あらすじ
戦後70年になり、昭和の時代が遠くなるなか、
満州事変から始まる「昭和の戦争史」について通観する1冊。
取り上げるのは、国のために戦って散った日本人、
日本を信じたアジアの人、そして日本人を讃えた世界の国など70の秘話。
終戦以降、朝鮮戦争や自衛隊誕生までを収録。日本は昭和をどのように戦ったのか?
私たち日本人が語り継ぐべき歴史がここにある。
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Posted by ブクログ
タイトルにある通り、日本が昭和の時代に経験した所謂15年戦争中に活躍した軍人たちの様々なエピソードを紹介する内容となっている。本書は平城天皇(現上皇様)が戦後50年、60年、70年にあたって寄せられた御言葉から始まる。その中の15年戦争という表現に対する意見から始まり、満洲事変、日中戦争、大東亜戦争と続く戦争はそれぞれが明確な終戦に該当する出来事があった事から、15年戦争という言葉を否定する立場をとる。結果、それらを明確に昭和の戦争と分けた事から、本書のタイトルになっている様だ。
歴史は捉え方見方によって、後世に対する伝え方もだいぶ変わってくるが、本書の場合、所謂右寄りに捉える傾向の書籍に分類されるだろう。かつての日本の戦争行為を肯定的に捉えるとまでは行かないものの、ある特定の視点から見れば、確かにそうした記載もできる、という歴史記述から考えれば、肯定的な文面が多いため、取っ掛かりにくい面もあるかも知れない。だが、あくまでエピソードを一つの出来事として捉えて、感情を出さずに読む分には良いだろう。勿論、筆者としては日本の侵略行為や平和を乱した行為自体を正当なるものと断言するのではなく、あくまで、登場人物一人一人が描いたであろう、日本の戦争の理想像を代弁して描いたに過ぎない。場合によっては代弁ではなく美しく感動のストーリーに仕立て上げられたと(殆どが亡くなってしまっているが、当の本人たちは)感じるものもあるかもしれない。
中身としては、先の昭和の戦争中の海外の日本協力者のエピソードが特に面白い。汪兆銘や蒋介石、インドやベトナム、インドネシアなど各国の独立の獅子たちの話などから、日本の戦争が彼らにとってどの様な影響を与えたかについてのエピソードが多いので、若干この辺りからも「大東亜戦争は正しい戦争だった」という雰囲気を感じる。だが前述した通り、それを感じさせるストーリーそのものは、ある歴史の中の美しい秘話だけを取り上げて並べた結果であり、その他日本の侵略行為全体を取り上げなかった結果に過ぎないから、よくある右寄りの違和感を感じる程ではない。寧ろ、日本の戦争を扱った他の書籍では余り取り上げられてこなかった様なエピソードもあり読み物としては面白い。時代は敗戦から戦後の自衛隊設立後にまで及ぶので、それに関わる話(自衛隊の活動に影響した人物たち)も斬新なものに感じる。
繰り返し述べるが、本書の記載だけが日本のかつての戦争全体ではない。捉え方や見方は人により異なる。戦争の歴史を学びたい人にはお勧めできないが、既に様々な書籍で「かつての戦争」を知り、自分なりの捉え方ができている人が読むものではなかろうか。何も知らずにこれが全てだと誤認すれば、よくある大東亜戦争礼賛者が1人増えるだけになる。悲惨な戦争の中で身を呈して大義に殉じた人々がいた事を知る、それが本書を読むスタンスになる。