あらすじ
近年、日本を取り巻く安全保障上の環境が激変。
昨年成立した安保関連法(平和安全法制)や、それを推進した安倍政権への賛否は別にして、日本を取り巻く安全保障上の環境や、本当に戦争になる恐れがあるのか(またはないのか)、さらにはどのようにすれば戦争を効果的に防げるのか、冷静に理論的な話も知っておきたい、という読者ニーズが高まっています。
そこで、各種媒体で海外における国際政治・関係論や安全保障論の最新の知見を、数字ベースや海外との比較の形で数多く発信している高橋洋一氏が、世界では標準的なのに日本人だけが知らない、安全保障論や国際政治・関係論の基礎をわかりやすく解説します!
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Posted by ブクログ
【書名と著者】
図解 図25枚で世界基準の安保論がスッキリわかる本
高橋洋一
【目的】
最近、日米間の距離感や中国からの尖閣諸島侵略や台湾有事、直近だと合成麻薬フェンタニルが中国発・日本経由・アメリカ行きというニュースもあり、安全保障に関して問題意識をもった。
だがしかし、全然知識がないのでイージーな本を手に取って原理原則論を身に着けたいなと思った。
【読後感】
タイトルの通り、スッキリわかった。本書を読むビフォーアフターで、ニュースの見方が大きく変わった。
【印象に残ったポイント】
・WW2以降、62年間で大なり小なり戦争は38回も発生していたという事実
期間でならすと、世界ではざっくり半年強に1回は戦争が発生していること。一方、日本ではWW2以降、戦争を幸運にも経験していない。
だから、良し悪しはあるものの、日本人は平和ボケしているという批判は緊急事態を知らないから、妥当なのかもしれないと感じた。
・リスキーな近隣国
政治関心の低い日本人(選挙の投票率より)が、外国の脅威に疎いのはやむないことと感じた。
一方、近隣にロシアと中国という仕組みからして異なる国があり、非民主主義の独裁国家が戦争するという選択は容易である点は、モデルとしては理解可能だが、肌感覚を伴う危険と感じにくい。
この点に、日本人の危機感のなさが、あやういのかもしれないと感じた。
・平和の5要件に見る最近の情勢
日本にスパイや移民を送り込む国、台湾に侵攻しそうな国、ざっくり10年に2回も領土侵攻する国、が国際的な組織の中心的な存在になってるので、国際的な組織への加入は寄与度低い点が納得。
また、軍事力に差がある場合に攻め込まれてしまう点も。そうすると、日本がまだ具体的な侵略行動をWW2以降、表立って取られてないのも軍事同盟があり、自衛程度?の軍事力があるから、自衛隊は当然必要だし、周囲の情勢に合わせて防衛に注力する必要はある。一方、9条を唱えてさえいれば戦争はない、なんてことはないと納得。
【ふりかえり・気づき】
・言葉の定義がふわっとしたまま、原理原則がない状態でニュースを見ると、洗脳されるリスクがある(安保改正すると、戦争するだとか。そもそも戦争とは?とか)
・戦争を知らない民主主義国家生まれの日本人であるわたしのあたりまえは、当然に世界のあたりまえではない。そもそも、実は民主主義国家ばかりではない。(ご近所だと、韓国くらいしかない)
・OECD、世界銀行、その他国際的な比較は日本がどうのこうの、という話が出た時には立ち止まって考えるべき。
・わたしが住んでる日本の平和に感謝。(そんなに、当たり前の話ではないし、なくなりつつあるのかもしれない)
【要点】
1.そもそも戦争とは、WW2以降の状況どうだっけという話
WW2~2007年にかけて、戦争は38回カウントされた。なお、戦争とは1000人以上の戦死者を出した軍事衝突。
このうち、戦争のアジア地域に占める割合は約4割(15/38回)。とくに、非民主主義国家において戦争の参加率が高い。(中華人民共和国、北朝鮮、ベトナム、ラオス)
民主主義国家は極端を嫌うため、権力の分立と選挙により牽制されることから民主主義国家では戦争状態への突入という選択を取りにくい。
一方、独裁には権力の分立と選挙による権力への牽制が働かないため、戦争状態への突入が容易である。
実際、自衛隊の自衛のためのスクランブル発進は本書執筆時点で冷戦時のピーク水準である。相手先は中国とロシアが半々。
2.では、平和とは?
平和にはリベラリズム観点とリアリズム観点からなる5要件がある。
(平和の5要件byブルース・ラセットとジョン・オニール)
リアリズム観点は2つある。
1つは有効な同盟。これによってそもそもの戦争相手が減るのと、相手が攻めてこなくなる。非戦争への寄与度40%。
2つには相対的な軍事力。軍事力が均衡してるとお互い致命傷になるリスクがある。非戦争への寄与度40%。
リベラリズム観点は3つある。
1つは民主主義の程度。非戦争への寄与度33%。
2つには経済的な依存関係。これにより、相互に開戦時のダメージが大きくなる。非戦争への寄与度43%。
3つには国際的組織の加入。非戦争への寄与度24%。
これら要件から、中国と北朝鮮は戦争リスクが高い。
(パーセンテージの数値合計が100ではないのが、気になるところだったが)
こういったインサイトを得るために、川を上り、海を渡り、数字を見るべき。
3.日本の自衛権と、どうやって防衛していくか論
まず自衛権とは?ようは、国の自衛権≒個人の正当防衛。
自国と他国なのか、自分と他人なのか、主語の違いが用語の違い。
手を出していいのはどういうときかというと、緊迫性・必要性・相当性(過剰はNG)を満たすとき。
なお、余談だが日本国憲法9条のような非戦条項は一般的に存在するので、これがあるからノーベル平和賞!なんてわけはないそうな。
では、集団的自衛権とは?
他国のための自衛権行使。これは各国判断による。近接地域の場合、必要に応じて参加する傾向もある。(アメリカが8程、関与した事例あり)
集団的自衛権が徴兵制を招くという論説があるが、これは全くの誤り。なぜなら、素人は戦力外だから。
一方、個別的自衛権は徴兵制につながる。なぜなら軍事力を独力で賄う必要から、1vsNの状況下ではなんでも使う必要がある。(NATO非加盟国)
防衛コストを比較すると、共同防衛>自主防衛である。
ちなみに2015年の安保関連法案は中国と韓国以外から、賛同を得ている。
北朝鮮は核配備した自主防衛。これは、歴史的にアメリカに介入されてきた歴史と貧乏な国の財布の都合から、コスパの良い力を求めて核保有に至った。
隣国にどんな国があるかを踏まえると、日本のとるべき方針は3つある。
潜在的な核保有国となること、多国間での対中包囲網の形成、非民主主義国に対するソフト輸出による民主化の促し。
Posted by ブクログ
何となく自分の中であった日本の安全保障に対する思いが、読み進めるうちに確実なものへと変わっていきました。
今なぜ日本は防衛費を増額させないといけないのか。日本はどう危険な状態にあるのか。
テレビや教科書を見ているだけでは分からない現実を、誰にも分かりやすいように図を用いて説明されています。
改めて安全保障とは何かを考えさせられました。
Posted by ブクログ
戦争リスクを減らすための方策をデータで示し、集団的自衛権を肯定している。
日本の戦後の歴史と海外の安全保障の観点から話は進むが、日本のメディアでは中々語られない情報が多く非常にためになった。
決して、レベルの高い内容ではないため読みやすいが、初めて知ることも多く自分の無知を恥じた。
国会の議論でも、データを駆使して説明すれば分かりやすいのに。政治家も国民もそしてメディアもしっかり勉強しなくては。
Posted by ブクログ
安保論がいまいち分からなくて、購入した。
分かりやすくはあるし、戦争というものが身近にあることもよく分かる。日本人が見ていないだけでそれはすぐ隣にいるのだ。
でもなんでだろう、この手の本によくある…というか、私が感じてしまうのは、「ほかのデータは?」というもの。一面しか取り出していないのに、ほら!っていうこの押し付けられている感じ…反対派にも賛成派にも多くて、やっぱりどっちも微妙に飲み込めないのだった…この本も、後半極端な気がして…。急に雑な理想論になったりとかね。
こういう本は取っ掛かりにすぎないということを再度認識。ニュースで省かれているものを、その輪郭をまず捉え、そこから学んでいくもの。そういう風に使いたい。そうすると、専門書がおもしろくなる。
Posted by ブクログ
焦点になるのは9条だとは思いますが、日本では憲法を修正することは難しいとされています。本当にどの程度難しいかは、それらに関連する法律を知らないのでわかりませんが、今から70年前の状況に即して決めた規則(憲法)は、その状況が変わればそれに応じた対応が必要なのではないでしょうか。
そんな状況な中、昨年(2015)9月に、安保関連法が可決されたようで、多くの改正がなされたようです。最も話題になたのは、いわゆる「集団的自衛権の行使」ですが、この本の著者による高橋氏によれば、同法施行の3月29日からは、戦後日本の安全保障政策の転換点となるようです。
この本では、それらのポイントを25枚の図解を通して解説してくれています。日本は戦争に巻き込まれてきませんでしたが、それ以外の地域では絶えず、戦争(紛争)が起こっていた事実、今後はそれらに巻き込まれる可能性も高く、その場合にどう対処すべきか、米国の状況も変わってきている中で、私達が下した決断は正しかったと思いたいです。この点はこれ以降も興味を持ち続けたいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・第二次世界大戦後、2007年までに地球上であった戦争(1000人以上の戦死者を出した軍事衝突)は、38回ある(p16)
・民主度の低い国ほど戦争を起こしやすい、中国・北朝鮮・ベトナム・ロシアの民主度が低い。ロシアは開放的な権威主義体制に分類されているが、プーチン大統領の独裁傾向、野党政治家やジャーナリストの不審死、クリミア・ウクライナ・シリアへの軍事介入があり、民主度が低いとされる(p34)
・自衛隊のスクランブル回数は、以前は対ロシアのみであったが、平成24年に逆転し、対ロシア・中国ともに増加している(p36)
・2016年6月の伊勢志摩サミットで、中国はG7共同宣言(力による現状変更)に反対し、名指しされなかったにも拘わらず、自ら名乗った形となった(p41)
・軍事力に関するリアリズムの要素として、1)有効な軍事同盟を結ぶ、2)相対的な軍事力、リベラリズムを代表するカントの三角形として、3)民主主義の程度、4)経済的依存関係、5)国際的組織への加入、がある(p45)
・周辺の状況が緊迫してきたので、現実にあわない国内向けの時代遅れな説明を解釈変更で一部変更し、アメリカとの同盟関係がより実効的になるよう、法整備を行ったのが、2015年の安保関連法の本質(p57)
・東京都の米軍横田基地内には、国連軍後方司令部が置かれていて、オーストラリア・カナダ・フランス・ニュージーランド・フィリピン・タイ・トルコ・アメリカ・イギリス・イタリア・南アフリカの11か国が日本と国連軍事地位協定を締結、8か国が司令部としての使用を続けている(p66)
・朝鮮戦争については、朝鮮半島での機雷掃海の歴史もある。交戦中の国の領海での機雷掃海は、国際法上はれっきとした敵対行為であり、交戦行為である(p69)
・国際法上の自衛権は、刑法の「正当防衛」と類推される。英語では、自衛にも、正当防衛にも同じ言葉(self-defense)が使われる(p73、74)
・正当防衛(自衛権)の条件は、緊迫性・必要性・相当性、の三要件である。国際法における「集団的自衛権」では、刑法の正当防衛よりもさらに条件が厳しくなり、「他国の要請がある」ことが追加の条件となる(p76)
・日本の憲法9条の戦争放棄は、1928年のパリ不戦条約を源流とする規定で、これに類似する条文は、韓国・フィリピン・ドイツ・イタリア等の憲法に盛り込まれている(p81)
・第二次世界大戦後にアメリカが関与した戦争は、2007年までで、8つある。朝鮮、後期ベトナム、後期ラオス内戦、カンボジア内戦、湾岸、コソボ紛争、アフガニスタン紛争、イラク戦争(p92)
・ベトナムのように個別的自衛権だけで、集団的自衛権を活用していないと、戦争を仕掛けられることが多くなり危険性が高まる。徴兵制になる可能性も高くなる(p105、115)
・自主防衛の場合のコストは、24-25兆円で、日米同盟のコスト(1.7)に、現状の防衛関係費(5兆円)を加えても、圧倒的に安い(p122)
・集団的自衛権の行使が望ましい理由として、1)戦争リスクを減少、2)防衛費安上がり、3)個別的自衛権の行使より抑制的(p135)
・日米同盟というれっきとした軍事同盟を結んでいながら、集団的自衛権の行使について議論してきたこと自体、非常識であり、諸外国からは「不思議な国」として思われてきただろう(p138)
・日本ではミサイル防衛を、1)イージス艦に搭載するSM3ミサイル、2)拠点防衛用のPAC3パトリオットミサイルの、2段構えで整備している。アメリカは、その間の部分を担当する、THAAD(サード)というミサイルも完備している(p153)
・日本は核兵器の材料となるプルトニウムを、合計48トン所有している、国内には10.8トン。世界で5位(p158)
・日本が提唱する、セキュリティ・ダイヤモンド構想(日本・アメリカ・オーストラリア・インド)、ハブ・アンド・スポークス体制がある(p172)
2016年10月10日作成