【感想・ネタバレ】ぼくはいかにしてキリスト教徒になったかのレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年03月22日

題名だけ知ってて読んでみたかった本。訳のおかげもあって思ったより平易で読みやすく、面白かった。
強制的な改宗から始まったものではあったが、その清廉な信仰のよろこびと苦悩、熱意には胸を打たれた。武家の息子として八百万の神と儒教思想の中で育ってきた人間が、自分の根本・世界の原理としてキリスト教を受け入れ...続きを読むるために格闘する。ごりごりの儒教思想の御父上も改宗させたというのは本当にすごい。しかし日本では信仰の渇きを満たすことができず、アメリカにわたって様々な宗派と出会い、キリスト教国に対する幻滅も味わい、神学に疲れ、それでも自分なりの真理と呼べるものはつかみ取って帰国した。

終盤にある、真理の話がとてもよかった。キリスト教は真理だ、と言い切りながら、真理を定義することはできない、とも繰り返す。
「生命についての真の知識はそれを生きることによってしか得られない。メスと顕微鏡でわかるのはメカニズムだけだ。──真理もそうだ。ぼくらは真理を守ることによってのみ、真理を理解できるようになるのだ。理屈をこねたり、些細なことにこだわったり、こじつけをしたりしていては、真理から遠ざかるばかりだ。真理はそこにある。まぎれもなく、堂々と。そしてぼくらは自らそこまで行くしかない」
自分で生き抜くことによってしか得られない、とはいかにも東洋的な哲学に感じるが、真理を得るためには自ら近づくしかない、というのはとてもキリスト教的だなと思う。儒教はいまだ自分の中で生きているというようなことを内村は言っていて、日本のこうした思想的土壌の上でキリスト教が豊かに育つことができるはずだという確信もあった。それを見事に示したのがこの真理についての話ではないかと思う。
しかし解説の人が、定義と教義についてきっちり議論することなしに正統派キリスト教徒を気取るなぞおかしい、内村はキリスト教徒になり損ねたのではと書いていてこの本の何を読んだのかとびっくりしたが、あの悪名高い「ふしぎなキリスト教」の人だと気づいてなるほどねと思った。解説だけ取り替えてほしいなあ。

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