あらすじ
この涙は、どんな涙ともきっと違う。
吹奏楽部の1年後輩の男子に密かに思いを寄せる先輩女子が、告白できずに卒業していく「流れる川」。離婚する妻が夫との最後の会話のなかで、下の名前ではなく「あなた」と呼ばれたことを印象に残す「春の雨」。二十八歳の娘が、仲の良い母の再婚を自分のなかでようやく祝福できる気持ちに至る「母の告白」。
女性アイドルグループのメンバーが脱退することを知った、ある女子ファンの心情を追った「にじむオレンジ」。仲良しの少し不良の女子高生から、上京してしまうために様々なプレゼントをもらうことになる女子小学生を描いた「屋上で会う」。
――単なる卒業式、恋愛絡みに留まらない、様々な年齢、様々なシチュエーションのそれぞれの卒業模様を精緻に描きとった、どこからでも読むことのできる1話完結の短編集。
文庫巻末対談(対談者・朝井リョウさん)を掲載。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
巻末の対談で朝井リョウさんも言っておられましたが
「卒業」と言うテーマだけで、こんなにもたくさんの種類のお話を書くことができるのが驚きです。
王道の学校からの「卒業」にしても、中学生なのか、高校生なのか、大学生なのかによって抱く思いは違うし、
自動車学校、アイドル、子育て、相手との関係性など
いろんな「卒業」を味わうことができました。
冒頭の短歌を読み終わった後に読み返すと、さらに物語の深みが増してよかったです。
Posted by ブクログ
いろんな卒業を切り取れる加藤さんはすごいなあ。卒業って学校だけじゃないんだよね。自分のなかで落とせたら、区切りをつけられたら、卒業できるんだよね。自分なりの卒業、そろそろしようと思ってるので。こういう風にたった何ページかで終わってしまうような恋でも、ちゃんとさよならしようと思うよ。
Posted by ブクログ
母の告白が1番面白かった。短編集の中で1番、えっ!と驚かされる展開だった。母親が子離れできていかなったように、娘も親離れができていないという内容。
Posted by ブクログ
人生における「卒業」は学校に限ったことではなく、こんなにもいろいろ。好きな人との別れや想いを断ち切ることも、ある種の卒業。1編が15頁前後、さくさく読める卒業話が13編。
親離れ子離れにまつわる「母の告白」と、大好きだった二股男との再会を描く「全て」が私は特に好きでした。
高校在学当時に短歌集でデビューを飾った著者だから、それぞれの冒頭には短歌付き。巻末の対談相手は朝井リョウ。これを読むと、どの話も面白さが向上します。
卒業してから気づく、その場所が、自分で考えていたよりもずっと、愛おしい空間だったということ。