【感想・ネタバレ】マルクスと批判者群像のレビュー

あらすじ

1840年代後半、ワイトリング、ヘスなどとの相互批判のなかにいた一人勝ち以前の若きマルクス。等身大の姿から思想の本体と可能性を探る。良知思想史を代表する一冊。解説=植村邦彦

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Posted by ブクログ

1948年に開催された共産主義者同盟の第二回大会で、『共産党宣言』の執筆がマルクスとエンゲルスに委嘱されるにいたるまで、若き日の二人と思想および運動の両面で相克を演じた活動家たちのすがたを追い、その実像を明らかにしています。

主にとりあげられているのは、ヨハン・ヴィルヘルム・ヴァイトリング、カール・シャッパー、モーゼス・ヘスの三人です。とりわけ、マルクスやエンゲルスのような学識をもたない一介の渡り職人だったヴァイトリングについて著者は、1946年の討議でマルクスにその「無知」を厳しく論断された出来事から叙述をはじめ、その思想がマルクス=エンゲルスに劣るとみなす予断を排してていねいにたどっています。それとともに、1946年にいたってヴァイトリングを理論的に否定することができるようになったマルクスの思想形成の過程も解明することがめざされています。

本書において著者が採用しているスタンスは、マルクスらの科学的社会主義の立場を優れたものと前提し、彼以前の共産主義を空想的社会主義に分類するような態度から一線を画しており、あくまで思想史研究者の立場からマルクスにかかわった思想家群像たちのすがたを正しく認識することがめざされています。そうした取り組みを通じて、マルクスの理論の卓越している点を、あらためてたしかめることに成功しているといえるように感じます。

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2025年01月04日

Posted by ブクログ

マルクス・エンゲルスの若き日々、そして彼らの先達であった活動家たちに焦点を当てた一冊。

マルクス研究および社会思想史として優れているのは勿論ですが、人間ドラマとして読むだけでも大変面白い。革命に生きた人々の触れ合いと相克を丹念に描いており、惹きこまれること請け合いです。

特に主役の一人である活動家ワイトリングの姿は印象深い。コスモポリタン的な矜持と高いカリスマ性によりドイツ社会革命運動を牽引するワイトリング。しかし、その傲慢さと理論性の欠如により挫折し忘れ去られてゆく様は読み手の心をざわつかせます。

初版1971年なれど、今もってその輝きを失わない名著。是非どうぞ。

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2012年12月26日

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