【感想・ネタバレ】脳に刻まれたモラルの起源 人はなぜ善を求めるのかのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

功利主義、義務論主義、徳倫理学

・モラルファンデーション理論
社会心理学では、倫理観を記述する概念として、5つの道徳感情が根幹をなしていると提案されている。
1傷つけないこと
2公平性
3内集団への忠誠
4権威への敬意
5神聖さ・純粋さ
1、2は、個人が倫理的価値観の中心に置かれている。
3-5は、個人よりも、社会の秩序に重点が置かれている。
モラルファンデーションのバランスには個人差があり、個人がどの倫理的価値に重きを置くかは、人によって様々。
VBM解析によると、脳の構造の違いを反映している。

政治の脳科学
p30
アメリカでは、政治心理学という社会心理学の一分野がある。そこでは、保守主義あるいは自由主義に傾倒する人に、どのような心理的特徴が見られるかが長年研究されてきている。

ニューヨーク大学のジョン・ジョストの理論では、保守・リベラルは、二つの軸によって特徴づけることができる。
「伝統的文化を維持する立場」対
「社会における変化を推進する立場」

「社会における不平等を容認する立場(実力主義を推進する立場)」対
「社会における不平等を許さない立場」

ジョストは、…個人がどの立場を好むかは、「不確かさへの態度」と「恐怖への過敏性」であると提唱している。…環境の不確かさや、生存を脅かすような恐怖(たとえば近隣国からの軍司威嚇など)を感じることで、それに対処する必要性を感じる個人にとっては、保守的なイデオロギーがより魅力的で心地よいものだと感じる。逆に、社会の不確かさや生存を脅かすような恐怖を感じない人は、リベラルな思想に共感しがちである、というものだ。

p32
保守的な人のもつ心理的特徴が数多く同定されている。政治的に保守的な人は、死への不安、社会の不安定さへの不安、曖昧さへの不寛容、秩序を求める気持ちなどを強く感じているようである。リベラルな人の特徴は、新しい経験に対してオープンであること、認知的に複雑な状況を好むこと、不確かさへの寛容などである。
保守的な人がもつ恐怖に対する鋭敏な感覚は、視覚のレベルでも知られている。…政治的にリベラルな人と保守の人が、他人の顔をどのように認知しているかを調べた研究では、保守的な人は同じ顔を見ていても、その人が「脅威である」と感じる度合いが強いようである。…
保守的な人は、排泄物や不衛生なものに対して嫌悪感を強く感じるようである。不衛生なものへの敏感さと保守的な思想への傾倒には強いつながりがあるようで、実験に来た被験者に手を洗うように指示を与えただけでも、不衛生なものへの嫌悪感が刺激されるからなのか、一時的に保守的な態度を取るようになる。

p38
VBM解析による、政治的信条と脳構造との関係
→脳の3つの部位が個人の政治的信条と相関している。
前部帯状回(リベラルで大きい)、右の扁桃体(保守で大きい)、島皮質前部(保守で大きい)。

・信頼ゲーム
二人一組の実験。「投資家」と「受託者」
「投資家」は、実験に参加した時点で資金1000万円を受けとる。その中から、「受託者」にいくら投資するかを決める。受託者に渡ったお金は、その時点で3倍になる。受託者は3倍になったお金のうち、投資家にいくら返すかを自由に決める。
「投資家」のあなたは、「受託者」の、友人知人等、特定の人に、いくら投資しめすか?それがその人に対する、あなたの信頼度です。

・オキシトシンを鼻スプレーすると、信頼ゲームの投資額が増える。

・しかし、オキシトシンは、内集団バイアスを強める効果もある。外側にいる人たちへの差別的行動となってしまうことがある。
アムステルダム大学のドゥドルゥの研究では、オキシトシンを嗅ぐことで自族民中心主義を引き起こすことが明らかになった。

・オキシトシン受容体の遺伝子の違いで、ポジティブ思考かどうかや、扁桃体の大きさ等に違いが出る。

・VBM解析により、個人の共感力と相関する脳部位を探す研究。
個人の共感力と相関する脳部位の多くが、道徳感情(モラルファンデーション)と関係する部位と共通。

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2019年09月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

脳から倫理、政治信条、幸福を明らかにしようとする試みが書かれている。脳画像研究が使用できるようになり、これらの哲学的な内容を明らかにできないかという試みが広がっており、著者もその中心となっている研究者と思われます。古くから解き明かそうとされてきたこれらを、尺度で捉え、脳画像との相関を見ることで、明らかにしようとすることは意味があることであるが、まだ因果関係にまだ届いておらず、またその知見のすきまが大きすぎて、何とでも解釈できてしまう気がする。これからの分野を著者の解釈で解説した現時点までの知見をまとめたよくできた本と思う。

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2013年06月28日

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