あらすじ
ウォルポール時代のイギリスを例に取りつつ、政治的腐敗が必ずしも国民の不利益につながらないことを明らかにした「腐敗の効用」(日本エッセイスト・クラブ賞受賞)、進化論は自然科学ではなくイデオロギーであると看破した「歴史を見る目」ほか、「タブー用語について」「真の戦闘者・徳富蘇峯」など全8篇を収める。
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Posted by ブクログ
歴史や政治についてのエッセイ集です。
「腐敗の効用」は、田沼意次やイギリスのウォルポールの治世を振り返り、後世から腐敗を批判されがちな彼らの時代が、社会・文化の繁栄をもたらしたことを検証しています。その上で、腐敗を糾弾する「正義」の声が、むしろ社会の活力を衰退させるという逆説が、歴史上しばしば見られることを論じています。
「英語教育考」は、著者と平泉渉との間でおこなわれた、いわゆる「英語教育論争」に際して、著者が展開した主張が簡潔に示されています。文法・訳読中心の伝統的な英語教育が果たした役割を擁護する著者の立場は、たいへん説得力があるように思えました。
そのほか、ウィリアム・モリス、三島由紀夫、徳富蘇峰についてのエッセイが収められています。いずれも「人」に迫る著者の筆が生き生きとしていておもしろく読めました。個人的には、とりわけ蘇峰論が興味深く感じました。