あらすじ
世界に広がる16億人のイスラーム市場。石油から、食や観光など、イスラームの人びととの付き合いはこれからのビジネスに必須だ。でも、なじみなく戸惑う人も多いのでは? そんな時の心強い味方――商社・建設・食品・観光など、現地で活躍する日本人が、土地と人と仕事を語る。地域別解説も付した体験的イスラーム案内。
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Posted by ブクログ
イスラム圏といっても北アフリカから東南アジアまで様々。それを各地で働いたり暮らしたことのある人の経験談で眺め渡すことができる。同じ国で生活するにしても、立場によって、見え方はずいぶん変わるし、人によってもずいぶん印象が変わる。そこが面白い。今までもありそうでなかった良書。10年前の本なので、続編のようなものが出ると嬉しい。
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桜井啓子
1959年東京生まれ。1991年上智大学外国語学研究科国際関係論専攻博士課程修了。博士(国際関係論)。現在、早稲田大学国際学術院教授。専門は比較社会学、地域研究(イラン)
イスラーム世界への憧れは、高校世界史の資料集に載っていたモスクの美しさに惹 かれて以来。大学では史学を専攻し、イランがご専門の先生のゼミに入りました。さ らに夏休みにトルコを旅行して、イスラーム文化を肌で体験したことで、ますます虜 に。とうとう在学中一年間休学し、モロッコ、シリア、レバノン、ヨルダン、トル コ、エジプトなど地中海から中東を放浪する学生バックパッカーになりました。就職 先も自然とその流れで、イスラーム圏の航空会社です。
また、ドバイは、観光都市ということもあり、とても自由で、 日本とそれほど変わらないように見えます。しかし、入社すぐの 研修で紹介された事例がショッキングでした。それは、未婚女性 がこっそり薬物の入った飲み物を飲まされ、眠くなったところで レイプされたという事例です。日本で同じようなことが起きた場 合、当然その女性は被害者なのですが、ドバイでは、その女性 は、薬物摂取と未婚であるにもかかわらず男性と関係をもったと いう二重の罪に問われることになるのです。
イスラーム圏でも結構、現地製造のお酒があります。トルコや レバノンのラク、ラキとかアラクは、水割りにすると白く濁るア ルコール度の高いお酒です。ビールでは、エジプトのステラビー ル、インドネシアのビンタンビールがあります。モロッコはメク ネス産のワインが有名です。これらは地元のムスリムも購入でき ます。
同じイスラームの国でも、エジプトにはみなさんご存じのベリーダンスがありま す。女性は基本的に肌をあらわにしない文化がある国ですが、登録しているベリーダ ンサーには、ある程度の露出が認められています。ただし、あまり露出が激しいと網 の日のような服を着せられるなど、いろいろな制限はあるそうです。しかし、結婚式 などではベリーダンスは花ですね。そういうところは国によってすごく違います。
浪花節が通じるというか、義理人情に厚いのもイラン人の特徴です。イラン人は家 族をとても大事にしますが、人間的な温かさや包容力があると感じました。子どもを とてもかわいがるので、子育てのしやすい環境だと思ったこともあります。核問題な どのイメージが先行して「怖い国」と思われがちなイランですが、イラン人はとても 魅力的です。
初来日の場合は、東京、名古屋、大阪、京都、それに余裕があれば、名古屋から岐 阜や長野といった観光コースが一般的ですが、二度日以降ですと、北海道が人気で す。特に喜ばれるのは、桜、富士山、そして雪。雪を見たことのない人がほとんどで すから、ふわふわの雪に触りたい、雪の上に寝転んでみたいといった夢を持っていま す。観光以外では、道にごみが落ちていない、接客が丁寧、電車や地下鉄が定刻通り に来る、その他、随所で体験する日本のテクノロジーなどが、高く評価されます。
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[他者としての参画]北アフリカから東南アジアまで広がるイスラーム圏で仕事をしている/してきた方々の生の声を収録した作品。人口及び経済規模が次第に大きくなると予想されるこの地域に、非ムスリムの日本人として暮らすということがどういったことなのかがぼんやりと浮かび上がってくる一冊です。編者は、著名な中東の地域研究者である桜井啓子。
イスラームを共有しながらも、同時に国や言語、そして民族などを理由として、イスラーム圏において明確に差異が存在することを認識できるかと。それにしても、断食月の「ラマダーン」と、文脈によって意味が異なってくる「イン・シャー・アッラー」という言葉に関する言及が多いのを見るにつけ、この2点はよほど日本人に強い印象を残すものなのだなと感じました。
正直なところ「こんな素晴らしいことがありました」という声よりも、「大変」「苦労した」という声が多いため、これを読んで「イスラーム圏で働きたい!!」となるかは不明ですが、「イスラーム圏で働くことになった」という方にはとりあえずオススメです。さくっと読める一冊でもあるため、編者がまえがきで記すとおり、中東行きの飛行機で読むにはピッタリかと。
〜思うように事が運ばないことは多々ありますが、アラブで働くうえで絶対に心得ておかなければならないのが、「あせらず、あきらめず、あてにせず」です。〜
わかるわかる☆5つ
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厳しい戒律というイメージのイスラームの世界は、中東などの厳しい環境とも相まって、滞在したり住んだりするだけでも異空間のような感じがある。そのような環境でビジネスをするというのはどういうことか。そんな疑問に平易な言葉で答えてくれる日本人。その多くはビジネスマンで、修羅場も経験しているであろうが、現地の習慣や習俗を尊重し、粘り強く現地でビジネスを根付かせていることが分かる。同じイスラームといっても、共通する部分も多いが、民族性や地域性でそれぞれに異なる部分もあり、それぞれの任地で得た貴重な体験が詰まっている。
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イスラム圏にいるので読んでみた本。なかなか面白い。イスラムは偏見に満ちた世界に日本人に映っているが、とても面白い文化圏である。アラブ圏・アジアのイスラム国で働いていた方々のコラムが集められている感じ。
Posted by ブクログ
日本企業からイスラム圏に駐在することになったビジネスパーソンたち、また、日本国内でハラールビジネス(日本在住ムスリム向けの食やサービス)に携わる人々の記録。客室乗務員、建設コンサルタント、特派員、ヤクルトレディなど、章ごとに語り手が変わるコラム集のような一冊。駐在生活において彼らが感じた各国の独特の文化や、心暖かいけれど気が強い現地の同僚たちの人間性など、わたしは一度も行ったことのない国々の様々な日常を垣間見られて、おもしろかった。
Posted by ブクログ
イスラーム圏では働かないけど、引っかかっていたことや中途半端な知識やイメージを少しでも明らかにしていきたい気持ちが働いている。
以前読んだ『パリのすてきなおじさん』にてアルジェリアとかクルド人とか程良く予習できたから少しは内容についていけたと思う。
大好きなインド映画にもたびたび登場するイスラム教。イスラーム圏とはいえ国ごとにルールやマナーが違いすぎて、その程度の差も激しいもんだから聞いているだけで気が狂いそうになった。
ネットも存在しない時代にイスラーム圏に身を投じた方々もおり、不安を感じる暇もないまま相当苦労された様子が伺えた。
情報も乏しいなか、「対面ファースト」が基本の現地のビジネスシーンで手探りで信頼関係を築いていかれたのが素直に凄い…!
この対面ファースト、仕事になると絶対非効率だと素人目でも感じていた。それでも人との繋がりを大切にするという彼らのエピソードを沢山目の当たりにし、昔ながらで人間くさいけど、血の通ったお付き合いはやっぱり良いなって見直した。
※数あるエピソードの中で特に良かったのが、中東のムスリムが旅人を手厚く歓迎してくれるのは「旅人=メッカ巡礼でやってくる人」だったので彼らが無事聖地に辿り着けるようもてなしたのが始まりという話。他宗教を受け入れない土地もあるくらい厳しい戒律に生きた人達かと(勝手に)思っていたけど、日本のお伊勢参りと宿場町の関係と近しいものを感じて何だか嬉しくなったのであった。
Posted by ブクログ
イスラーム圏の国々や、日本国内でイスラーム向けの仕事をされている方々13名による、イスラーム圏での仕事経験の解説。
筆者はイスラーム圏を中心とした比較社会学の研究者だそうだけれど、よく知人などから
「来月からサウジアラビアに転勤になったんだけど、現地での生活上の注意とか知るために読んでおくといい本って無い?」
という相談を受けたらしい。そのたびに答えに困っていたらしく、そういう人たちに読んでもらうことも本書を書いた目的の一つだったようだ。
経験に基づく話なので、とても実際的。
・イスラーム教徒の女性と握手してはいけない(ていうか体にさわってはいけない)
・子供のあたまを撫でてはいけない
・他人に妻の顔は見せない
・メッカ巡礼の人たちの真っ白な装束に触れてはいけない。
・礼拝は日の出前、昼、午後、夕方、夜の1日5回
・仕事中でも、仕事より礼拝を優先。それが当たり前。
・とても家族を大事にするので平日はまっすぐ家に帰る。
・人のつながり(コネ)を大事にする。
・ハラールは豚肉入ってないからOKというものではない。同じ製造工場内で豚肉扱われているだけでアウト。
・でも、豚肉食べても故意ではなく誤って食べてしまったということならOK
・サウジアラビアですら、結構みんな酒飲んでる。
・サウジでは基本的に酒は売ってないが、隣国のバーレーンでは売っている。週末にバーレーン行って酒飲んで帰ってくる。
・イスラーム教徒相手の仕事は、あせらない・あきらめない・あてにしない。
13名の方々のほぼ全員が「イン・シャー・アッラー(それを神が望むなら)」という言葉に注意喚起しているのが面白い。
何か頼みごとをしたときに、あまり気乗りしないとかやりたくないようなときに返す言葉らしい。つまり「イン・シャー・アッラー」と言われたら、やんわりと断られているのだ、と思った方がよいようだ。あてにしない。
--手が空いたら作業手伝ってくれる?
「イン・シャー・アッラー(手伝うとは言っていない)」
--ねぇ電話番号教えてよ。
「イン・シャー・アッラー(教えるとは言っていない)」
--週末遊び行かない?
「イン・シャー・アッラー(行けたら行くわ)」
逆に、日本の悪いところが見えてくるところもあった。多くの方がイスラーム教徒とともに仕事をする際に注意すべきこととして、「人前で怒ってはいけない」と書いている。
ちょっと考えてほしいのだけれど、そもそも「一対一で怒られるよりも、人前で怒られる方がマシだ」と思う人はいないのでは?日本人だって人前で怒られるのは嫌なのでは?
むしろこれは「日本企業には、部下を人前で叱責するという悪癖、パワハラ文化がある」ということじゃなかろうか。そう考えると、いろいろと日本で働く上で問題となるようなところも見えてくる。
仕事が終わったらまっすぐ家に帰るのは当たり前だ。みだりに異性の体に触れてはいけないのは当たり前だ。他人に飲酒を強要するのはよくない。仕事中に礼拝のために数十分程度抜けたからと言ってなんだというのか。