あらすじ
僕たちは、自らの、めざめた意思で選んだのではない「旅のさなか」に、あらかじめ放り出されている。稀代の物語作家・いしいしんじのきらめく感性が記した2年間のダイアリー。家族との時間、新しい出会い、心おどる音楽。子どもたちが、大人たちが、日々新しいドラマをくり広げる。今という時を大切に生きることから生まれるみずみずしい言葉たち。一日一日のつながりが、ひとまとまりになって心を打つ。著者独特の透明な世界へ誘う感動の日記。毎日新聞連載(2013年9月~2015年9月)同名タイトルを一冊に。心象スケッチ「みえるもの・みえないもの」特別収録。
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Posted by ブクログ
昔新聞で連載していたらしい日記をまとめた本。いしいさんの本久々に読んだけど、やっぱりとても好き。ことばが自由に本の中で踊りまわっていて楽しい。それはなによりいしいさん自身がとてつもなく自由な人だからだ。きぐるみや着古して破れた服を着て生活することにも、遅刻することも子供のようにはしゃぐことも本人としてはあまり気にしていない様子。でも、その場に漂う「おはなし」の気配にはなんと敏感であることか。面白いことも、日常のことも、ご家族やたくさんのご友人たちのことも、「おはなし」交じりにみずみずしいことばで生き生きと綴られていて、読んでいるとわくわく、切なく、楽しく、一緒になって心を揺さぶられてしまう。マグロわなげとかセイウチのショー、めちゃくちゃ面白そう。
この本の中でも、息子ひとひくんの発語にのせて「ことばとは、辞書や慣例にしばられた記号ではなく、ほんとうにそんなものではなくて、口に乗せるたび溌溂と身を躍らせてこの世に飛びこんでいく、それぞれが固有の燐光を帯びた、ひとつひとつの生命なのだ」と語られている。さわやかな解放感があって、元気をもらえる本だった。
いしいさんの日記を読んでいると、仕事を含めいろんな場所にひとひくんを連れて行っていてなんでもやっていてすごいなと思う。誰かに迷惑をかけることを全然恐れていない。そしてひとひくんがそれを受けて自分の世界をとても豊かにふくらませながら成長しているのがよくわかるのだ。
私は少しでも迷惑をかけそうな場所、面倒が起きそうな場合は子供を連れて行かないし、コロナもあって家にいるばかりで、子供が臆病で超インドアな子に育ちつつあるのが少し悩みの種だ。読んでいてびっくりするようなこともひとひくんはやっていて、私ももっといい加減にしていてもよかったのかなと思ったりする。子供に向き合う胆力がそもそも違いすぎる気もするけど…。ことばも自由、人生も自由に、ちょっとでもそんな風にできるだろうか?