あらすじ
直木賞作家・桜木紫乃にとっての母なる一冊。
私のあこがれてやまないものが、本書のなかにあった。
長く長く大切に読み継がれますように――直木賞作家・桜木紫乃。東北の小都市で、暮らしを愛し、文化を愛し、詩や小説を書き続けてきた女流の見事なエッセー集。
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Posted by ブクログ
岩手県南に在住する作家のエッセイ集。前半のエッセイを読むと著者の父母や祖母にまつわるテーマが多く、しかも、死にまつわる話が目立ち、身につまされ、深く考えさせられるのだが、後半になると綺麗なリズム感のある、さらさらと流れるような文章で日常を切り取ったようなエッセイが増える。前半のエッセイも良いが、後半のエッセイの方が好みである。
自費出版ゆえに発行部数も少ない本書は、直木賞受賞作家の桜木紫乃の目に止まり、19年の時を経て文庫化されたようだ。
本書を手にしたのは、何故か一関市内の殆んどの本屋に山積みされていたからで、読んでみるとその理由が分かる。殆んどのエッセイが、岩手県、或いは一関市に所縁のあるテーマであった。
『母の戒名を胸に』に登場する白崎の天神社などは地元の人間でも殆んど知らないかも知れない。
『仁丹のドクトル・メジチェーネ・笠原』も一関市民なら、ニヤリとするようなエッセイである。
もしも、桜木紫乃が絶賛しなければ、間違いなく埋れてしまったであろう佳作が陽の当たる場所に登場し、こうして手に取ることが出来たのは、本当に嬉しい限りである。