【感想・ネタバレ】地獄のアリス 6のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 鼻水が出た。
 ネタバレ全開、いつのまにか最終巻が出ていたのだと吃驚する。

 中二病が抜け切っていない餓鬼んちょシュウが本当に殺人者になり戦争を開始し、自分は狂っていないと頑なに信じ込むケンジはとうとう黙っていられなくなって戦争を仕掛け、シュウに返り討ちにされる。
 照準スコープを通して、エリカのくちびるを読み取って、
「はは……ちょっとまってよ、シュウ。かおはうたないでくれる、いちおうおんななんだからあたし」
と、わざわざ、口に出して、それから、心臓部を撃ってあげたのは、わずかばかりのやさしさなのか。
 ケンジと対峙し、アリスのふりをしてケンジの腹元に飛び込みナイフで突き刺すシュウと、次あったときおまえのこと抱きしめてやると言ったろと叫んでシュウを抱きしめてやるケンジ。
 何度も、何度も何度でも、ケンジにナイフを突き立てるシュウ。
 フザけんな、フザけんな、フザけんな、フザけんな、それだけ叫びながらずっとずっと刺し続け、ようやくはっとしてケンジを殺したことに気づき、そうして、幻覚なのか、それとも最後のちからを振り絞ってなのか、ケンジのくちから、
「シュウ、やればできるじゃないか」
とことばが漏れる。

 アリスは突っ立ってシュウをみおろして、シュウ本人はケンジを刺し殺すまでに大なり小なり撃たれたりなんだりしていたために血がこぼれてとまらなくて、
 僕はもう終わりなんだ死ぬんだ、
 僕はもう自分がなにしてるのかわかんないよ、なんで僕がこんな目にあわなきゃいけないのしななきゃいけないの、
と血をぼたぼた垂らしながらごぱごぱ垂れ流しながら叫び続ける。
 アリスの存在意義は、だれかが自分を必要としてくれること。
 シュウもだれかに必要とされる責任もなく、だれかを助ける義務もなく、シュウがいてアリスがいるという事実だけがしあわせなのだと。
 所謂、EOEね。エヴァの旧劇場版ね。
 アリスのそういった想いや存在意義を認めてしまえばひとは堕落して死ぬしかなくなる。現実を認めず終わる。戻れなくなる。
 それを理解してもなお、初めからやり直す、考え直すから、それまでそばにいてくれる?とアリスに告げるシュウ。
 イライザがアラモにたどり着くも時すでに遅し、ケンジふくめたくさんの死屍累々。
 アラモで待ってるって言ったくせにフザけんな、と叫ぶイライザ。

 そうしてラストエピソードは、二十三歳になったイライザは少しだけおとなびて、水路を探し、生き続ける。
マキルダは吐血しながら日誌を書き続けていて、カラダにガタが来たようす。
 それで弱っているのか、アリスの体内に本当に汚染されていない水源地のデータがあったんじゃないか、もしや自分たちは神様の最後のチャンスを不意にしたんじゃないかと漏らす。
 そんなマキルダにたいしてイライザは叫ぶ。
「もしその噂が本当だったとしてどうだっていうのよ。今更そんな事言ったって何の意味も無いわ。姉さんは弱気になって現実から逃げてるのよ。そんな人間ほど罠に陥りやすい。ガルマやケンジみたいにね。アリスは罠よ。追いつめられたり迷ったりする人間はすぐそれにひっかかる。私は違うわ。そんなのに惑わされないから。自分の力で努力して何が何でも水源地を捜し出してみせる。私は絶対に諦めないし後悔もしない。未来は自分の手で勝ち取る物よ」
 178Pにて、マキルダに啖呵を切るイライザはとてもかっこういい。

 そうして砂漠が吹雪く中、砂漠には小鬼がいるんだと仲間から聞く。ドラゴンボールの十九巻を置いておけばキャラバンは襲われないのだと。
 結局人間になることを諦めて周りを脅かしながら生きるシュウを哀れだとののしり、少しだけ壊れて、違って、残って、そんな世界に自分たちは生き、それを変えなければならないのだとうそぶく。
 ラストはただループのような、ミルクのみ人形でしかなかったアリスをたいして暴言を吐くシュウがうつっておわる。黒王号をきこきこいわせながら、どいつもこいつもばかがと叫ぶ。

 なんともやるせなくて、でもそんなくそやくたいもない世界にしか生きる人間もいるのだ、と。

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2014年06月24日

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