あらすじ
野武士たる著者は、世の散歩ブームを受けて「大阪まで散歩しよう」と思い立った。でも大人だから、一気に踏破するなんて無茶はしない。ちょっとずつ歩いて帰りは電車で戻ってくればよしとする。途中でビールを飲んだりウマイものを食ってもよし。温泉に入ってもよし。疲れたらホテルでマッサージとか頼んでもよし。かくしてユルさと苦難がないまぜの、大人の東海道散歩500キロ超が始まった!
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Posted by ブクログ
『孤独なグルメ』が有名な著者。
丹念に行く先を調べて、ルートをきっちり決め、美味しいもの・名所情報も事前にしっかり確認していく、今はやりの(と言ってもちょっと前だが)大人の散歩に物申す。
”テレビで見て、ガイド読んで、ネットで検索して下調べして、わざわざ出かけるのが散歩か?それは観光じゃないか旅行じゃないか。
散歩なんて、頭を使わずにその辺をぶらっとする、無意味なそぞろ歩きだろう。「さんぽ」と平仮名が似合う、のんきな気晴らしだ。「オススメ散歩コース」に沿って几帳面に歩くなんて、散歩じゃねえ!”
そんな気持ちで始めた、下調べをしない行き当たりばったりの大阪への散歩。
しかし、やっぱり目標があるとついつい真面目に歩いてしまうのも、ご愛敬。
有名な老舗のとろろごはん屋さんを通り過ぎて、まずいトンカツを食べてしまったり、国道1号と太陽の位置を頼りに西へ向かうも、道は必ずしもまっすぐではなく、太陽は必ずしも空に見えはしない。
けれど野武士(著者)はひたすら西を目指す。
こういうの、すごく好き。
どうでもいいようなことを真剣に、誰が見ているわけではなくても手を抜かず、気負わずさらりとやり通すのって、かっこいいと思ってしまう。
解説の山田詠美は”おもしろそう!でも、大変そうでやりたくなーい、そんな酔狂なこと。”と書いているけど、私はやりたい。
ひたすらぽくぽく歩きたい。
そして、意外や意外、著者の書く文章が、結構いいのだ。←失礼
”その人がどうやって生きてきたかによって、人の顔に刻々と彫り込まれていく。歳月にウソはつけない。”
解説の山田詠美もまたいい。
同じ文章に印をつけ、同じセリフにぐっときていることがわかって嬉しい。
「なァ、クスミ、俺、まだおいしいよ」
こんなことをさらりと言える人に、私もなりたい。
山田詠美も、歩けばいいのに。
「熱血ぽんちゃん、東海道を歩く」なんて本が出たら、絶対買うなあ。