あらすじ
若き医師・原田の留守を襲った突然の悲劇――拳銃で撃たれて血の海に横たわる父。明らかに凌辱を受けた上で殺されていた妹。そして原田の恋人までもどこかへ連れ去られたらしい……。――誰が何のために……?復讐心に燃え、原田は父が臨終のときに漏らした“ケイサツニ、クラシイ……”という言葉の意味を追跡しはじめた。が、その核心に迫った時に彼は、三十余年前に行われた残虐な事実と、それを抹殺しようとする巨大な権力の存在を知った……。サスペンス・アクションの傑作長編!
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久しぶりに
ハードバイオレンスと謳うだけあって、物語の初っぱなから 目まぐるしい展開となる。主人公は 事件の核心が父親の過去にあり、自分の恋人が巻き込まれたことを知る。普通の人なら そこで途方に暮れるところだが この主人公は 凄まじい行動力を発揮し、時には他人に助けられながらも仇討ちと恋人の奪還を果たす。日本から舞台をアメリカに移しクライマックスを迎えるなど スケールの大きい物語だが一気に読み終えた。
Posted by ブクログ
1977年の西村寿行作品。
父親と妹を謎の組織に殺され、婚約者も拐われた青年医師・原田が、医師の地位を捨てて父親の死の謎に迫る、前半社会派ミステリー、後半復讐サスペンス。
序盤から、原田の父親が太平洋戦争時代に従軍していた、ということに秘密があることは読者に示されていましたが、中盤過ぎに読者に明かされる秘密が、『アレ』だとは!
1981年のベストセラー、森村誠一先生の『悪魔の飽食』よりも4年も早く、それもエンタメ作品として、『アレ』を扱っていたことに衝撃を感じましたね。
読者に謎が明かされてからは、復讐サスペンスになりますが、壮絶なのはラスト40ページ。
舞台はアラスカの山岳地帯になり、巨大な敵が日本国家やCIAから大自然になる、つまりは冒険小説の要素が強くなります。
こうなってしまうと、前半のミステリー要素がどうでもよくなってしまいますが、このラストが作品中で一番熱い気持ちにさせられました。
このラスト40ページを元に、後の西村寿行作品『狼のユーコン河』が生まれたのかな、とも思います。