あらすじ
高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
前半は登場人物が多く、物語全体を通して大きな事件や出来事もない。だが、読み進めるにつれてそれぞれの登場人物の良さが感じられるようになった。大人の世界をまだ知らない、だが子供っぽくはない、そんな高校生という曖昧な時期に直面している時期の人間を見事に表現していると思った。青春小説ではあるが、恋愛観についても気付かされることが多かった。読後の満足感、幸福感が高い作品だと感じた。
Posted by ブクログ
大きな展開の変化はないが、ページをめくるにつれてじわじわと心の灯りが明るくなるような作品。
個人的には美和子が貴子に恋人と別れたことを打ち明けるシーンが印象的だった。
美和子はお互いに完璧な相手と付き合っているということに自己陶酔していたから、本物の恋ではないと言う。それに対して貴子がそれも恋だったんじゃないと答えるのが凄く好き。
人間というのは正解だと思われる事象と比較して、自分の行いを評価する傾向がある。それは時として気持ちを楽にしてくれる薬にもなるが、自分を苦しめる毒ともなる。
恋愛感情にかかわらず、名前をつけることができない曖昧なものにはその傾向が顕著に出ると思う。
しかし自分で恋だったのだと定義してしまえば、他人からどう言われようと一旦は認めてしまっても良いのではないだろうか。
この物語のように、歩くという行為は長時間続けば苦痛になるが、喉元を過ぎればそこで抱いた様々な感情や疲労という熱は忘れてしまう。
そういった忘却機能に抗うために、一度名前を付けるという行為が必要なのだと思う。そうすることで未来へ繋げることができ、何かのきっかけで再検討の余地が与えられるのではないだろうか。
Posted by ブクログ
なんて幸せな小説なんだろう。
読み終えた後、池上冬樹さんの解説にあった「多幸感」という言葉がよく分かる。
いつだってそうだが、特に若いころのことは、後になって「もっとこうしていれば・・・」と思うものだ。
『夜のピクニック』のストーリーでは、大きな事件は起きない。
それなのに、退屈しない。
たくさんの人物の数だけのストーリーがきちんと並んでいて、しかも最後の展開に向けて収束していく。
読む人の年代や生きてきた環境によって感じ方は変わるだろうが、子を持つ親の一人としては、中学生くらいになった子どもに読んで欲しいと思える本だった。
> 今は今なんだと。今を未来のためだけに使うべきじゃないと。(p344)
>
こんな言葉があった。
学生のころは背伸びせず、その時にできることを、楽しいことも苦しいことも、全力で味わう方がいい。
大人になって取り返せるものもあるけど、そうでないものもある。
大人の側から読むと、ちょっと寂しくなる側面もあると思う。
子どもの側から読むと、もっと今を楽しんでおこう、と考えられると思う。
> みんなで、夜歩く。ただそれだけのことがどうしてこんなに特別なんだろう。
そうだね、杏奈。不思議だね。
貴子は杏奈にそう答えていた。
並んで一緒に歩く。ただそれだけのことなのに、不思議だね。たったそれだけのことがこんなに難しくて、こんなに凄いことだったなんて。(p414)
>
ただ親しい人と時間を共有する。
それは当然なようで、いつまでも続くことはない、特別で大切な時間だ。