あらすじ
ホームズ最大の危機を描く「瀕死の探偵」、探偵業引退後を描いた「最後の挨拶」ほか、死の影と怪奇、そしてなにより奇想と冒険に満ちあふれた第四短編集。コナン・ドイル晩年の円熟期の傑作群。
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Posted by ブクログ
人気ドラマだったら、映画版が3本作られ、テレビ・シリーズが3シーズン。それでいったん途切れて、ときどきスペシャル番組が単発で放映されたのをまとめたのが本書というところ。その間に4つめの映画版、すなわち『恐怖の谷』が製作されているわけだが。
ほぼ毎月連載された『冒険』『回想』『帰還』所収の短編と違って、本書の短編は趣向が凝らされているといっていいだろう。「ウィステリア荘」「ブルース−パティントン設計図」はもっとも長い短編に属する。
これまでホームズはワトスンを置いて捜査に行ってしまい、夜遅くに帰ってきても何も言わず、推理が組み立てられてから披露するといった展開が多かったが、ここでは捜査の過程がだいぶ書かれるようになった。「フラーンシス・カーファックスの失踪」でホームズは助けるべき被害者を危うく殺されそうになるという失態を演ずる。「悪魔の足」では殺人方法に新機軸があるし、またもやホームズとワトスンは正義のために法律を軽んずる。「赤い輪」では悪の結社と事件外の物語というこれまで長編で描いてきたような内容を短編に凝縮している。
ワトスンが結婚していた時期の話で、下宿のハドスン夫人が危篤状態だが医者を呼ぼうとしないホームズを見かねてワトスンに呼びに行くところから始まる「瀕死の探偵」は当時の読者をあっと驚かせただろう。そしてついに第一次世界大戦に巻き込まれてしまうホームズ、「最後の挨拶」。
河出文庫でホームズを読むことにしたのは、解説と注釈が充実しているからだったのだが、この註、ホームズ譚を楽しみたいだけの向きには実はほとんど必要ない。ある単語に註があるので見てみると、原語が古い言葉でその意味を説明してあったりするのだが、訳語は意味がわかるようなものが選ばれているので、訳書を読む分には必要がない。あるいは登場人物の名前の由来の推測などは、依頼者の名前が当時世相を騒がせていた誰それから取られたなどというのは、さっぱりどうでもいいことだ。
解説も成立のいきさつなど詳しく書かれているが、それも是非に知りたいことでもない。ただ、当時のイラストができる限り収録されているのは、ホームズの図像的イメージの成立を知ることができて、それだけでも河出版を手に取る価値があるやもしれぬ。
Posted by ブクログ
学生の頃に読んだ作品の再読。
色々忘れていますね(苦笑)。特に、最後の「最後の挨拶」こんなエスピオナージだとは思いませんでした。一度読んだはずなんですけどね。って言うか、ホームズ引退後の再登場ですが、何年も活動していたとはね。ここまで捜査するのには時間がかかりますが、そこまでするかと。一度引退しているのにね。
Posted by ブクログ
これまでの短編と雰囲気が変わったように感じた。毒ガスや仮病などのせいか。極めつけは第一次世界対戦前の外国スパイがいきなり出てくる「最後の挨拶」。「瀕死の探偵」のワトソンのホームズに対する友情が胸を打った