あらすじ
一九三〇年代初頭、世界で初めて性別適合手術に成功したとされるデンマーク人画家の実話に基づく物語。女性モデルの代理を務めたことで自らの中に潜む〈女性〉に気づいたアイナーは、やがて〈リリー〉という女性として生きることを決意。妻はそんな夫を理解し、支えるが……。E・レッドメイン主演映画の原作。
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Posted by ブクログ
かなり面白かった。私が思う「純愛」に1番近い話だと思った。グレタはアイナーの事を本当に愛してた事が伝わるし、アイナーもグレタの事を信じる事で、変わっていく自分を受け入れたのだと思った。単純なトランスジェンダーの話と油断していたが、結構好みの恋愛小説で驚いた。
読み終わった後、アイナーの名前で検索をかけたところ、「インターセックス」や「性分化疾患」という言葉を知った。これらにまつわる問題はかなり複雑で、同じと捉えられやすいLGBTとは、問題視する論点が全然違う。そのような学びもあり、読んで良かった。
Posted by ブクログ
本書は、約90年前、世界初の性別適合手術を受けたとされる画家の実話を基にした物語。
あるできごとをきっかけに、自分の中に潜んでいた“女性”に目覚める画家のアイナー。同じく画家の妻・グレタの絵のモデル“リリー”として過ごす時間が長くなるにつれ、リリーとして生きることを切望するようになっていく。グレタ
は戸惑いつつも夫の変容を受け止め、支える。そしてアイナーは、ついに性別適合手術を受ける…。
2015年、エディ・レッドメイン主演により映画化された。性別を超えた人の絆を感じる作品で、グレタ役のアリシア・ヴィキャンデルともども魅力的だった。
Posted by ブクログ
妻グレダに感情移入してしまった為かリリーへと変貌を遂げていく夫アイナーの決断に少し苛立ちを感じてしまった。しかし、リリーは心が認識している人格(性)を「ありのまま」に生きようとしただけであり、体も女性として生まれていたらその選択も身勝手に思わなかったのかなと複雑な気持ちになった。精神と肉体の齟齬に苦しむリリーに私も心が侵食されそうになった。
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「世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語」が2015年の映画化をきっかけに「リリーのすべて」として文庫本化。
ネーミングセンスとしてはさて置いて、
元の邦題のタイトルのままを文学的語っている。
ただ、映画きっかけで読んだ私としては、
この小説は映画「リリーのすべて」を序章とした
大長編小説のように感じた。
実在の人物を元に語られる物語で、
その事実のキャッチーさが目を引くけれども、
たっぷりとした文章で語られるのは、
真にリリーになったアイナーと、
アイナーの妻であったグレタの愛の軌跡。
彼らの生き方や信念が、本当に本当に
尊いものとして当時受け入れられていたなら、
今の社会はもう少し、人に対して優しかったのではないか。
自分も優しくなれていたのではないか、と思う。
映画の中の霞んだコペンハーゲンを、
愛おしく思える原作小説でした。
Posted by ブクログ
アイナー/リリーとグレタ両人が「アイナー/リリー」の間で戸惑い揺れ動いてる様子がとても丁寧に描かれているという印象。
グレタの庇護のもと成長したリリーという少女が、やがてはグレタから離れ、ひとりの大人の女性として独立する(そしてグレタも女性として新たに歩み出そうとする)お話かな。
だから突き放されるようなラストが寂しい。
グレタだけでなく、ハンス、カーライル、ヘンリクと理解者に囲まれた優しい世界のお話なんだけど、親離れ子離れのような寂しさと苦しみが切ないな。
映画はひとを愛することに焦点が当たってるのでさらに優しい世界。泣きたいなら映画を見た方がいい。
Posted by ブクログ
映画化を知って、原作が気になり本日購入。
映画のCM動画を公式サイトで見たうえで原作読んでいます。
女装のきっかけは、急に来れなくなったモデルの代わりにストッキングをはいて、ドレスを当てた姿で妻のモデルになり(夫婦ともに画家です)、絵筆を走らされた体験から。この、ストッキングの描写がとってもなまめかしいです。あら、自分ってばこんなに足フェチだったかな?と興奮してしまいました。「グレタ、このことは秘密にして」という恥じらいの見せ方もそこら辺の女子に比べると格段に上です。
異性装から始まった物語が性別違和に進み、最終的には半陰陽だったという最後まで引っ張りまくります。
元々半陰陽だったから幼いころ同性(この場合男)との淡い恋愛もどきがあったという伏線という読み方でよろしいのでしょうか。
さて、ぶっちゃけた話をすると「旦那が一度女装したらそれが思いのほか快感だったのでその後も女装を続けていて、当人や妻がそれをリリーと読んで容認している状態」なわけですが、「あら?リリーがいたの?彼女また来るかしら?」「君が望むならね。」というすっとぼけた会話が繰り広げられます。「あら?リリーがいたの?」じゃなくて「アイナー、女装してないで夕飯の準備手伝ってよ!」とか言ってしまったら、この物語速攻終わってしまいます。この少し回りくどい感じが読んでる方をヤキモキとさせて、「リリーに会いたい!!」と思わせるのです。アイナーとリリーの間で行き来するところはファンタジー小説を読んでいるような気分になりました。
さて、物語中盤で「リリーの格好をしている時に心はアイナーになってしまった」という困った事態に当たります。リリーが自分をリリーと思っていてるのならば全然問題ないのです。ですが、「自分を男のアイナーと認識しているのに、格好はリリー」。自分をリリーと思っているなら自分で自分の姿にフィルターを無意識に書けている状態なので自分の姿は気になりませんが、男アイナー全開の時にリリーを見てしまうと「男がドレス着た状態」をなんのフィルターもなしに見せつけられる状態になるのでショックは大きいかと。
自分は映画の告知動画を見てから原作を読んだのでイメージは映画の見た目で出てきました。まっさらな状態で読んだらまたそれはそれで違った印象になるのでは。これは、映画を見に行きたいです。どう終わらせるのか気になります。上映している映画館が少なく、近所ではやっていないようなので調べてから行かなくてはなりません。
作中で男→女の性別適合手術が卵巣、子宮も移植して妊娠出産まで可能にするところまで行っているのですが実際は陰茎陰嚢除去と造膣手術までです。念のため。
Posted by ブクログ
映画に感動して原作が気になり読んでみた。
映画と異なる描写が多くて驚いた。
グレタの、アイナーとリリーへの愛の深さに心打たれた。私だったらどうするか?
そしてアイナーとリリーの、自分の在り方を追求する姿が印象的。当時の医療レベルを考えると、相当な勇気がいるはず。周りに合わせず自分の生き方を全うする姿勢に私自身考えさせられた。
1つの情景•心理描写に緻密な表現方法がなされていて、より登場人物たちの心情やその風景をイメージすることができた。(人によっては読みづらいと感じるかもしれない)
ラストの描き方が意外だった。
Posted by ブクログ
映画化された「リリーのすべて」の原作。夫アイナーが絵のモデルで女装した事をきっかけに、自分が女性である事に目覚め、世界初の性別適合手術に成功し女性として生きていく…。
何が凄いって、妻グレタの夫への変わらない愛情。夫が女装して街に出ようが、そして男とキスして帰ってこようが、手術を受けて女になろうが、アイナー本人を全て受け入れ愛していく…。