【感想・ネタバレ】神話で読みとく古代日本 ──古事記・日本書紀・風土記のレビュー

あらすじ

『古事記』『日本書紀』は、ただの神話ではない。新しい国家の実現を目指し、大和王権が各地で口承されていた神話の力を利用して創作した、極めて政治的な〈神話〉である。本書では、この二つの〈建国神話〉をどのように読めばよいのかを説き、また「風土記」を読みとくことで、国家・地方間のダイナミックなテキストの攻防を明らかにする。地方が〈建国神話〉を受け入れたとき、「日本人」の自覚と、精神史上の「日本」が誕生した。その過程を目撃せよ。

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Posted by ブクログ

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古事記・日本書紀は、大和政権の正当性を説くために作られた建国神話である。神話力を維持するために地方の神々を取り入れて、国民に受け入れられるよう綿密に計算されている。

「神話力」という説明は説得力があり、神話の新しい読み方を学べて視野が広がった。日本書紀や古事記はまだ読んだことがないので、それらを読んだらまた楽しめそう。

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2019年08月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本最古の歴史書である『古事記』と、漢文で書かれた正史である『日本書紀』
同じような内容を書いているが、よく読むと細かな部分が結構違う。
ということは、学生時代に習った。

稗田阿礼が暗唱した物を書き写して編纂した『古事記』の方がとっつきやすく、分量も少ない。
だからそれほど『日本書紀』については知らなかったのだけど、編年体なのね。
とにかく、正史であることを強く主張している。
だからなのか、主文のほかに伝承という形で、いくつものパターンを収録している。

日本の神様は、天つ神と国つ神のふた系統あると言われている。
皇室の祖である天つ神は、天から降りてきて、この国を支配していた国つ神(大国主命)から国を譲り受ける。
国の誕生から国譲りの辺りまでが、『古事記』と『日本書紀』に書かれている神話部分。

なぜ、歴史に神話が必要なのか?
それは、新しい支配者として国を譲られることは神の認めたことである、というお墨付きが、新たな領土を治めるために必要だったからではないか。

『日本書紀』にある、いくつもの伝承は、土着の神話を新しくつくりあげた神話に組み入れる際に、「正」以外として分類され、取りこぼされたものなのではないか。

神話は好きだけど詳しいわけではないから、いくつもの仮説に対して「そうだ」とも「違う」とも言えないけれど、ヤマタノオロチ伝説が、「出雲国風土記」には収録されていないというのは、なかなかにわくわくする。
スサノヲノミコトが天から出雲に降りてきて、一番初めにやったことがこれだというのに、肝心の出雲にはその記録がない。
つまり何らかの政治的判断がそこにはあるということ。

当時生きていた人には当たり前だったのであろうその判断が、今はもう喪われてしまい、残された文献から想像するしかない。
一生正解はわからなくても、紐解いた本の中に真実のかけらを探す。
そのごく一部を読ませてもらうだけで、こんなに楽しい。
ありがたいことです。

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2018年02月14日

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