あらすじ
ひたむきな自然児であるだけに傷つきやすい少年ハンスは、周囲の人々の期待にこたえようとひたすら勉強にうちこみ、神学校の入学試験に通った。だが、そこでの生活は少年の心を踏みにじる規則ずくめなものだった。少年らしい反抗に駆りたてられた彼は、学校を去って見習い工として出なおそうとする……。子どもの心と生活とを自らの文学のふるさととするヘッセの代表的自伝小説。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
校長の「疲れきってしまわないようにすることだね。そうでないと、車輪の下じきになるからね」という言葉が印象に残る。
読み終わってから思うと、この言葉がハンスの人生そのものだったように感じる。ハンスはずっと頑張っていて、期待に応えようとして、勉強もして、周りから認められようとしていた。でも、そのうちに何のために頑張っているのか分からなくなって、自分自身がどんどん疲れていってしまったんだろうな。
特に印象に残ったのが、楽しく人が集まっている飲み会のような場面から、最後にハンスが川を流れていくところまでの落差。さっきまで人間らしい楽しさがあったのに、そこから一気にあんな終わり方になるのがあっけない。
人って、何のために頑張るんだろう。
Posted by ブクログ
周囲の期待に応えるために「本当に自分が好きなこと」を押し潰された結果、精神的に疲れてしまい
自殺に追い込まれるという少年の話。
冒頭の、「自分より下の貧困層の人は見下し、自分より地位が高い富裕層は「成り上がり」とさげすむ
父の説明から、タイトルの「車輪」は
「社会的な立場」を指しており、
もし努力が実ってエリートや高い地位になれたとしてもそれをいつまでも維持し続けることは難しく、時には社会や運命という「車輪」が回って
下層に転落する可能性もあるということを暗示しているのだと考えた。
話は変わるがこの本を読んで真っ先に思い出したのが「高学歴難民」という本である。その本でもハンスと同じように、社会的地位が高いところから急激に下がった方々の実話が書かれていた。
中でも印象に残っているのが、猛勉強の末に念願の役職につけたのに職場の雰囲気が合わず数年で退職された方の話である。彼女はその後今まで必死に勉強してきた自分のプライドを下げたくないために弁護士を目指した。そのために必要な司法試験の合格に向け一年中自宅で猛勉強を重ねたが、何度受けても落ちるばかりで身も心もすり減ってきて…という流れだっただったような記憶がある。
努力を重ねて、夢を叶えたり高い身分や役職についたり試験に受かること事態は素晴らしことであると思うが、
それだけではなく精神的・身体的に健康を保てるように定期的に休憩をとったり、
目指しているものが周囲の期待に応えるためだけではなく本当に自分に合っているかを確認することも
大事だと思った。
もしハンスが、周囲から大いに期待されていた「秀才」という概念にこだわることがなく、
自分が本当に好きだと感じていた釣りや自然の中でのびのびと過ごすことをもっと長く楽しむこと
ができていれば、また違う人生を歩めたのかもしれない。
Posted by ブクログ
とても心に沁みた作品だった。森の中や川の情景描写がとても綺麗でうっとりとした。私は特にりんごの収穫の時の描写が好きだ。
ハンスは片親のため母親の愛情を受けることなく、父親を含む誰にも心を開くことが出来ずにいたと思う。そして子供らしい少年時代を過ごすことが出来ずにいた。そんな中、唯一心を開いていた親友との別れによってハンスは精神を病んでしまったのだと思う。そんなハンスも恋をすることで青年へと成長していく。しかし環境が変化しても自己矛盾や苦しさを持ち続けた結果、最後を迎えてしまったのだと考えた。
現代においてもこのような子供はいるのではないだろうか。受験戦争で子供の時から子供らしい生活を送ることが出来ず、精神を病んでしまうような子供達だ。そして一度の失敗で周りの視線が怖くなってしまったり、周りに馴染めなくなってしまう子供も多いのではと思った。
そんな現代だからこそ、この作品は不安を感じる若者に刺さる作品だと思う。
Posted by ブクログ
主人公が勉強に押しつぶされて田舎に帰ってきたとき、美しい自然の描写があって、それは世間の評価とは関係なく存在しているという部分がとても心に残った。
今の社会にある苦悩とかなり似ていて意外だった。
Posted by ブクログ
「トーマの心臓」からの流れで読んでみた。
前半は読むのが結構苦しかった。
町からたった一人神学校を受験するということで、その合否はもちろん、一挙手一投足が周りの人に監視されてるような状況が辛すぎる。
神学校時代もハイルナーぐらいしか親しい友達ができなくて、勉強に押し潰されるような毎日は苦しそうだった。
ただ、もっと生徒間での足の引っ張り合いみたいのがあると思っていたらそういうのはほとんどなかったので、それはよかった。
自分はどちらかと言うと高学歴に入る部類だけど、もちろん町一番の天才でもなかったし、親をはじめとする大人たちからそんなに重いプレッシャーを受けたとは感じていないので、それが本当に幸福なことだと思った。
つい最近子どもの教育について実生活で話題に上がったのでいろいろと考えさせられることがあった。
大人として一回は本作を読んでおくべきですねぇ。
個人的には神学校を脱出してから、第6章からが面白かったかな。
学校から解放されてからの方が、自然とか周りのものの美しさを思う存分噛み締めているように感じた。
特にりんごを絞る場面は臨場感があって、すぐにでもりんごジュースを飲みたいと思わせる魔力があった。
読んだ日にすぐ買った。もちろん果汁100%。
恋模様もよかった。
挫折して、当初の計画通りの人生じゃなくなってもいいじゃん、これも幸せじゃないか、と思い始めた矢先に、そんな…!!
結末は知らなかったのでびっくりしてしまった。
でもなんか不思議と後味悪い感じではなかったな。
Posted by ブクログ
青少年の危うさ。地元の田園風景や学校の周りの自然描写はみずみずしくて、牧歌的で、読んでいてヨーロッパの田舎に憧れる気持ちになった。
けど中身はなかなか沈鬱な感じ。自叙伝っぽい要素も多いとのことで、ヘッセさんかなり根に持ってらっしゃるんだろうなと想いを馳せながら読んだ。
地元の時点で、そもそも事件後の休暇中は魚釣りやりたいって本人が言ってるのに、休暇を勉強に費やさせるなよ...。牧師さんや校長のようなタイプの人たちは、それが本当に本人のためだと盲信してるからタチが悪い。
進学後については、これまでの無理や我慢がたたったのもあるだろうし、自身の能力の限界にぶちあたったのもあるだろうし、これまでの禁欲的な努力によって築き上げてきた価値観に対して、ハイルナーの叙情的な世界の一端に触れたことで根底からひっくり返されたこともあるのだろう。
いずれ、自分の子供に対しては、能力を伸ばしてやりたい気持ちは持ちつつも、本人のピュアなこころに無理強いをさせないようにしたいと思う。けど本人の気持ちは本人にしかわからない。対話していこう。
Posted by ブクログ
今でこそ一般化している「教育虐待」だけど、この時代に過剰教育の悲惨さをかけたのはすごいと思う。
親友と主人公、天才と秀才の対比が悲しかったな。
それでいて情景の表現がきれいで面白かった。特に神学校に受かったあとのつかの間の休息、釣り、川、優越感、イキイキと輝いて見えた。最後はその川で死ぬっていう対比……
つい最近まで受験生だったので特別に響いた
Posted by ブクログ
ハイルナーに出会わなければもしかしたら1番になって自分の信じていた理想の自分になれていたのかも知れないけれど、それはきっと自然と戯れている時のハンスが本当に心から人生を楽しんでいた時に蓋をしているだけになるからどうしたらハンスを助けてあげられたのか考えてしまいました。