あらすじ
月島の超高層マンションで財団法人〈日本の伝統と自然を守る会〉の理事長が殺害される事件が発生した。捜査に乗り出した十津川警部は、犯人と思われる人物が「十津川です」と言って、被害者のもとを訪ねて来たことを知る。自らの名前を騙られたことに驚き戸惑いながらも、もしかしたら「十津川」とは奈良県の十津川村ではないかと思い現地に向かった。十津川村を訪れた十津川警部の前に新たな殺人事件が……。
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Posted by ブクログ
〇信心深い彼らが義憤に転じるとき、この事件が起こった
元国交省官僚の奥寺が「義によって天誅を下すものなり」という血文字とともに何者かに殺された。犯人は「十津川」と名乗った男だったことから、捜査に十津川警部が起用されることになり、調べてみると、奥寺の作った財団法人「日本の伝統と自然を守る会」が奈良県十津川村の自然保護活動をおこなおうとしていたことを突き止め、奥寺の娘・香織と共に調べ始める。何日か滞在していた時、文化交流に熱心な東京のベンチャー企業の小野田社長の秘書が「天誅」という言葉とともに殺されていた…
"義によって天誅を下すものなり"
この言葉を見た亀井が、犯人を「幕末の志士気取り」と評したくらいには自己心酔していると思われるものの、作中に出てくる十津川村藩士たちの決意や行動原理を読めば、事件の背景も臭わされたも同然だ。
実在の書物を元にしながら、十津川村と明治維新との関係を明らかにしていて、歴史読み物としても十分に面白いに違いない。