【感想・ネタバレ】美しの首のレビュー

あらすじ

大坂城落城、かぶき者、安寿と厨子王、光源氏の恋人の娘・玉鬘――。滅びゆく時代に生きた男と女の、はかなくも悲しい物語、全四篇を収録。近藤ようこの傑作時代作品集、待望の新装版。

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Posted by ブクログ

近藤ようこの時代漫画作品集。
 美(いつく)しの首
 雨は降るとも
 安壽と厨子王
 玉鬘
の4編を収める。
前半の2つはオリジナル・ストーリーだろう。後半2つは、説経節の山椒大夫、源氏物語をベースとした物語である。ベースとするとは言っても、原作とは著しく異なる。そういう意味ではすべてオリジナル・ストーリーと言ってもよい。

<美しの首>
時は元和元年。大坂城で働く下女であったお小夜は落城の折、あるものに魅せられ、必死に城から持ち出す。それは敵方の美しい若武者の首。乱世の只中、恋を知らずに死ぬかもしれないお小夜。せめて美しい首を手元に置きたいと思ったのだ。ところがその首は何日たっても朽ちることがなかった。お小夜は放浪の聖(ひじり)に首を見せ、どうしたものかと相談する。すると聖は不気味な策を授ける。

<雨は降るとも>
大坂城落城が一世代前のこととなり、太平の世が訪れつつあった。しかし、時代の波に流され、傍目には贅沢ながら、虚無的に生きるものもいた。新太郎もそんな若殿の1人。安穏とした暮らしの退屈を女遊びで紛らわせていた。新太郎の許嫁、年若いおまあは安泰を約束されながら、閉塞感の中で生きることに漠然とした不安と不満を抱いていた。あるとき、新太郎と街へ出かけたおまあは、猿曳の犬丸と知り合う。
シンプルな線で、河原もの、かぶきもの、遊女の風俗がきりりと描き出される。松浦屏風(大和文華館所蔵)を思い起こさせる。幕切れには、少々、伊勢物語の「芥川」の風情も漂い、濃厚な余韻を残す。

<安壽と厨子王>
姉・安壽、弟・厨子王という設定だけは残すが、ストーリー的には換骨奪胎。中世の地獄・極楽思想も絡ませ、近親相姦も織り込む。妖艶かつ魔性の安壽が凄絶に美しく怖ろしい。が、さらにその一歩上を行く厨子王の「悪」。一大ピカレスクロマンである。

<玉鬘>
光源氏が愛した夕顔の忘れ形見。筑紫で暮らしてきたが、探し出した源氏によって六条院に引き取られる。玉鬘の乳母は、儚く亡くなった夕顔の轍を踏ませまいと、ある「嘘」を玉鬘に信じ込ませていた。玉鬘の目から見た「源氏物語」である。
原作を大枠では崩していないが、蛇のイメージを散りばめながら、女の魔性を鮮やかに描き出してぞくりとさせる。個人的にはこれが一番よかった。

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2016年09月08日

Posted by ブクログ

美しの首
美しい首の奇譚が、なんとばばさまに落ち着こうとは。

雨は降るとも
身分違いの駆け落ち。
雨は降っても美しいのだ。

安寿と厨子王
山椒大夫。厨子王のピカレスクな魅力。

玉鬘
光源氏、朝の光の中では醜く老いた男。

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2016年02月21日

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