あらすじ
本書は中国漁船衝突事件、東日本大震災など国防の危機において自衛隊のトップを務めた折木氏が、やむにやまれぬ思いで綴った一冊である。氏は語る。「なぜあれほど聡明な日本人がこと安全保障に関しては、誤解を恐れずにいえば稚拙ともいえる議論しかできないのか」。なかでも安保法制を「戦争法案」だという声に、これほどまでに自らの身を捧げた活動が理解されていないのか、とむなしさすら覚えたという。戦後70年享受してきた平和をこれからも維持するためには、感情的な議論ではなく「相手からみた視点」が必要となるにもかかわらず。本書で折木氏が、中国はいま日本のことをどうみているのか、極東のパワーバランスを各国はいかに認識しているか、などの議論を行なうのは、まさにそのためである。新興国の台頭、「力の空白」を埋めるテロ組織……。「元統幕長の目」に、冷戦終結以降、ますます不安定化する世界情勢はどう映っているのか。そうした状況を踏まえてはじめて、集団的自衛権、日米ガイドライン改定、自衛隊の果たすべき役割についても議論のスタート地点に立てるはず。「昭和の自衛隊」と「平成の自衛隊」の違いとは何か。「いま研究すべきは、じつはアメリカだ」と折木氏がいう、その真意はどこにあるのか。安保法制に賛成の人にも、反対の人にもぜひ手にとってもらいたい、命を賭して国家に尽くした男が語る「戦争と平和」の本質。
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Posted by ブクログ
元自衛隊最高幹部による安全保障論。東日本大震災対応の経験のみならず、現在の国内外の情勢、自衛隊の成り立ちからの歴史など、深い洞察に基づくわかりやすい安全保障論となっており、参考になることが多かった。
Posted by ブクログ
超雑感メモ
存立危機事態の説明にしばし出てくる「機雷掃海」は防衛出動なのか、武力行使なのか?
武力行使の中でもっとも防衛的で、国民感情面で反発の少なそうな例なのではないだろうか。この初歩的な疑問はまず私が勉強すべきところである。
こうした疑問が出た際に短絡的に「政府は騙そうとしている!」「軍国主義化だ!」と否定するのは誤りであろう。
国民としてそうした点も含めて冷静な判断が求められるとともに、政府にはビジョンに基づく一貫した政策を通すための努力と説明責任」が、そしてメディアにも「正しく伝える責任」が求められている。
Posted by ブクログ
日本人の安全保障への理解が乏しいと、だからかつて制服のトップを務めた人間として止むに止まれず筆をとったとのこと。
自衛隊の歴史、対テロ戦争、日中関係、極東のパワーバランス、自衛隊の今後、日米同盟など、日本の安全保障について基本的なところを網羅してる。
でも個人的には、それって他の研究者が書く本と変わりなくって。タイトルにある国を守る責任、統幕長を経験した人間だから書けることがもっと盛り込まれてればなと思った。