あらすじ
シリーズ第5弾。「トラウマ(心的外傷)」という言葉は今や日常語として、「私にはトラウマがあって」などと話す場面も珍しくありません。けれども、トラウマとは何か、その結果何が起こるのか、どう対処するのが適切なのか、ということについてはまだまだ正確に理解されているとは言えません。本書ではこの障害の正しい理解と、対人関係療法の視点から対処するアプローチをやさしく解説していきます。
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Posted by ブクログ
思ったより良い内容だった。
よく考えたらトラウマに特化した本は読んだことがなかったかもしれない。
トラウマとは「自分・身近な人・世界への信頼感」が失われた状態が続いていること。確かに。
衝撃的な出来事の後に支えてくれる人がいるとトラウマになりにくいのというのも重要な指摘。
「脅威のセンサー」の概念も画期的だと思った。
トラウマ体験を直接的に思い出すことだけが症状ではなくて、トラウマに似ている状況が無意識に脅威と感じられて対人過敏になってしまう。
トラウマと全然関係ない場面・相手に対して脅威のセンサーを発動して対人関係がうまくいかなくなったり自分を責めたりする。
そうだったのか。
自分にとっての脅威は何だろうと考えさせられた。
複雑性PTSDについてもっと症例説明が欲しかったので他の本も読んでみようと思う。
Posted by ブクログ
トラウマを抱えることで独特の発想や防衛反応があることから、本人と周囲の人との通常の会話にずれが生じていって人間関係が壊れていくさまが手に取るように書かれている。このような視点からトラウマの怖さと困難を鮮やかに書き出している本はほかに類をみないと思う。著者はほかにもトラウマPTSDの本を書かれているが、人間関係の維持の困難さという視点ではこの本が一番秀逸だと思う。
トラウマといえば覚醒亢進症状などに目が行きがちだけども、本人の支援という点では、こうしたトラウマ独特の反応(思考の在り方)によって人間関係の維持ができなくなっていくということが本当に怖いことだと思う。
Posted by ブクログ
すごく参考になった一冊で、トラウマ反応で対人関係に起こりうる問題からのアプローチが詳しく書いてあるので、当事者にも支援者にも読んで欲しい一冊。
Posted by ブクログ
星5つの理由は、比較検討できるほど同一ジャンルの本をよく読んでいないので、
・情報の偏向や、読者を(治療目的以外での)操作をするような文言があるかどうか?
・救われたい人を適切に導くのではなく、救われた気分にするための本じゃないのか?
で判断しました。
この2点において、星5つです。医学的見地から見たお話、特に専門家個々の異論は、一切関知しません。
今まさに深刻なPTSDに困っている人で、
・身近な人も当てにならず、
・まして何か治療を受けるなんて!
と思っている人には、一読をおすすめしたい良書です。
過去のPTSDや、「なんとなく乗り越えたと思っている」人でも、
・時折すごく自分の感情を扱いづらい
・時折嫌な記憶に苦しめられる
と思っている人にも、一読をお勧めしたい書です。
何故なら、
「私はPTSDなのか、そこまで行かないけどやはり何か後遺症があるのか、あるいは別の精神病ではないか?」
と判断したいとき。
素人の判断は危険極まりない。
新聞のコラム程度の情報量では、判断材料が足りない。
かといって、タイトルに「!」や「?」が踊る本の類は、信用ならない。
この本は、『判断用の背景情報』としてお役に立つと思います。
「回りにいる誰かはPTSDなのかも知れない」
「ちょっと解らないけれど、もしかして」
「でも、聞いていいことなの?どうやって尋ねればいいの?」
と考える際、『友人/知人/隣人は、どんな風に接したらいいのだろう?』と考えることでしょう。
平易な言葉で事例紹介(当然、個人情報には配慮されてますよ!)している本でもあります。
PTSDに苦しむ人の多くは、周囲の『無知・無理解』が二次災害です。
「いやいや、よく知らないし」
「私本当に普通なんで、わからないから」
という世間的には当たり前の反応すら、『拒絶』というカタチになってしまう(こともあります)。
興味本位でも何でもいい、とにかく知って欲しいと願っています。
知らずに『悪意なき拒絶』を突きつけるより、
「知った上で、何をするか。何を言うか。」
とお考えになってみてはいかがでしょう。
Posted by ブクログ
トラウマ体験は
基本的には孤独の体験です。
トラウマ体験そのものの衝撃だけでなく
そのときに自分が全くひとりぼっちだと感じることも
重要な特徴です。
そもそもトラウマは過去に起こった体験によって起こっているもので
過去を変えられない以上、トラウマとの折り合うと言うことは
その「受け止め方」を変えることによってしかありえません(心的事実の再構成)
■変化の中で起こる感情が強すぎてコントロールできない
自分の感情が強すぎてコントロールできないと感じると
「自分への信頼感」を失います。
自分が大丈夫だとは思えなくなり
自分はどうなってしまうのだろう、と怖くなります。
トラウマは強い恐怖や怒りなどを伴うことが多く、
その圧倒的な感情が怖いために
思い出すことを回避したりすることになります。
思い出すことを回避すると、「慣れる」ということができなくなり、
トラウマ体験を乗り越えることが
それだけ難しくなります。
また、「慣れる」という意味だけではなく
「役割の変化」を乗り越えるためには
自分の感情にふれることに
大きな意味があります。
「役割の変化」という「遭難状態」から立ち直るためには
自分の現在位置を知ることが
とても大切だからです。
自分の現在位置を知るとは
どういうことかというと
「今、起こっていることが、自分にとってどういう意味があることなのか」を
知るということです。
Posted by ブクログ
付き合っていく上での否定しない言い方は大変役に立つ。そんな風に感じさせることしてしまって本当にごめんなさい。辛いでしょうね。あなたの言っていることを心から聞きたい。怖いと感じてしまってきちんと聞けない。距離をとることがありうる。気づいてあげられなくてごめんなさい。そんな気持ちにさせてごめんなさい。本当につらかったね。これからはもっと安心してもらえるようにする。健康な人として扱うことは不適切な言動は不適切とみなす。コントロールできなければ親しい関係を維持することはできない。トラウマを思い出すことは前進。安全な環境基本的な生活を維持する。乗り越えるのが難しい役割の変化であって傷ではないととらえる。新しい役割への適応。
加害者への怒りは絶望感とのセット。悲哀のプロセスの一部。間違った行為をしたから謝るのではなく、本人に孤独な体験をさせたことを謝る。本人がそう感じた以上、そう感じてよい。それは尊重されるべきだ。そういわれてどう思ったかを聞く。