あらすじ
大物ギャングだった亡父の跡を継がず、時計じかけの機械職人として暮らすジョー。しかし謎の機械を修理したことをきっかけに、その平穏な生活 は叩きつぶされる。百戦錬磨の元スパイ老女、有能きわまりない美女、亡父の知人たち……個性豊かな仲間とともに、ジョーは世界を覆わんとする陰謀に立ち向かう。疾風怒濤の傑作エンタテイメント・ミステリ!
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Posted by ブクログ
いやー長かった。1冊の本にこんだけかかったの久しぶりやわ。本の重み(内容じゃなくて重量)で腕つりそうになるし、肩凝るし…。
話の筋は単純な冒険活劇勧善懲悪もん。地味な時計職人が巻き込まれていく全世界崩壊的悪巧みを防ぐために獅子奮迅の大活躍。
それだけの話にどれだけ盛るんやと…スチームパンクありゴシックありホラーありスパイ小説あり拷問あり格闘あり銃撃戦ありエッチあり百合ありショタあり…
バラエティとかてんこ盛りとか既存の言葉では言い表せんくらいに盛りに盛って、あちこち破たんしまくってそれでもとりあえず、力技で全伏線回収してる(と思うが数えきれんので分からん)
ほんで、これが大事なんだけど、最高にオモロい。書き込みが多すぎて読みづらいくせにオモロい。なんだこのパワー、なんだこの密度、小説家ってのは血筋で強くなったりするのか(作者はジョン・ル・カレの息子)。
ハーカウェイ、見逃せない小説家、遅まきながら発見したぞ!しかし、これよりスゲ―小説書かれたとして、俺の体力がもつのか
Posted by ブクログ
長かった。そして大変面白かった。とてもとてもイギリスだと思った。
ミステリで冒険小説でSFで、そして元気なばあちゃん(失礼)が大勢活躍するあたりが実にイギリスっぽいと思ったの。
「モンティ・パイソン」みたいで。
紳士の国だけど労働者の国でもあるイギリス。
取り澄ましたところもあるけれど、下世話なところもあり、ブラックなユーモア(しかも結構なドタバタ)が大好きなのがイギリス人。
そんなわけで、最初は非常にとっつきにくいのです。
そうね、150ページくらいまで。
主人公はまだ30代だというのに、世界の片隅で時計の修理をなどを行う機械職人としてひっそりと生きている。
じーちゃんの技、じーちゃんの教えを忠実に守って暮らす堅実な日々。
そこには、大物ギャングつまり犯罪者であった父への反発も多分にあった。
それが訳もわからないうちに世界的な大陰謀に巻き込まれていくのである。
「何も知らない」と言っても信じてもらえない。
政府機関は、超法規的措置を取りジョーを追いつめる。
ジョーがなにも知らないから、読者も何もわからない。
とにかく世界の真実をすべて明らかにする装置の秘密を、ジョーがもっていることになっているのだ。
世界の真実がすべて明らかになったら、これ以上の争いは起きないだろうというのが開発者の思惑だった。
究極の平和が訪れるはずだった。
しかし人間はそんなに強くはないのである。
真実を受けきれない人々は狂ったり暴動をおこしたり、そしてそれを悪用して神と同じ高みに登るという野望を持つものが現われるに至って、それは世界どころか宇宙すら破壊するほどの最終兵器となる。
ここでまさかの神学的展開。
“しかし神の最も顕著な特徴、神の神らしいところだと誰もが思う側面は、沈黙だ。人間のことに対するあの偉大なる神々しい無関心だ”
“祖父の考えでは、神は(かりに存在するなら)人間が心のなかで何を考えているかなどお見通しで、そんなものになんの感慨も抱かない。そんな信仰よりもっといいのは、自分らしくふるまいつづけて、神になかなかよくやっていると思われるようにすることだ。だからもろもろの教訓や本質は日常生活のあらゆるもののなかに隠れている。世界の形を学べ、そうすれば神の心がわかるだろう。”
神さまは私に『神曲』を読んだからといって安心するな。
もっともっと考えろとおっしゃる(ような気がする)。
友の死の真相を追究するため、祖父が自分に残したものの正体を知るため、そしていろいろなしがらみのため、ジョーは敵に立ち向かう。
これまでの自分を捨てて、やらねばならないことのために自ら危険に飛び込んでい…っているはずなんだけど
“なんでいつもおれが逃げるんだ。(P586)”
思わず噴いた。確かに。
圧倒的に強い、神を目指している敵に対して、ジョーはあまりに普通過ぎて無力。
だから知り合いに、父の仲間だった人たちに、じーちゃんを知っていた人たちに協力を申し出る。
絶対者に対して、元気玉のようにみんなの力を借りるジョー。
国という形が残るならと、国民の犠牲を見てみぬふりをしている国の機関に対しても言い放つ。
“目的は手段を正当化するなんて言い訳はよせ。正当化しないから。目的にたどり着けないから。結局“手段”だけが幅をきかせることになるんだ。それが現状だ。”
祖父の世代からやって来たこと、父がやっていたことなどが現在のジョーに力を与えてくれるのだけど、それがまあ格好いいのよ。
両親がいて、祖父母がいて、仲間がいて、それらがジョーという人間を作っていったのだなあということが、最後の大活劇へと繋がっていくのである。
ただし、読むのは大変しんどいです。
1時間に40ページしか読みすすまない。
何度も登場人物表を読みなおして頭を整理しながら読んだけど、とうとう400ページ辺りで最初から読み直しました。
で、満を持して残り300ページを読みましたが、読み直してよかった。
いろいろすっきりしましたから。
大満足。
Posted by ブクログ
とても厚い本でした。途中、2つの時間軸で構成される。現代と、イーディの若かりし頃と、話が進む。またイーディがかっこいい。痛快な活躍ぶり。現代でもだけど語りっぷりが面白いのです。命は永遠ではないのはわかってるけど無くなったのはショックでした。
あとジョーの父親と祖父との関係が泣かせる。影で支えるって美徳だ。自分なんていいことをしたら認めてもらわずには言われないような気がする。マシューは息子として、父親として偉大だった!