あらすじ
不決断(先送り、責任逃れ)が蔓延する日本に今足りないもの――それは教養である。教養こそが決断を促し、「決断の精度をあげていく」のである。そのような教養の大切さは、著者が創立学長を務める国際教養大学の就職率が毎年ほぼ100%であることが証明している。決断が未来を拓くのは、個人の人生においても同じ。70歳を超えてなお実践を続ける長い経験から得られた、現代社会をより賢明に生きていくための教養の新たな形を明らかにする。
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Posted by ブクログ
ここ2年くらいで様々な大学論・教養教育論を読んだ。本書はその中で最も平易な言葉で書かれた、深い、本質を端的に述べた教養教育論だと確信した。本当に教養のある方の文章はとても分かりやすく、そして心に響く。
中世の自由七科には、これまでにも関心を寄せてきている。史実としてただ理解するのではなく、連綿と続く教養教育の流れを捉えることが有効。各章で著者は、自由七科を現代的に解釈し、国際教養大学で力点を置く科目を紹介している。この発想はかなり参考になった。おかげで、この自由七科という定性的な概念をどう統計処理するか。ちょっと試したい方法が浮かんできた。しかし数量分析(量的論証)はひとつの補助的作業(P.100)であり、それを絶対視しないように気をつけたい。細部がわかっても全体像を掴めない可能性があるとのことだ。
教養とは何か。教養教育とは何か。あと1年弱で自分なりに、現時点の答えを出さなければならない。著者が得た経験の中のほんの一コマをこの本から感じたい。欧米の大学論と合わせて、これからも折にふれて読み返していこう。
Posted by ブクログ
まず初めに断っておくと、自分の大学の学長の著作なので☆5です。はい。理由は人それぞれなので、ま、それでもいいかな?と思ってます。
内容としては「はじめに」のところに、以下の様に書かれています。
“真の教養とは単なる知識の集積ではなく、「実践」を伴うものでなくてはならないと、私は考えます。(中略)歴史や先人の経験から多くを学ぶ事は大切な教養の一部ですが、それらがすべてではありません。教養とは、常に動く社会情勢の中で新たに創造され磨かれて、更新されていくものでなくてはならないと思います。”
定義の曖昧な「教養」という概念ですが、これが、「中嶋嶺雄が考える『教養』」なのかな。と感じました。自分にとっての「教養」とは何なのか。考えさせられる一冊でした。
Posted by ブクログ
教養とはつまるところ、その人の判断の根幹を支えるもの。「行動哲学」である。この本は「日本人の教養」を図鑑のように記しているものではなく、日本人の教養とはどういうものであるか?または、どうあるべきか?というものを説明している本である。先日亡くなった著者の中嶋さんは僕が進学を決めた国際教養大学の創設者であったこともあり、今回読もうと思った。中嶋学長の経験に基づき、日本の大学がいかにクローズドで世界の学生から相手にされていないか、国際教養大学やICUなどの小さくても独自のグローバル化を達成している大学がこれから伸びて行くと考えるのはなぜか?などの理由がわかりやすく語られている。大学でも考えることになるだろう、「国際教養大学」「International Liberal arts」とはなにかは僕個人としてはこの本から読み取れなかった。