【感想・ネタバレ】女には向かない職業のレビュー

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Posted by ブクログ

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初めてのP・D・ジェイムズ。とっつきづらいイメージに反してリーダビリティが高く、読みやすいじゃん!と思ったけれど、解説によればこの作品が例外的に読みやすいらしい。
共同経営者を自殺でなくしたばかりの女主人公コーデリアが、自殺とみなされた青年の死の原因をひたむきに探る物語。年若い女探偵ものらしくスリリングなピンチもあり、真相を探るべくひたむきに頑張るいじらしさに胸打たれ、そして後半に至る怒涛の展開、最終盤のある意味でのどんでん返しには驚いた。本当に面白かった。ダルグリッシュ警視ものを他にも読んでみたいけれど、なかなか難易度が高そうだなぁ

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2023年02月08日

Posted by ブクログ

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コーデリア・グレイは駆け出しの私立探偵。共同経営者がある朝オフィスで自殺し、持ち込まれた事件を自分一人で対処することになる。はじめての依頼は高名な微生物学者からのもので、息子の自殺の動機を調べること。亡きパートナーの教えを頼りに調査を始めたが、不審な事実が次第に明らかになり…。登場人物表の2番目に書かれている人(おそらく重要人物)が、いきなり1ページ目から亡きものとなってるところに思わずうなった。うーん、つかみが巧い。ケンブリッジを舞台とした事細かな描写…キングズ・カレッジ・チャペル、書店、ポークパイ、ケム河でのパンティング、自転車向きの田舎道…なども個人的にツボ♪主人公コーデリアは若さあふれる真面目さと冷静さを持つ、度胸の据わった22歳の女性。話し方がすっきりしていて好感が持てる(訳がいいのかも)。初めての事件は手探り状態ながらも、自分の判断と教えを信じて、着々と調査を進める姿がすがすがしい。でも、さすがに自殺した青年の住んでいたコテージ(首吊りの遺体があった部屋)に住み始めたときには、おいおいやめときな!っと突っ込みを入れたくなってしまった。すごい度胸。こんなところも「女には向かない職業」って絶妙なタイトル。暗闇に首つり枕を仕掛けられて何者かに警告を受けたり、井戸に放り込まれて傷だらけになりながらレンガを這い上ったり、車で追いかけたりというハードな探偵っぷりを発揮する側面ももちろん楽しい。だが、コーデリアがかつて進学をあきらめたケンブリッジに奇妙な巡り合わせでとうとうやってきた!という束の間の感激を現す場面や、事件後パートナーの上司だった警視に対して冷静沈着さの糸が切れ、感情のまま抗議をぶちまけた場面にこそ、心を動かされる面白さがある。(ちなみにこの警視は別シリーズの名探偵役)。いい読書時間を過ごせる傑作だ。 

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2022年08月12日

Posted by ブクログ

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名探偵コナンのあのキャラ名の由来。ずっと読みたいとは思っていたが、ハヤカワ文庫が新カバーになったのを見てついに購入した。
本書が著されたのはかなり以前で、ずっと新訳もされていないようなので、少し読みにくさを感じるのは仕方ないように思った。特に序盤は、一読して意味の取りづらいような箇所があった。それでも、物語が進んでいくにつれ、それほど気にならずに読み進めることができた。
ミステリであり、もちろん、コーデリアが謎を追っていく過程も面白いのだが、舞台が大学都市?のイメージの強いケンブリッジであることや、随所に英国の文学者からと思われる引用があったり、ケンブリッジの川の風景描写が鮮やかだったり、安易に展開の面白さを追求しているというよりも、落ち着いた文学的な教養のある小説の要素も強いように感じた。
おそらく一般的に、本書はミステリーとしての評価もさることながら、コーデリア・グレイという若い女性がたった一人で探偵としての最初の仕事をひたむきにこなしていく姿を描いていることに、より着目されて語られることが多いのではないか。
そして確かに、率直に言って、コーデリアが悲運な状況にもめげずに、探偵という仕事を一人でこなそうと立ち向かっていく様子に好感を持った。一種の仕事小説のようにも読める。青山先生の灰原哀のイメージももしかしたらまさにコーデリアから取られている面もあるのではないかとも思った。
ただ、コーデリアの魅力だけではなく、謎が明らかになる過程や、密かに持った銃で犯人側と渡り合ったり、何とか窮地を脱出したりする場面など、細部も含めてスリリングで飽きさせない作品であると思った。
また、意外であったのは、一応の真相がすべてわかってから、コーデリアが亡きパートナーの仇とも言える警視と相対するまでの物語にも割と紙面が割かれていたこと。
こんなに魅力的な女性の探偵はなかなか出会えないように思った。ただ、残念に思ったのは、コーデリア・グレイのシリーズはたった2作しかないことである。そして第2長編も購入したので、いつか必ず読んでみたいと思う。

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2021年12月18日

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英国女流ミステリの大家P・D・ジェイムズ。彼女の代表シリーズといえばアダム・ダルグリッシュ警部物が連想されるが、それと双璧を成すのが本作を1作目とする女探偵コーデリア・グレイシリーズだ。しかし双璧と成すと云えど、実際にはこのシリーズ、たった2作しかない。なのに読者の支持は非常に高く、3作目を期待する声もあるほどだ(結局書かれなかった)。その人気の秘密は主人公コーデリアにある。突然勤めていた探偵事務所の上司の自殺でその事務所を弱冠22歳で引き継ぐことになったコーデリア。彼女のこの若さゆえにまだ残る純粋さが時に武器になり、時に仇となり、まだ彼女にとっては狭い社会との軋轢に悩まされるその姿に多くの社会で働く女性が共感したのだろう。

そんなコーデリアが引き受けた依頼は大学を中退し、自殺した青年の自殺した理由を突き止めて欲しいというもの。最初に手がける事件として、これほどコーデリアに向いている物もないだろうと思わせる、実に上手い内容だ。

とはいえ、事件はさほど印象に残るようなものでもなく、本作の主眼はやはりこのコーデリアが世間に揉まれ、亡き上司の教えを思い出しながら、徒手空拳で事件を探っていくその姿にある。特に私は捜査の途中、コーデリアが古井戸に落ちてしまい、そこから這い上がるシーンがあるが、そこにいきなり右も左もわからないところから必死に這い出ようとしているコーデリアの心情がメタファーとなっており、非常に印象深く残っている。
また本作の歴史的価値も高く、私がミステリを読み始めた頃、世間ではサラ・パレツキーやスー・グラフトンらに代表される4F物なる、女探偵を主人公にした作品が流行していたが、本作はそのブームに乗じた物ではなく、それに先駆けること10年以上も前に書かれた本格的女探偵物だということだ。ちなみに4F物とは作者、主人公、読者、そして日本では訳者が全て女性(Female)という意味。

が、そんな名作も、当時まだミステリ読みとしてはさほど冊数をこなしていない私にしてみれば、いささか退屈を感じたのも正直な気持ち。特にこの作品は章立てが少なく、1章が60ページぐらいあったような記憶があり、細かい章立てでいつでも読み止める事が出来る日本その他の小説に慣れていた私にとって、ちょっと読みづらかった。私はどうもある区切りがないと、読み止めることが出来ない性質なのでこれにはちょっと困った。
そして最後に登場するダルグリッシュ警部とコーデリアの対決シーン。初ジェイムズ作品としてこれを読んだ私にはこのシーンの意味がほとんど判らず、戸惑いを感じてしまった。この後、現在に至り、私はジェイムズ作品を読んでいくのだが、ダルグリッシュ警部シリーズも読んだ今ならば、このシーンは当時の数倍にも増して胸に響いてくるものと思う。

小説には読む時期というものがある、というのが持論だが、正にこれはそういう意味では読み時期を見誤った作品といえよう。いつか機会があればもう一度読み直してみたい。

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2016年12月02日

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