あらすじ
自然を忘れた現代人に魂のふるさとを思い起こさせる美しい声と、自然を破壊し人体を蝕む化学薬品の浸透、循環、蓄積を追究する冷徹な眼、そして、いま私たちは何をなすべきかを訴えるたくましい実行力。三つを備えた、自然保護と化学物質公害追及の先駆的な本がこれだ。ドイツ、アメリカなど多くの国の人々はこの声に耳を傾け、現実を変革してきた。日本人は何をしてきたか?
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Posted by ブクログ
知ってはいたけど読んでなかった名著。『三体』での重要図書なので手に取る。
最近読む本は戦争を挟むからか、DDTが出てくることが多い。ここまで毒性があり、生態系に悪影響を及ぼすとは思っていなかった。
人間には皆殺しの欲求がある。何もかもを消してしまえという誘惑を制御できない。
選択制スプレーという手間よりも一斉散布で根絶やしにする。
落語「百年目」の赤栴檀と南縁草がふと浮かぶ。みすぼらしい雑草が、立派な木には必要だった。そういう目に見えない関係性をたやすく見落としていいとこ取りをしようとしてしまう。
事実を報告する人の信頼度の問題は解決の難しい、本質的な問題だ。真反対の意見のどちらからも信頼され信用される第三者はなかなか見つかるものじゃない。
実験室の中で、限られた動物を使って、人工的な環境下で調べた薬剤の効果は限定的な結果であるにもかかわらず、自然環境に持ち込んでも同じ結果になると断定するのは非科学的という指摘に反論の余地は無い。
またヒアリの食性一つとっても、五〜六十年経てば食性も変わるという。しかも世代交代のサイクルによって、抵抗力を持つ。常に変化するものを対象に、永続的に使える薬剤を生み出せようはずもない。
害虫に悩まされない理想の環境を目指し、製造不可能な完璧な薬剤を生み出すために膨大な労力と経費を使って、未来に蓄積する毒を撒き散らす…
もう人間はダメなのか。もっと高位な生物に丸投げして滅亡するべきなのかと絶望してしまう。が、レイチェル・カーソンはそんな安易な結論は結んでいない。
細菌や天敵を使う防除は、恐らく今では別の悪影響が指摘されてるもので、積極的に選べる方法ではないはずだが「特効薬」ではなく、「生態を調べ抜いて発生数を抑える方法を探すこと」こそ、遠回りに見えて最良の近道だと著者は言いたいのだと私は了解した。
読んでよかった。
手放しで信じ込んでいた安全性の正体を明らかにする事が出来た。
あとがきは、一理あるけど、やや批判的というか身も蓋もない感がある。
Posted by ブクログ
害虫防除のために化学薬品を使うことによる生物濃縮の恐ろしさをたくさんの実例とともに説明する前半。 後半は人間への影響の出方とその他の防除方法について。今の科学ではどう解釈されているのだろう?と思うところがいくつか。たとえば、読み間違えているかもしれないが、化学物質が染色体異常を引き起こすことから、白血病、小児がん等への影響を示唆している点。また、外来種に対して天敵を連れてくることで自然に悪影響を与えず防除することや、雄を不妊化させる薬品の使用を比較的肯定的に書いている点。現代視点での解説を読みたい。