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Posted by ブクログ
宮脇俊三氏の、初期の随筆集。
…というより、あの「山陰ストリップ特急」の所収作と言った方が通りは良いでしょうか(笑)。
タイトルのインパクトや2000年の「旅」誌宮脇特集で宮嶋茂樹が面白おかしく(しかし敬意を持って)取りあげたことで、妙に有名になった感のある「ストリップ」ですが、改めて読んでみると、宮脇氏の文章の魅力がことごとく詰め込まれた名作であることに気づかされます。
鉄道の運賃制度に関する疑問を端緒として、どこか文明論めいた(しかし高慢さとは無縁な)視点が提示されたかと思うと、鉄道旅行の孤独さへと話題は転じ、場末のストリップ劇場へと物語は迷い込む。ここで放たれる「これも客が特急を望むからだろうか」というキッツイ皮肉が、冒頭の文明論としっかりつながって、実に見事。比較的文量のあるエッセイですが、なかなか劇場に辿り着かないあたりも、「道行」を重んじる氏の姿勢を体現しています。
色気も何も無い、淡白な文章。でも妙に方向がずれた艶かしさは伝わってきて、そこが何とも可笑しい。やはり「ストリップ」、有名になるべくしてなった作品のようです。