あらすじ
「ドル本位制」が揺らいでいる。ユーロや他の通貨がドルに取って代わったわけではないが、ドルの一極体制は確実に崩れ始めているのだ。いったい、ドルはどこへ行くのか。ユーロや日本円、人民元はどうなるのか。為替の「無極化」とはいかなるものか。大蔵省国際金融局長、財務官を歴任、為替市場への積極的な介入で「ミスター円」の異名をとった榊原英資が、為替の行方を大胆に占う。
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Posted by ブクログ
・貨幣的というよりは構造的な現在のデフレに対して金融緩和は意味がない。貨幣供給の増加は株式市場や不動産市場に流れて資産バブルを引き起こすだけであり、白川日銀総裁がインフレターゲットの設定を頑なに拒否するのはまことに適切である。断言している。
・企業、家計を含めた債務が過去最高。経常収支の赤字も過去最高。世界経済を背負っていくだけの力はないアメリカ。金融政策と通貨は統一化されているのに財政がバラバラ。リーマンショックを引き金に南北格差が大きな問題となって顕在化してきたヨーロッパ。これにとって代わると目されているのが中、印。近年とみにその発展がクローズアップされてきているが、そもそも歴史を振り返れば、ほとんどの時代、世界の中心は中国、インド。欧米が覇権を握ったのは現代に至るわずか200年であり、中印の発展は寧ろ復権と言うのが適切。もとに戻ったというべき。日本は大きな外交の岐路に立たされている。
・多くのヨーロッパの国は高福祉ゆえ高負担となているが、日本に比べれば格差は少なくそれぞれの人たちが堅実でそこそこ豊かな生活を送っている。満足度は決して日本に比べて低いということはない。
・円高は日本経済の状態が少なくとも相対的には他の先進国よりもいいことの結果。強い円を背景にオーストラリア等へ資源投資を増加させ資源の確保に努めるべき。輸出産業といっても原料は輸入している。円高はデメリットばかりではない。
・20世紀のキーワードは経済成長であり物質的豊かさであったが、21世紀のキーワードは環境、健康、安全。
目の覚めるような多くの学びがあった。
Posted by ブクログ
良き本でした。内容は新たな知見ではなく、どちらかと言えば今までの内容の整理って感じです。
ドル360円のときから今に至るまでの為替、世界情勢の流れからEU形成にまつわる話、更には中国や東、東南アジアの話までまとめて整理してあり、金融と為替、通過や経済がまとめてある非常にいい本だと思います。
まとめ話の他にも、インフレに関してIT化とグローバリゼーションによりマクロ経済学の前提が崩れた為、金融政策によって是正されるものではないとしてインフレ目標に否定的な見方、アメリカの緩やかな崩壊と当面の維持、中国、インドの30~40年後の台頭など面白いことも書かれています。
強いて言えば、人間の欲望に関して全く触れられず、為替と金融と歴史だけで全てを説明していたことが特徴的ではありました。