あらすじ
おかえり、僕らのアリス――。サン電子株式会社「ナイトメア・プロジェクト」制作の、200万ダウンロードを誇る携帯ゲーム、待望の公式ノベライズ! 【あらすじ】終わりの見えない廊下。誰もいない教室。すべての音が消えた街。 夕暮れの迫る学校で目覚めた女子高生・葛木亜莉子(かつらぎありこ)が出会ったのは、「チェシャ猫」と名乗る、フードを目深に被った怪しげな人物だった。 「さぁ、僕らのアリス。シロウサギを追いかけよう」チェシャ猫に誘われ、妙なヒトやケモノたちが住まう「人の消えた世界」へ迷い込んだアリス=亜莉子は、元の世界に戻るために「シロウサギ」の行方を追うが――。やがて忘れられた真実と邂逅した時、新たな悲劇の幕が開く。その果てにアリスが見たものとは? さぁ、覚めることのない悪夢をあなたに――。
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廃棄パンの告白
一部ご紹介します。
・「俺は昔、人が羨むほど出来のいいストロベリージャムパンだった。
肌の白さ、つや、ふくらみ、もちもち感、きめの細かさ・・・・・・
どれをとっても俺にかなう奴はいなかった。もちろん一番に買い手がついたよ。
俺は最高の瞬間を迎えて、天寿を全うするはずだったんだ」
「ところがだ。あのくそったれ店主が!うっかり並べ直す時に落としやがったんだ!!」
「・・・・・・そいつのせいで、俺は床をスライディングする羽目になった。
俺は傷物になり・・・・・・俺が並べられるのを今か今かと待っていた客は俺ではなく、
俺の次にうまそうな奴を買っていった。俺は・・・・・・廃棄を宣告された・・・・・・」
「わかっているよ。どんなに出来が良くても泥にまみれたパンは売り物にならない。
俺たちはそういう存在だ。だけど、俺は諦めきれなかった」
「あんなささいなことでどうして全てを否定されなきゃならない!?
あんなたった一回の事故で・・・・・・どうして俺は存在意義さえ失わなければならない!?」
「俺たちはパンだ。俺たちは食われるために生まれたんだ」
「俺は必ず食われてやる・・・・・・!そう誓った俺は廃棄回収車が来るたびに、暴れまくった」
「廃棄回収車に乗ることは免れた。だが、俺を食べたいという人は現れなかった・・・・・・。
それでも俺は待った。いつか必ず、俺を食べたいと言ってくれる人が現れるって」
「待って、待って、待って・・・・・・気が付けばこんな姿になっていた」
「カビが生え、干からび、異臭を放つ。自分でも寒気がする。
わかっていたよ。もう誰も迎えになんか来ないってことくらい・・・・・・わかっていた」
「俺・・・・・・明日の廃棄回収車に乗るわ」
「ま、ここらが潮時だろ」
「そうやって俺の代わりに泣いてくれたからさ、なんかもういいかって」
「きっかけを待っていたのかもな。諦めるきっかけを」
「ま、結果的にアリスに会えたわけだし。俺の悪あがきも少しは無駄じゃなかった、よな?」