【感想・ネタバレ】花鳥の夢のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

狩野永徳を主人公にした小説。歴史にうといが、狩野派や永徳の活躍した時代のイメージがつかめた。もはや狩野家は大企業のような規模、永徳の悩みとかは大企業の幹部の悩みって感じかも。

資産や歴史、格式のある家の跡取りとして生まれた永徳。エリート意識も高いなかで、絵師として新しい画風を開拓したいという葛藤もあり、恵まれている環境に苦しめられもする。永徳と対照的に描かれる、等伯の人柄ととらわれない画風がさらにその悩みを際立てる。

男社会の描きかた、矜持との葛藤などがテーマのように思った。あまりそういうところと、絵画の技術的なところには実感を持たなかったので、少し文字が上滑りしたところがあった。

面白かったのは、絵のなかにみる人の心の余裕を持たせる、というところ。花火とかでも、暗闇こそ浮かび上がるなぁと思っていた。花火は誰もが同じように心にうつしだされるが、そのあとの静寂はひとりひとりの胸に迫る時間なのだと、絵の示唆をうけて考えた。

しかし、主人公の絵に展開があるのかというと、悪相になったな、と秀吉に言われたとおり、どんどん自分の矜持にからめとられてそちらとの戦いに苦しんでいく主人公。倍返しだ、とかそういう世界観を感じた。

絵の技術的なこととかは話のなかで丁寧に解説されていて、狩野派の絵を見たときの助けになりそう。そのあたりの絵の知識をつけたい人にはおすすめ。

あと、死などの不浄すらも絵の主題としてしまうことに罪悪感を覚えた主人公が、「それがなんだ、私は神や仏に支える身ではなく、絵師なのだ」と開きなおるのは新鮮だった。絵を描く喜びが伝わってくる勢いのある作品。

情感や情緒はあまりないが、丁寧に書きこまれたサラリーマン向けの歴史小説。

0
2020年03月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

天才絵師 狩野永徳
天才ゆえに弟子に任せられきれない葛藤、
狩野派頭領としての守りの立場と一絵師としての新たな境地を切り開く攻めの気持ちとの葛藤、
長谷川等伯の技量を認めながら、それに負けまいとする矜持、
常に葛藤を抱えながら、国宝を次々と産み出し、絵を描き続け、絵を描いている最中に過労で亡くなる。
絵については負けることを許さず、描き続ける壮絶な人生を、絵を描くことで得る至福の中で終える事ができたのであって欲しいと思う。

0
2015年05月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

狩野永徳の話。永徳は絵を見るときに音を聴くように心掛けている。よく描けている絵からは音が聞き取れる。風の音が心地よい深山幽谷、水音のとどろく瀑布、軽やかな流水の瀬音、鳥のさえずり、草木のそよぎ、哄笑が響き渡りそうな禅僧のたたずまい、研ぎ澄まされた静寂が耳を清めてくれる仏たち。良い絵からは、どれもはっきりと清らかな音が聴き取れるという。
永徳は、現物を可能な限り模写して粉本として手元に置き、必要な都度参考にして、絵を描いた。観念で描くのではなく、鳥にしろ、町にしろ、現物を、そのものの持つ生命力、躍動感を大切にした。
洛中洛外図を描き始めるに当たっても、己の目でその通りに何があるか確かめ、その上で、何を描き、何を描かないか考えた。
狩野永徳は、長谷川等伯という絵師に出会い、嫉妬をするほどその絵を評価していたが、素直になれず、あれはダメだとけなしていた。もっと近づき、尊敬しあえるような間柄になっていたら、もう一回り狩野永徳も大きくなれたのではないかと感じた。

0
2019年10月04日

「歴史・時代」ランキング