あらすじ
「無邪気な顔で、大人を煽るのはやめなさい」暴力団の使いっ走りの夏目は、組長に片思いをしていた。だが、その思いとは裏腹に、組長の側近・橘の元で働くことに。冷酷で蛇のような男は、夏目に常に厳しかった。ある日、組長と情人の激しい性行為を見た夏目は、身体の疼きを抑えられず、橘の手で達かされてしまう。昂ぶるたびにされる淫らな行為――橘は決して最後まではしなかった。言葉は少ないけれど、触れる手から伝わる優しさに、夏目は橘を意識し、次第に彼の側にいたいと思うようになって……。
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Posted by ブクログ
「愛咬の掟」のスピンオフ作。前回、片想いしていた組長の永瀬が刑事の夕志と車の中で激しく交わっているのを目の当たりにしてしまい、心と股間に衝撃を受けたかわいそうなDT16歳、夏目の恋がメインです。
前回に引き続き、緒田涼歌センセのかわいくて綺麗なイラストだった影響もあり、物語の陰に潜む凄惨な部分よりは片想いに悩む夏目の気持ちがクローズアップされ、甘い雰囲気でした。
初心で無知な未成年である夏目の可愛らしさに心ひかれます。ものすごく悲惨な生い立ちで、学校にもろくに通わず、愛情も注がれることなく、893の下っ端のパシリとして辛うじて生きてきた夏目。それなのに、無知ゆえにまったく世を拗ねたところがなく、とても純真な子です。
前作の顛末を、そんな夏目視点で読む事ができるのが面白いところ。なぜ永瀬のことが好きになったのか、なぜ夕志の監視役にされたのか、前回疑問だったことがいろいろわかってスッキリします。
そして、永瀬と夕志の関係の後ろ側で、橘と夏目の間にどんな事が起こったのかというのも知ることができます。夕志のその後がわかるところも嬉しい。
重複する箇所がたくさんあるので、前作を読んでいると一層満足度が上がりますね。それぞれの受視点で描かれているので対比できます。そして、スピンオフにしては期待以上の密度ある内容でした。
エロシーンも期待以上でした。
クール眼鏡というよりは、怜悧で思考が読めない感じの橘が、夏目にHの手ほどきをしていくのです。永瀬が猫を飼ったと例えるなら、橘は仔犬にしつけをしたということらしいですね。
夏目は橘に受けた恩には感謝しているのですが、何だか怖いと感じています。893ではないけど、深い繋がりがありそうで、年齢も37歳と親ほども離れているのです。
そんな彼が、何故かいろいろと夏目の世話を焼いてくる。怯える仔犬にエサをあげたり、仕事を与えたり、誉めたり撫でたり。Hはねちっこいけど優しくて、夏目は快感すら与えられます。
ソフト?な羞恥責めや言葉責めがエロ。そして、素直に従いしつけられていく夏目にも萌えます。
わけがわからないうちに淫らに喘がされ、だんだん橘の思いやりや寄り添う体の温かさに夏目の気持ちは変化していきます。
夏目の気持ちの揺れ方が上手く描かれていて、ほんとにかわいいなと感じてしまいました。
夏目視点なので橘の心情がわからないのですが、Hの時もただ夏目を気持ちよくしてやって最後まではしなかったり、夕志の仇討ちの後には距離を置いたり、かなり大切に扱ってるんですよね~
未成年の夏目の将来までも考えているのは明白なんですが、ただ、言葉に表さない橘の気持ちを彼が理解するのは無理な話で、理由が分からず悩み苦しんでるのが不憫でした。
かわいい恋というだけではおさまらないところもちょっと切ないですね。残酷な出来事はあっさり描かれてるけど、永瀬も橘も裏社会に生きる人間なのできれいごとばかりじゃありません。これから夏目がそういう裏社会の現実に直面して、無垢な心が汚れちゃったら悲しいのは橘同様です。
初めて結ばれるシーンは、妙に煽られました。夏目が「無邪気に大人を煽る」キャラというのを最大に発揮しています。クールな橘をメロメロにしてることが確信できます。
やっぱりエロが上手い作家さんです。
ラストシーンで、橘の股間を賛美している夏目の台詞に爆笑しつつ、悶え死にました。