【感想・ネタバレ】二つの山河のレビュー

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Posted by ブクログ 2016年09月08日

第1次世界大戦後、日本は中国のドイツ占領地を侵略し、多くのドイツ軍人を俘虜にした。俘虜たちは日本各地に収容された。その中で徳島県の板東収容所は俘虜への寛大な対応をしたことで、現在でも日独友好のシンボルとなり、跡地は「日本ドイツ村」として残されている。

その収容所所長、松江豊寿が主人公。なぜ、彼は俘...続きを読む虜へ人道的に接したのか。著者は松江の所長時代の前後を丹念に調査し、松江が会津人だったことがその理由だと考える。

幕末、会津人は幕軍の代表として維新政府と戦い、朝敵のレッテルを貼られたまま、敗者となった。明治時代になっても生き残った会津人は社会から虐げられる。農民は痩せた土地を押し付けられ、軍人は軍の中で差別を受けた。松江は会津人であるというだけの理不尽な扱いに耐えつつ、軍人としてのキャリアを積み重ねていく。

そこで、出会ったドイツ人の俘虜たち。自分は会津、一方はドイツ。共に祖国のために尽くしたが敗者となってしまったが、それは時の運。戦争に勝つか負けるかは個人の責任ではない。松江は収容所の俘虜を敗者ではなく、1人の不運な人間として扱うことに決めた。

松江は収容所所長を引退後、若松市長になるなど、会津地方のために尽くす。しかし、彼は自分の経歴を語るとき、軍歴を記さなかった。自分は日本軍人ではなく、会津人だったという思いなのだろう。

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Posted by ブクログ 2014年05月08日

こんなに心暖かくなる歴史小説は読んだことがない。かくなる軍人が存在し、西独においても敬慕の念を抱いて語られたことが誇らしい。

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Posted by ブクログ 2024年04月08日

「真のサムライ」と称された会津人の松江豊寿にまつわる心温まる歴史小説。
松江氏は、教科書レベルでは歴史の表舞台に登場しない人物かもしれないが、このような清廉で筋が通った歴史上の人物の生きざまを学ぶことは大切だと思う。
GWに徳島鳴門市ドイツ館を訪れるつもり。
ちなみに、このような歴史の中で、ベートー...続きを読むヴェンの第九が日本で歌われるようになったのも、この徳島から。

以下抜粋~
・真崎中佐は、俘虜たちを精神的、肉体的に抑圧すべき対象とみなしていた。一方松江中佐は警備兵たちにいかなる暴行も許さず、俘虜たちに対して人道的に接するよう求めつづけた。
この頃、松江はよく語った。
「かれも祖国のために戦ったのだから」
これはむろん、だから戦いがおわってドイツに帰還できる日まで大切に扱ってやるべきだ、という思いーいってみれば、松江個人の「武士の情」に発したことばであった。

松江はまた、「ドイツ人俘虜たちの中には学者や技術者が少なくないから、その指導を受けたい場合は所管の商工会議所を経て申し出よ」と意見具申していた。

・いわゆる「会津降人」に対する薩長藩閥政府の非情さは、戊辰戦争終結後の明治2年春まで会津側戦死者の遺体収容を許さなかった行為にもよくあらわれていた。そのような話を聞いて育ったからこそ、かれは青島からの「ドイツ降人」に対してあえて武士の情を示しつづけたのではなかったか。

・依然として会津差別のつづいていた明治時代にあって、旧藩以来の武勇の伝統を持つ会津人がつける職は、軍人か巡査しかないといわれていた。しかも陸軍幼年学校や士官学校なら授業料は不要だから、貧しい会津の子弟はこぞって軍人をめざしたのである。

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Posted by ブクログ 2011年05月14日

第111回直木賞。
第一次大戦中の徳島県、板東俘虜収容所が舞台。ここの所長・松江豊寿は当時では珍しく、ドイツ人俘虜に友愛をもって接した。
ドイツ人の文化・文明を尊重し、また、技術を吸収した。印刷、木工、写真、縫製などの技術のほか、パン、ハム、ビール、お菓子などの製造方法や、音楽、スポーツなどだ。収容...続きを読む所内で小売店を開くことを許したほか、近所の住民に技術指導したりした。
なぜ松江がこれほどに、武士の情けをもって俘虜に接したか、彼が会津生まれだという背景に基づいて描かれている。
ちなみに、バウムクーヘンでおなじみユーハイムも、俘虜収容所が発端の会社だそうだ。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年06月16日

幕末の会津藩士物語3篇でしょうか。

板東俘虜収容所は、地域と一体となって繁栄して、とても楽しそうに思えました。稀なところだということがとても残念ですね。
明治維新の特に会津藩の話は、読んでいてとても辛いです。
時代の流れがものすごく大きくて、それが戦いの渦に流されていってしまったような、悲しい歴史...続きを読むを感じます。

二つ目の話の、”おやす”がとても良かったです。肝の座った、武家の女性の強さを感じました。

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Posted by ブクログ 2022年05月07日

表題作。立場の違いを超えて、思いやったり気遣ったり出来るのは、上に立つ者にあってほしい美徳。
それが大将に無かった2作目は、だから忠臣の哀しさ悔しさが描かれていて、切ない。
一つの史実の陰にいくつの名もなき死があったろう。語り継がれることもない大偉業の虚しさが、3作目だろうか。

あまり読み易いもの...続きを読むではなかったのは、自分の知識不足によるものかもしれない。かすかに無念。

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Posted by ブクログ 2020年09月26日

再読、★2.5だがおまけで。
表題作ってテレビ番組か何かで同じことやってたこともあるのか、何と言うんでしょうか、超えていく感覚が正直無いです。他の2作も何か濃さが足りないんですよね、、直木賞?という感覚はあります。
しかし表題作の題材は熱いものがあります、結局人間の持つ実直さの熱量は古今東西誰をも動...続きを読むかすということかと。主人公も、捕虜も、お墓を無償で守り続ける人も、皆、その心は同じです。

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Posted by ブクログ 2019年03月16日

鳴門市ドイツ館に今度行こうと思うので読んだ。
松江所長たちと俘虜ドイツ人たちとの交流。
日本人でこんな方がいらっしゃったのだなぁと。

淡々と記録という感じで、もっといろんな会話やエピソードが細かく書かれてたら良かったのに。小説としてはどうだろう??

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Posted by ブクログ 2012年07月26日

小説というより、記録って感じだったなー
表題のは良かったけど、あとの2作はイマイチ頭に入ってこなかった。

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Posted by ブクログ 2012年03月07日

坂東俘虜収容所モノの二冊目。「バルトの楽園」ほどはひどくなかったが、これで直木賞なのか〜。史実を大事にする作者の姿勢はある意味好感がもてるが、フィクションでディテールをもう少しふくらませてもよかったのではないか。買って損する本ではないが、薦めるか、と言われるとちょっと微妙。

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