あらすじ
外務省はいかに開戦を指導したのか?
なぜ対米開戦は回避できなかったのか。外務官僚たちの終戦工作は、どうして実を結ばなかったのか――。外務省内の組織的対立や官僚たちの動向を軸に、開戦から終戦にいたる通史をたどりなおす。『昭和天皇実録』をふくむ史資料を精緻に読み解き、外務官僚たちの苦闘を伝える一冊。
[内容]
第1章 外務省の開戦指導
第2章 外務省革新派の形成とその変容
第3章 前史としての経済戦争
第4章 日独伊三国同盟と日ソ中立の虚像
第5章 日米戦争回避の可能性
第6章 戦時下の日独ソ関係と対中政戦略
第7章 戦争終結への苦闘
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Posted by ブクログ
【悲惨な犠牲を伴う戦争を決断するのも、戦争を早期に終結させる道を探るのも外交である】(文中より引用)
軍部の影響力が強まる中,外務官僚が太平洋戦争前後でどのような外交を試みようとしたかを研究した作品。外務省として一枚岩でなかった当時の状況を垣間見るとともに,時の外交当局がどのような世界認識を抱いていたかを明らかにしていきます。著者は、外務省外交史料館編纂官などを歴任した佐藤元英。
幣原喜重郎を始めとする欧米派の外交潮流から革新派と呼ばれる潮流に至るまで,幅広く外務官僚の動向を視野に収めながら,当時の情勢の推移を緻密に記した意欲作。陸軍や海軍を始めとするアクターとの間で,外務省がどのように影響力を確保しようとしたのかについても記されており,大変勉強になりました。
少し読みづらい面もあったのですが☆5つ
Posted by ブクログ
8月になると毎年、戦争特集が放送され、その悲惨さを強調するものが大半であるが、悲惨さを自覚すれば、二度と戦争を起こさないものだろうか?本書をはじめとして史料に基づく戦争に関する書物を読めば、以下に戦争回避が困難であったか、情に訴えて回避できるほどの生易しいものでないということが理解できる。本書は外務官僚に焦点をあてているが、「昭和陸軍秘録」「昭和陸軍諜報秘史」同様の組織(本書では外務省)の統制が取れていないことは驚くべきことであり、幹部に情報が上がっているにも関わらず、適時、適切な決断がいかに困難であったかを認識できる。
Posted by ブクログ
開戦宣言が米大使館の不手際で事前通告されず、真珠湾攻撃が無通告開戦なったと理解していたが、そもそも通告そのものが国際法上不十分なものであり、もともと無通告開戦を企図していた可能性が高いとは!このことは、もっと広く知られるべきである。