あらすじ
鮮烈なデビュー作『女子をこじらせて』から5年。
対談集『だって、女子だもん!!』から4年。
雨宮まみが、今度は、崖っぷちに立つ女子たちの愚痴を真っ向から受け止めます。
彼氏ができないのは「努力が足りないから」だと言われ続け、「努力っていったい何なんだよ !?!?」と吐き出す20代後半の女性。
家事も子育て、さらには仕事も完璧にこなしているのに、夫から愛されない。「もう頑張れない」とつぶやく30代後半の女性。
小沢健二似の美しい元彼との恋愛でズタズタになっても、やっぱり「美しい人」に惹かれてしまう20代前半の女性。
努力、恋愛、見た目、生き方─ ─、20代、30代の女子たちが抱える人生の愚痴15編。
ウェブサイト「ココロニプロロ」の超人気連載、雨宮まみの「穴の底でお待ちしています」の書籍化。
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Posted by ブクログ
5552さんのレビューで知った本書は、「ココロニプロロ」というウェブ媒体での、「穴の底でお待ちしています」という連載コラムをテーマ毎に(努力、恋愛、見た目、生き方)まとめたもので、女性の様々な愚痴を、雨宮さんが聞いてくれるだけでなく、親身になって答えてくれており、その答え全てに頷けるわけではなかったが、それ以上に、私自身がたった一人のレアな一例ではなかった事に、気付けた事が何より嬉しくて、それは、まえがきに書いてあった、『自分を理解する手助けや、他人を理解する手助けになれるように』という、雨宮さんの願いに通じるものがありました。
ちなみに、愚痴という言葉の意味を調べてみると、
『(今となっては)言ってもしかたがない事を、言っては嘆くこと』とあるのですが、本書で紹介されている愚痴は、どうも私がイメージしていた、聞いていてネチネチした、あまり気分の良いものではない感じではなく、寧ろ、皆さん、しかたがない事かもしれないけれど、心の奥底では何とかしたい、という切実で強い想いが見え隠れしている印象を受けて・・おそらく、それは愚痴ならではの、赤裸々な本音の部分に人間らしさや愛らしさを感じられるからだと、思っております。
そして、私が本書を読みたいと思ったきっかけになった愚痴が、
『私という存在をなかったことにしてほしい』
おそらく、今がいちばん精神的に満たされてる状態だと実感しているので、こういう事を書けるのですが、私が高校を中退してからの数年間、本当にきつかった時期がありまして。
その当時、引きこもりのような生活をしていた影響なのか、外出したときの他人の視線が怖くなり、人とすれ違う度に、無意識に目つきが鋭くなる事を繰り返していたら、ある程度、心が落ち着いてきた時期になっても、体が覚えてしまったのか、その癖が抜けず、外出して人とすれ違う度に、顔を逸らされる思いを数え切れないくらい味わっていたら、そんな自分が嫌になって・・なんで、ただ歩いているだけで、嫌な思いをされなきゃいけないんだろうという悲しみと、歩いているだけで人に迷惑をかけるようなダメ人間なんだと感じた惨めさは、まさに自分の存在をなかったことにしてほしいと思ってしまうような絶望感でいっぱいでした(今でも僅かな名残はあります、正直なところ)。
今が良い状態なら、そんな過去はもう忘れればいいじゃないかと思われるかもしれませんが、私の中で、もう少し悪あがきしたいというか、今だったら、あの頃の自分に、労うような言葉をかけられるんじゃないかという思いもあって・・あれだけ苦しんだことにも、意味を欲しがるんですよね。
そして、その愚痴に対する雨宮さんの言葉を読んで、まず印象的だったのは、
『雨宮さん自身も、人や未来が怖くて、消えてしまいたくなるのは当たり前のことだと日常的に感じている気持ちであること』
この後に、『みんな生きているだけで偉いと思います』の一言に、何か心が軽くなったというか、とても慰められた思いがして、言葉って、ただ存在するだけではダメな場合があって、その言葉を誰が言ってくれるかによって、予測できない大きな力に変わるんだなということを、まざまざと実感させられました。
また、もう一つ印象的だったのは、
『生きている限り晒される比較の視線から、心底逃れられる時間の中に浸ってみてください。もっとちゃんと逃げてください』
逃げるということに対して、私は何か悔しい思いというか、勝手に悪いイメージを持っていたが、ここでの逃げるというのは、自分自身を見つめることからも含まれていて、人間は良いところばかりでないことは分かっている。分かっているのに、なんでそんなに自分自身ばかり責め続けるのかって・・そう感じたとき、当時の私は、自分で自分のことが嫌いだったことを思い出しました。でも、それって、自分を好きになる人は誰もいなくなるという、やるせない思いに、そりゃ絶望感も抱くよなと。
そうだ、それに気付けなかったんだ。
当時の私にかけるべき言葉は、「自分のことを愛してやれなくて、ごめんね」だった。それに当時から気付いていれば、もう少し気楽に生きられたかもしれないね・・世の中は正しくないのにさ。
でも、今、こうした思いでいる自分自身は悪くない感じがする。
雨宮さんが書かれていた文章の中に、
『「正しい」って、なんでしょうね。私は自分なんかより、はるかに才能があって努力していて、なにより「生きたい」と望んでいた作家さんが亡くなったとき、自分よりあの人が先に死ぬ世の中は間違ってる、と思いました。自分が一生の間に書くであろう文章よりも、その人の書いた文章のほうが価値があると今でも思っています。命をあげたくても、あげることはできませんでした。世の中は正しくありません。正しくないんですから、安心して間違えてください』
上記の雨宮さんの思い。これって、そのまま雨宮さん自身にかけてあげたい言葉だなと思って、長文ですが、掲載いたしました。
愚痴の中で知る人間らしさ、とても身に染みましたし、結局、全ての愚痴を読んで全てに感じた事は、人間って複雑だけど、かわいらしいという、人間を更に好きになれた不思議な読後感は、雨宮さんの魅力なんでしょうね。
他の著書も読んでみたいです。
Posted by ブクログ
自分が「苦しい」と思っていることを、他人に「あなたなんてましなほう」「恵まれてるほう」と言われ、口を塞がれる仕組みは、誰のことも幸せにしないと私は思います。
という珠玉のフレーズに痺れた。
誰のどんな愚痴もジャッジせず、「まぁまぁお疲れさま。まずはお茶でも飲んで」と受け止める雨宮まみさん。きっとすごく頭が良くて、すごく繊細で優しい人だったんだろう。この人が40代50代になってからの文章も読んでみたかった。
Posted by ブクログ
雨宮まみさんが寄せられた愚痴に向き合うweb連載を書籍化したもの。ずっとwebの連載を読んでいて、いつか応募したいと思っていました。雨宮まみさんの「正論」ではない、丁寧な回答を読んでいると、少しでも生きづらさがほぐれるようにという思いが感じられて、私も回答が欲しかったなあと後悔しています。
Posted by ブクログ
ぐちを言う側も回答する側も、美しい文章だなぁと思った。小沢健二似の彼の話が印象的。
普段言語化できないもやもやや不条理なことを文章にしてくれている。
世の中正しいことだけで生きていくのは大変で、間違うことも揺れることもあって当然なのだと、それでいいのだと思わせてくれた。
Posted by ブクログ
まみさんの言葉はとても優しくて、心に寄り添ってくれます。ふんわりと、心が軽くなりました。悩む毎日、こう思う自分はダメなやつだ、に押し潰されそうになっていますが、大丈夫、生きよう、と声をかけていただいた気持ちです。素敵な本でした。もっとまみさんのお話を読みたかった。ご冥福をお祈りいたします。
Posted by ブクログ
正しさを押し付けない意見や雨宮まみさん自身もたくさん迷って生きているのがわかる文章にとても救われます。
付箋マーカーしたい箴言だらけなので、迷った時とかネガティヴな気持ちの時いつでも思い出せるようにしたい。
Posted by ブクログ
「サイト訪問者の愚痴をお聴きする」という体の形態になっています。とにかくですよ、雨宮さんの語り口が優しくて優しくて…スミマセン、私にもお茶を出していただいても良いでしょうか(:_;)
皆さんの愚痴のエピソードが共感できるものばかりで、無駄に齢を取ってきたもので、ちょっと涙ぐんだりもして…
読み終わった後は、自分の事が少し肯定出来る気持ちになりました。オススメです!
Posted by ブクログ
乾いた土に水が染み渡るような、そんな文章の連続でした。文章読んだだけで、どんだけ人間的で優しい人なんだって。今まで以上に雨宮さんのことが好きになりました。様々な愚痴や悩みに、回答ではなく返事をしてあげる優しさ。「愛と欲望の雑談」も今ポチりました。
Posted by ブクログ
なんだこれ。なんだこの本は。
と、読みながら6回位呟いたと思う。
みんなこんなにも必死に全力で生きているんだという感覚は衝撃だった。こんなにも深く考えて生きている人なんて、そんなにはいないだろうと思っていた。ある意味見下していたし、諦めてもいた。
でもこの本に出てくる人たちは、皆信じられないくらい真摯に自分や周りと向き合っていて、かつ冷静で客観的で建設的だった。
その返事としての雨宮さんの言葉は、モヤモヤを掬い上げてくれるような、冷静さと分析に満ちていた。
読んでいると涙が込み上げてきた。
少しの動揺と湧き上がる喜びだと思う。
人生のバイブルにしたい。
Posted by ブクログ
女性のリアルな悩みに優しく寄り添ってくれる温かい作品。
「私の悩みなんて周りと比べたらちっぽけだし、誰かに相談していいほどのものじゃない」と我慢して溜め込む人って自分含めたくさんいるんだなと気づかせてくれた。
「努力してないからじゃない?」という人は一体どれだけの努力をしたのだろう。
たまたま運が良くてその悩みを持たずに済んだってだけの話じゃないか。
「そんなの贅沢な悩みだよ」「あなたは恵まれているほうだよ」って言う人もそう。
その人がどれだけ苦しんでいるのか考えず表面上の事実だけを見て幸せか不幸か判断し、的外れな忠告をする。
当事者にさらに悩みを抱え込ませてしまう。
著者はそういったやり場のない悩みを達観された視点でどこまでも肯定してくれる。
繊細で賢くて人の痛みがわかるからこそかける言葉だと思った。
寄せられた悩みの中にはドロドロしたリアルなものもいくつかあるので本当に弱ってる時に読むのはきついが著者の考え方はとても参考になる。
Posted by ブクログ
もともとのwebコラムを当時リアルタイムで読んでたけど、その連載の真っ最中に亡くなって、私は職場でお昼を食べながら泣いた。
優しく知的で、弱くても前向きに生きていくための努力をやめない雨宮まみですら生き抜けなかった世界を、これから一人で生き抜いていかなくちゃいけないことがとても怖かった。
弱くてずるくて暗い私には、どうしてもどうしても、雨宮まみの言葉が必要なのに。
あれから数年経って悩みの中身も随分変わったけど、今読んでも泣けるし励まされる。
若いとかババアとか結婚してるかしてないかとか正社員か非正規かとか関係なく、それぞれの場所でみんな弱さや正しさや自分らしさに悩んでるんだと改めて。
自分だって同じ立場なのに、こんなに優しい言葉をかけられるなんてさすがこじらせ女子のマザー・テレサの異名は伊達じゃない!
この本があれば、これからも心に雨宮まみがいてくれる。
グレイテスト・ショーマンのThis is meに励まされてる女子はぜひ読んでほしい。歌詞がそのままといっていいレベルで散りばめられてる…
Posted by ブクログ
悩み相談というか、もう愚痴となりそうな相談に、雨宮まみさんが答える本。
男性向けのポジティブで理性的な回答者なら、もっと建設的に、前向きなこたえを返すだろうし、場合によっては相談者が怒られる。
女性向けの(と言うと性差別かもしれないが)占い師やなんちゃらセラピストのような方が回答者なら「あなたは今のままでいいのよ」と、相談者を肯定し、気持ち良くさせたまま、ある方向性への誘導が透けて見えることが多い。
では、この本の雨宮さんはどうだろうか。
質問者を責めずに寄り添いうところは女性向けっぽい。けれども、その先の誘導はあまり見えず、それぞれの相談者のもつ力や才能を信じて、「絶対大丈夫」と心の中でつぶやいている感じ。
読んでいると、自分の胸が苦しくなるような悩みから、あーあるあるという悩み、こういうことを悩む人も居るのかと予想外の悩みに、ユーモアを交えつつ回答する雨宮さんのサービス精神があるから最後まで読めた。
誰かに薦めたいというより、病院や喫茶店などに置いてあり、ふとしたときに読むと面白い本な気がする。
Posted by ブクログ
カウンター越しの悩み相談。相談者にピッタリ合いそうな飲み物をだしながら、答えるというより、寄りそって話してくれる。前向き頑張る、そんなことばかりが素晴らしいわけじゃない。
正論と、正論じゃ片付けられないものの間を生きるというのが人間というもので、だから苦しくては、面白いものなのに、そのグレーゾーンを切って捨てようとするなんて馬鹿げている。愚痴といういうものは、そのグレーゾーンにあるもののような気がするし、人と人とのつながりというのもまた、そのグレーゾーンのなかで生まれていくものだと思う。
Posted by ブクログ
「正しい」ことが人を追い詰める。正しさだけで解決できないことがあるから人間なんだって思った。
「正しさ」という凶器を振りかざさないようにしたいって思った。
Posted by ブクログ
愚痴くらい批判されずに自由にこぼせる世の中になるように
正論と正論じゃな片付けられないものに挟まれているのが人間で、だから苦しくて面白いものなのに。
そのグレーゾーンを切って捨てようとするなんて馬鹿げている。愚痴はグレーゾーン。
人と人とのつながりはグレーゾーンの中で生まれていくもの。