ビートルズとバリケードが俺の青春だ」なんて嘘っぱちだ。卓越した記憶力で、既成の60年代史観をくつがえす、名コラムニストの会心の作。
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Posted by ブクログ
亀和田さんという人を私はよく知らないけれど、
パラパラ見て文章が良いなと読んでみた。
ビートルズとも五輪とも無関係だった少年が夢中になっていたもの。
プレスリーとビートルズの狭間で生まれた甘い和製ポップス、
ジャズ喫茶、SFファンとの会合、サブカルチャー、学生運動、その中での恋。
一般的な60年代モノではこぼれ落ちてしまうような、
でも確かに存在したリアルな記録。
後半、学生運動の話がメインになるが、
セクト名やヘルメットの色は山ほど出ても、
観念で凝り固まっているようでもなく、
他に面白いことがないから暴れる、
デモに行きバリケードで寝泊まりし郵便局を駆け抜ける。
反対する理由と、目の前の対立する相手が直接つながっていない気がするが
ただ暴れたくて集まっていた若者も相当数いたのだろう。
ノスタルジーに陥らず、記憶の捏造もせず、
ちゃんとかつてあった事実を描く。
色あせずにそのまま描かれる60年代のリアル。面白かった!
表紙に描かれた江口寿史のイラストが、
激しい活動に飛び込んでいく少女の姿そのまんまで美しいです。