あらすじ
ビールやチョコレートなどで知られるベルギー。ヨーロッパの十字路に位置したため、古代から多くの戦乱の舞台となり、建国後もドイツやフランスなどの強国に翻弄されてきた。本書は、19世紀の建国時における混乱、植民地獲得、二つの世界大戦、フランス語とオランダ語という公用語をめぐる紛争、そして分裂危機までの道のりを描く。EU本部を首都に抱え、欧州の中心となったベルギーは、欧州の問題の縮図でもある。
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Posted by ブクログ
ベルギーで興味深い点がいくつか。
1.言語
ベルギーは北部がオランダ語圏、南部はフランス語圏となっており、言語は一種のアイデンティティのような位置付けになってる。20世紀後半にルーヴェン大学では言語分裂が起きたり、選挙では国家分裂の危機に陥ったほど、両言語間の確執は深い。ベルギーが1つの国としてまとまるのは、サッカーベルギー代表を応援する時だけだと揶揄されるのも理解できる。首都ブリュッセルは例外的に両言語とも使用されるらしい。現地の雰囲気を実際に行ってみて感じてみたい。
2.独立までの道のり
世界史でうっすら習った記憶もあるが大部分を忘れていた。近代まではフランスやオランダの支配下にあったこともあり、現在国内に公用語が2つあり、文化も多少違ってくる。大戦期には中立を掲げながらも、ドイツに侵略される歴史があるなど、独立国家として地位を築き上げるには長い月日がかかった。
3.王制
ベルギーの歴史を語る上では、歴代の国王を外すことはできない。
「注意深く周辺国との関係を見ながら振る舞ってきたレオポルド一世。国を(自分を)豊かにしようとして大概進出に夢中になったレオポルド二世。ドイツからベルギーを守ろうとして国民を鼓舞したアルベール一世。ベルギーを守ろうとしたことが裏目に出たレオポルド三世。「ベルギー」を維持するために連邦化に邁進したボードゥアン一世。そして、「分裂危機」のなか分離主義者と闘ったアルベール二世。」
いつの時代もベルギーを守ってきたのは国王であった。
Posted by ブクログ
現在ベルギーに住んでいる。何も知らずに住み始めたものの、街中の銅像や歴史的建造物に触れる機会も多いことから、さらっとは知っておきたいと思い手に取った。ベルギーが一つの国であり続けるために奮闘する歴代の国王の人間性や考え方に焦点をあてて歴史を語っており、とても分かりやすくおもしろい。地名がマニアックなので、たまに地図を確認しながら読むとよいかもしれない。昨今のEU金融危機くらいまでの記述があるのもうれしい。
世界史はどうも苦手だが、日本史と同じように、こうしてひとつひとつの国にしぼって考えると楽しめるのかもしれないという大きな気づきも得ることができた。
Posted by ブクログ
「ヨーロッパの十字路」と呼ばれるように、周辺の大国に翻弄されてきた国。通史で学ぶ機会は少ないが、ヨーロッパ史において常に重要な役回りを演じている。
独立を果たしたオランダとは異なり、スペインに留まったことでベルギーは波乱の歴史を歩むことになる。毛織物の産地フランドルや大航海時代以降特に発展するアントウェルペンを擁することもあり、古くから大国間の係争地となる。
19世紀に入りようやく独立を果たすものの、その歴史故の地域間での言語問題が国家を分断してしまう。分裂を防ぐために連邦制を取り入れるものの、地域間対立は今なお根深い。ワロンとフランデレンについて、「あちらを立てればこちらが立たず」という状況が続いている。形だけの君主政ではなく、良くも悪くも国王が時に国政を左右してきた国。
Posted by ブクログ
以前住んでいたベルギーの歴史を今頃になって勉強。
あちこちに挟まれた小さな国の大変さとシニカルなベルギー人を少し理解できたかな。
ベルギーは道ではない、国だ。
Posted by ブクログ
安定の物語シリーズ。ベルギーはEUのなかでも先進的なイメージだが、あまり知らなかった。意外に後進的というか国王が政治に介入することが期待されているかのような政治体制。言語がオランダ語とフランス語に別れ常に独立を含んだ議論、闘争が繰り返されてきた。大国に挟まれた小国ゆえの悩みと苦労というところだろうか。植民地コンゴへの対応だけは大国並みの収奪主義で歩調をあわせて、権益にしがみつく。親しみはわかないが、小国がどのように独立を維持するか、その苦労を学ぶべき国ということだろうか。
Posted by ブクログ
ベルギーは1830年にオランダから独立した若い国。プロイセン・ドイツやオーストリア、フランスなどに挟まれ、大国の思惑に翻弄されてきた国。フランス語とオランダ語の2言語国家という不安定さがつきまとう国。
このヨーロッパのど真ん中にあり、EUの首都を持つ国の歴史は面白いです。