あらすじ
死刑論と言えば、これまで存廃論議に終始していた。存置にしろ廃止にしろ、正義論を根拠に語ると、結局は優劣を比較したり、感情論に終始したりするなど、相対的なものでしかなかった。従来強調される「人的道な見知」「犯罪の抑止効果の有無」「誤判の可能性」…には、大きな錯誤があるのだ。本書は、これまでの議論や主張をコンパクトに整理。人はなぜ死刑を求めるのか、あらたな視点で死刑の究極的論拠をさぐり、罪と罰の本質をえぐりだす。
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Posted by ブクログ
タイトルが挑発的であるが、内容は単に「死刑肯定」ではなく、「死刑反対論」に対する穴をつく、ということに終始していて、単純に死刑を肯定する本ではない。
むしろ、死刑を肯定する側も必読であるかもしれない。
また、現状の政府の国家の死刑に対する姿勢への批判もある。
ただし、死刑に対する既存の論を並べただけの本である印象も拭えない。なるほどと思わせる所はあるが、最終的に結論が曖昧である気もする。
個人的には冤罪による死刑反対論がいちばん説得力があると思っているが、彼は「新幹線や車などの産業は、必然的に事故を起こす。まったくではないが、これは死刑制度にも同じことがいえる。ゼロにする努力はするが、その死刑制度そのものはのこすべきであるというのが、いまの世論である。」とする。
しかしこれは違和感がある。
産業による事故は完全に偶発的である(人為的に殺しているならそれはそれで解決せねばならない問題である)。
しかし、死刑執行は人が下して初めて執行されるものである。決して偶発的ではないはずだ。もちろん検察の取り調べに瑕疵があるかもしれないが、それでもなお求刑にたいして裁判官は死刑判決に関して回避する余地が残されているし、それは偶発ではなく任意によるものである。
コレに対して著者はあまり明確な反論を示しているとは思えない。やはり冤罪による死刑廃止論は一定の論拠があると思える。