あらすじ
「戦争をするか、否か」を決めるのは、私たちの責任になる。日本は、戦後70年を経て、集団的自衛権の行使を容認し、軍事力を使う基準を緩和した。この決断は、私たちに「敵を選ぶ」ことを強いる。救うに値する味方とは誰なのか? 価値を守るために敵を殺せるのか? こうした問いへの判断を誤れば、自国の平和を損ね、世界に災禍をもたらすことになる……。本書は、「戦争を防ぐ」という固い信念のもとに、「なぜ戦争が起きるのか」を徹底的に現実的に分析する。「こんなはずじゃなかった」と後悔しないための、全国民必読の一冊。
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Posted by ブクログ
すこし昔の本だけど国際政治や安全保障政策に興味があればぜひ読んでほしい本。
昨今、何かと防衛力強化が唱えられる世の中だが、「防衛力を強化」するというのは威嚇できる兵器を買いそろえることではない。なぜ戦争は起きるのか、日本は世界はどういう安保政策を取ってきたのか、入門的に解説されていてこれから考えるための教養が身につく。
Posted by ブクログ
2014年7月の集団的自衛権に関わる安保法制の閣議決定がなされ、改めて戦争や安全保障をめぐる議論が活発化している。
本書は、そうした現状を踏まえ、これまでの安全保障政策や戦争や抑止力、外交の問題を丁寧に整理している。
政府の広報では、明確な説明が十分になされていないと今でも思うが、本書レベルで十分に説明してくれれば、ある程度納得できる部分もある。
つまるところ、何のための安全保障で、何のための集団的自衛権であるか、というところが最も重要で、それが「平和」のためであるならば、もっとその効用について議論されるべきである、という点だ。
「平和」のために、本当に集団的自衛権を容認しなければならないのか。
テロや戦争が起こらないよう、予防的な支援外交を行う、日本と中韓など、緊張関係にある国との関係を良好にする、など他の選択肢はないのか。
そして、第二次世界大戦へと向かうことになった日本が行った過去の戦争について、本当に国内で検証され、二度とそうしたことが起こらないように、また同じことを他国にさせないように、反省とその対策研究がなされたのか。
こうした議論がまだまだ積み残っている段階で、安易に強行採決してよいのか、疑問に思う。
著者の最終章の言葉は重い。
”当時の日本人には、戦争を選ぶ権利も責任もなかった。いまの私たちには、その権利と責任がある。決めるのは、私たちだ。”
Posted by ブクログ
戦争がなぜ起こるのか。また、抑止の限界と意味。今後の日本の方向性。まさに現実的な視点に立脚するリベラルな安全保障。集団的自衛権とあと何が必須かが分かる。
・もともとイギリスの場合は、国民に戦争の負担を強いる代わりに参政権を与えた経緯がある。
・中国が強大な脅威となり、安全保障環境が本当に厳しければ、逆にアメリカから見捨てられる心配は減る。
・平和だったのは日米同盟があったから。または平和憲法があったから。抑止の仕組みからすると、両方の要因が重なって平和を維持したと考えるのが妥当だろう。
・広島への原爆投下はトルーマンの意志だっだが、長崎への投下は政治的な判断はなかった。
・戦争が割に合わないと思わせるためには1.軍事力による脅し=抑止。2.共通利益の拡大。
・謝罪については、国内社会の中に反動を生み、歴史和解に貢献しない、という研究もある。それよりも事実を承認する作業が有効だという。
Posted by ブクログ
日本で安全保障法制等が話題になってる昨今、戦争についてもう一度しっかり考えようという本。
冷戦から今にかけて安全保障環境がどう変化してきたか、特に日中、米中関係に焦点を置いて解説してて、どうなって中国が日本に脅威と認識されてる現状に至ったかってのが勉強になったし、中国がガチな脅威じゃないことが逆に日本の安全保障環境を悪化させてるってのが面白かった。
それから国際関係論で出てくる基本的な概念を解説して、日本はどうすべきかって話になるんだけど、集団的自衛権について安倍政権の考えが不透明なせいでシグナルになってないのでここについて議論を深めること、中国との関係改善にもっと力を入れること、先の戦争について日本人で検証することを著者は主張している。
Posted by ブクログ
複雑で難解な安全保障に関する議論。入門的であると同時に現状もしっかり押さえたこういう本が役に立つ。戦争や安全保障の基礎的な視点を提示しつつ、いま現在の国際状況や日本の立ち位置も整理する。全体的に安全保障論の専門家らしく、要点をついてわかりやすい。
安保法はついに公布されたわけだけど、賛成も反対もここからが本番だとも言える。安保法をどう運用していくか、あるいは安保法をいかに廃止させるか。いずれの立場であろうと、まずは戦争のありようや安全保障の仕組みを知る必要がある。