あらすじ
ニーチェの真意、ハイデガーの試み、ケインズの卓見……20世紀はあらゆる哲学、思想、社会運動が「ニヒリズム」と対峙した時代であった。本書は京都大学における「現代文明総論」講義をまとめたもの。現代の先進国に生きるわれわれは、かつてなく自由になり、便利で快適な生活環境を実現してきた。しかし、本当に、われわれは「善き社会」を実現できているのか? 西田幾多郎と「近代の超克」について論じた京都大学最終講義を収録。解説・松原隆一郎。
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Posted by ブクログ
佐伯啓思のすごい所は、その簡潔さと分かりやすさだと思う。
階級と権利による政治から、誰もが等しく参加できるようになった政治への移行。
世界が大衆化することによって、失われてしまった価値があると説いている。
マニフェストを掲げなければならなくなるほど、均質になった政党。それらが求めている普遍化された自由や民主主義は、反対に中身のない空虚なものとなってしまう。
社会の方向性に価値を見出せなくなった人間は、今を消費することにばかり目が向いて、長い生を生きるためにせっせとお金を貯めてゆくことで安心する。
本書を読む中で、ふと筆者が言いたいことを先回りして理解した部分がある。
結局、私たちは今を便利に消費するあまり、ニヒリズム的状況に気付いていないのではないか。
どのように生きるかを自分の内に見出すのではなく、自分の外に求める在り方。
均質で、良質なサービスを求め、不当や理不尽に耐えられない顧客のそれと同じである。
こうした手がかりを、ゆっくりゆっくり追っていくことは本当に面白い。