【感想・ネタバレ】犯罪のレビュー

あらすじ

一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の末っ子。彫像『棘を抜く少年』の棘に取り憑かれた博物館警備員。エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗。――魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。高名な刑事事件専門の弁護士である著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの哀しさ、愛おしさを鮮やかに描き上げた珠玉の連作短篇集。クライスト賞ほか文学賞三冠、2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いた傑作。単行本より改訂増補された最新決定版!/解説=松山巖

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Posted by ブクログ

ネタバレ

<(前略)私には参審裁判所で裁判長を勤めたおじがいました。故殺や謀殺などの殺人事件を扱っていました。おじは私たち子どもにもわかる事件の話をしてくれました。でも、いつもこういってはじめたものです。「物事は込み入っていることが多い。罪もそういうもののひとつだ」

おじのいうとおりでした。私たちはさまざまな物事を追いかけています。ところが物事の方が速すぎて、どうしても追いつけないものです。私の話に出てくるのは、人殺しや麻薬密売人や銀行強盗や娼婦です。それぞれにそれぞれがたどってきた物語があります。しかしそれは私たちの物語と大した違いはありません。私たちは生涯、薄氷の上で踊っているのです。氷の下は冷たく、ひとたび落ちれば、すぐに死んでしまいます。氷は多くの人を持ちこたえられず、割れてしまいます。私が関心を持っているのはその瞬間です。幸運に恵まれれば、なにも起こらないでしょう。幸運に恵まれさえすれば。(後略)>

 まさに本書「序」のとおりだ。たまたまそれが可能な状況や環境が訪れた/いつの間にかそのような事態に陥ってしまった彼ら“犯罪者”と、まだ罪を犯してない私たちとの差など紙一重なのだろう。作者が描く数々の罪はどれも異様で不可解なものばかりだが、それは私たち人間そのものを描かんという意図の表れではないだろうか。

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2024年09月17日

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ネタバレ


「順調なときにだけ約束を守るというのではだめだ。」

フェーナー氏が立てた誓いは、最期まで守られたのだろうか。法廷で、今でも妻を愛していると、そう誓ったからだと、話す場面が目に浮かびます。ついでに涙も
それがいつか身を滅ぼすとしても、立てた誓いを破るわけにはいかない。それは裏切りになるから。ほんとうに、痛いくらい素直で泣きたくなるほど優しい人なんでしょうね
何度読んでも、『フェーナー氏』 は泣いてしまいます。

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2024年01月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「物事は込み入ってることが多い。罪もそういうもののひとつだ」。当事者でない人たちがいくら物語を作ろうともそれは真実ではない。。
それでも、作者は現役の刑事事件弁護士なので(こういうこともあるかも…)のリアルさがあります。冷静だけど冷徹ではなくて、情緒もあるけど大仰ではない文章、好きです。
お話は特に「ハリネズミ」「緑」「エチオピアの男」が好き。
怖いのは「正当防衛」「愛情」。「愛情」には佐川一政の名前が出てきてタイムリーでした。世界的にも有名なんだな。
「棘」も、一人の人が壊れていく過程が描かれててゾッとしました。職務怠慢だ。。
“弁護人が証人に尋問する場合にもっとも重要なのは、自分が答えを知らない質問は絶対にしないということだ”…これにはしびれました。裁判は検察と弁護人どちらが場や流れを支配するかバトルもあるのだろうからそれはそうなんやろけど。
「タナタ氏の茶椀」(わんの字が出ない)も、、5人よりタナタ氏側の方が裏社会って事だったんだろうな。チンピラ3人が小心者で良かった…一人、ギリシア人なのにフィンランド人だと言い張ってる人はどうかしていて面白かったです。「家族はみんなギリシア人だけど、俺まで一生ギリシア人になってうろつきまわることもないだろ」(???)

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2022年12月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・あらすじ
刑事事件専門の弁護士である作者が罪を犯した人々を描く短編集。

・感想
シーラッハ3作目なんだけど特徴的な修飾のない平易な文体は読んでると自分が参審員になった気持ちになる。
罪に問えない、問いたくない…物事は全て複雑。
特に好きなのは序、フェーナー氏、棘、エチオピアの男。
最後の「これはリンゴではない」という一文と解説を読んで前編にリンゴが出てるのに気づいた…w

「緑」で最後に「自分の数字は緑」と言うんだけど…これはどういう事なんだろう?
さっぱり意味がわからない…。

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2024年03月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大好きな本屋大賞、2012年の翻訳小説部門第1位作品、このミス第2位等々、多くの賞の受賞作ということで手にした一冊です。

著者の作品は初読みでしたが、著者がうまいのか、訳者がうまいのか、やはり両者がうまいんでしょう。
※翻訳がうまいと感じたのは「獣どもの街(ジェイムズ・エルロイ)」の田村義進さん以来です。

11の短編は全てが刑事事件の弁護人として罪と犯罪者に向き合います。

1話あたりざっくり20P程度なんですが、なにせ描写がうまい。

特に印象に残ったのは「棘」、精神が崩壊していく様、そしてそこから立ち直るラスト、なるほど。

これってあり得なくないよなぁ...って思いながら、この時の犯罪者の心理って...なるほど、こんな感じなんだ...

ってな感じでサクッと読み終えました。

特に改行の使い方は計算されているなぁと感じた作品。

機会があれば他の作品も手にしてみたいと思います。


説明
内容紹介
【本屋大賞翻訳小説部門第1位】一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の末っ子。エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗。──魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。弁護士の著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの真実を鮮やかに描き上げた珠玉の連作短篇集。2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いた傑作! 解説=松山巖
内容(「BOOK」データベースより)
一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の末っ子。エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗。―魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。弁護士の著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの真実を鮮やかに描き上げた珠玉の連作短篇集。2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いた傑作!
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
シーラッハ,フェルディナント・フォン
1964年ドイツ、ミュンヘン生まれ。ナチ党全国青少年最高指導者バルドゥール・フォン・シーラッハの孫。1994年からベルリンで刑事事件弁護士として活躍する。デビュー作である『犯罪』が本国でクライスト賞、日本で2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位を受賞した

酒寄/進一
ドイツ文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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2022年05月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった。フィクションということだけど、実体験に基づいている話も多いのでは、特に「エチオピアの男」が実話に近かったら良いな、と思う。
文章もすごく読みやすかった。原文もこんな感じなのかな。見倣いたい。

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2021年05月05日

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