あらすじ
高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。
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Posted by ブクログ
『ドミノ』で恩田陸に興味をもってこの作品で完全にはまりました(笑)本当にどうなるのか先が気になるのに読み終わるのが勿体無いって気になってしまった(笑)貴子と融の関係だけでなくその他の登場人物たちにも物語や秘密があって重要な役割があったり(笑)杏奈のおまじないとか(笑)本当に気持ちが良い読書でした(笑)こういう本を読んだ後は余韻が良いから次の読書に困ってしまう(笑)
Posted by ブクログ
【読むきっかけ】
・小説を読みたい!おすすめの書籍から、高評価のものを探す。
・すぐ読みたい。奥様(読書家)の書棚にあるやつで、何かないか?
・あった。昔、読もうとしたやつだ。評価も高い。読もう。
【読後】
・素晴らしい小説だ。50を過ぎても、高校生の頃に戻ったような気持ちになれた。こんなに感情移入して読めるなんて、正直、思わなかった。
・主人公の二人が、恋愛で結ばれる結末が欲しいわけではないし、どう想像しても、そんなにハッピーエンドで終わりそうにないと、融と貴子の心情に感情移入し、不安で満たされる。でも、やっぱり、この状況が好転することを願いながら、ただひたすら、人生の波を乗り越えるように、歩き進める。
・融は、上りきるまで時間のかかりそうな坂の上に、母も含めた和解の結末の未来を掴むことを誓う。貴子は、辛かったことを振り返り、苦難は乗り越えたら、全て過去のこと。不安や苦しい気持ちを乗り越えれば、そこには新しい始まりがあり、きっとそれは、頑張った先には、悪くない未来があるのだと、覚悟のようなものを見せてくれる。そして最後は、このピクニックを奇跡に仕立ててくれた立役者が、客観的に融の成長を見せてくれ、貴子と美和子が苦難を乗り越えた笑顔を見せてくれ、これからの明るい未来を予想させてくれる。最高じゃない!
【読後メモ】(印象的な箇所)
□水平線を眺め、それぞれが感じる表現が良い。
・自分たちはまさにその境界線に座っている。昼と夜だけではなく、たった今、いろいろなものの境界線にいるような気がした。大人と子供、日常と非日常、現実と虚構。歩行祭は、そういう境界線の上を落ちないように歩いていく行事だ。
・まるで、水平線が世界の裂け目であるかのようだった。障子か何かがそこだけ薄くなっていて、向こう側の世界の光が漏れてきているみたいだ。しかし、上下から夜が攻めてきていた。少し視線を上げ下げすれば、漆黒の夜と波が水平線目指して押し寄せているのが分かる。
□融と忍の会話が良い。
・融が、「死んだ父に会いたい?」という忍の質問に対し、「どうだろう。薄情みたいだけど、今はまだいいな。うん、今はいい」と答える。「だけど、うーんと先になって、俺に子供とかできたら、会いたいと思うかもしれないな」
・忍の説教。「だからさ、タイミングなんだよ」「あえて雑音をシャットアウトして、さっさと階段を上がりきりたい気持ちは痛いほど分かるけどさ。だけどさ、雑音だって、おまえを作ってるんだよ。雑音はうるさいけど、聞いておかなきゃなんない時だってあるんだよ。ノイズにしか聞こえないだろうけど、そのノイズが聞こえるのって、今だけだから。あとからテープを巻き戻して聴こうと思った時には、もう聞こえない。おまえ、いつか絶対、あの時、聞いておけばよかったって後悔する日が来ると思う。」
□解説(池上冬樹)より
・友情の本質「並んで一緒に歩く。ただそれだけのことなのに、不思議だね。たったそれだけのことがこんなに難しくて、こんなに凄いこと」だと、生徒たちが深く感得して、それぞれが許すことの喜び、生きることの楽しさをあらためてかみしめるのである。そのかみしめる行為は、実は読者自身にも及ぶ。人物たちに感情移入し、僕らは静かに郷愁を覚えるのである。
→それ。覚えたのである。
【おまけ】
思えば、高校生活、あまり自己表現できるタイプではなかった。好きになった後輩に対しても、違う道を進むであろう未来を想像し、告白せずに終わったこと。父母の離婚で、父不在の中、母と姉と過ごしていた中高時代の記憶や、高校での長距離マラソンで、何と闘っているのか、時折思う、暗い思いや妄想を、ぶんぶんと振り払いながら、高い山を上り下りした記憶と交差して、何とも言えない気持ちになる。
私でさえ、そうなのだから、きっと、皆さんそれぞれの苦い経験、その中で少し感じた、嬉しかったことなどと重ねて読み進めることで、より一層、楽しめる小説なのだと思う。
Posted by ブクログ
本屋大賞に選出されているだけあって、読みやすい。
尚且つ、高校生の青春を言語化した作品でもあったことが面白かった。
読んでみて思った感想として真っ先に思い浮かんだのは、犯人目線の推理小説みたいだということだった。
ずっと主人公である甲田さんと西脇くんは、異母兄弟だということを黙っていた。それをほとんど知らない周囲の目ではなく、知っている2人目線の話だったことがとても新鮮だった。
愛のかたちについて、ずっと悩んでいた。
嫉妬も、愛おしさも、敬う気持ちも、全部愛だとわかっていて、愛に疑問を抱いていた。
その疑問というか、概念というか、相手を思うことこそが愛なのではないかと直感で教えてくれる作品でもあった。
ずっと憎たらしいと思っている西脇と、憎たらしいと思われているんだろうなと感じている甲田。その2人の間には愛があって、愛と認めていいのだという気持ちになった。憎いという気持ちは、きっと愛がないと出来ない。それは、自分への方向だったり、家族への方向だったりそういうものでいいんだと思う。
周囲の関係も愛だと思う。愛は恋やパートナーだけじゃなく、友人や知り合いの中にも溢れていて、それも愛だと言うこと。
Posted by ブクログ
たしかにただ歩くだけの内容だけど、語り口がかなり詩的で読んでいて面白かった。
なぜ振り返った時には一瞬なのだろう。あの歳月が、本当に同じ一分一秒毎に、全て連続していたなんて、どうして信じられるのだろうか、と。
まさにこのセリフがこの小説を表していたのかな。
Posted by ブクログ
繫ぎ留めておきたい、この時間を。
高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。
思春期のもどかしい感じや友達との会話が私の学生時代の記憶を呼び起こしてくれました。
腹違いの同い年の兄妹が同じ学校でしかも同じクラスという奇跡を呪いたくなるような現実。
お互いの距離の取り方が、リアルでより話に入り込むことができました。
実際になさそうでありそうな設定に、話の展開が今後どうなっていくのか気になりながら読み進めることができました。
決定的な事が起きるわけではないけど、歩行祭と同じ速度で自身の思い出を振り返りながら同じ視線で読めたのかなと思いました。
刺激や劇的な展開を望むことはできないけど、何でもない学校生活の中で青春のきらめきをを感じられる小説でした。
あと一歩の勇気が出ないときもあるけど、その一歩で自分や周りの友達がいい影響を受けるときもあるから恐れず前を向いて進んでいかないと。