あらすじ
岡本綺堂といえば“半七捕物帳”に代表される怪奇趣味が横溢する探偵譚が挙げられるが、その非凡な才筆は人情の機微を描かせても超一級であった。――突如改易を申し渡され、流浪の身となった武士一家が辿る凄絶な冒険譚「海賊船」、大正期に曲芸団を率いて諸国を旅する美貌の女座長の数奇な運命を綴った表題作など、ほとんどが初文庫化となる傑作7編を収録。
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Posted by ブクログ
実際、その螢は母の亡き魂であるかのように、三人の行く手を照らして庭口から表門の方へ導いて行った。そうして、どこかへ消えてゆく螢の影を、お末は見送って、手をあわせた。不取締りの屋敷だけに、門番は宵から寝てでもしまったのであろう、門の潜りはさっきのままに明けてあったので、三人はやすやすと門の外へぬけ出して、初めてほっと呼吸をついた。それでも藤太郎のことが気にかかるのであろう、お房は黙って俯向いて歩いた。