あらすじ
手にカッターナイフを握りしめ、街角で雨に打たれつづける女。その姿を放ってはおけない二人の男。女と同様、胸の奥に深い哀しみを抱えるヤクザ者。生きるのに無器用な、売れない小説家。それぞれの孤独が出会ったとき、ほのかに希望は生まれ、やがてそれは、大きな愛情へと育ってゆく。太宰治賞作家が描く、ひとを愛するよろこびに満ち溢れた「純愛小説」の傑作!
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Posted by ブクログ
再読
コーフクを喰らう時には、かなしみも喰らえ。
たのしさを喰らう時には、さみしさも喰らえ。
同(ひと)つものとしてあるものを、同つものとして、ちゃんと喰らえ。
コーフクばかり、たのしさばかり食いちらかして、うち捨てられたかなしみ の山が、澱んで、腐って、膿んじまって、そのあまりの腐臭に驚いて、あわてて皆で間に合わせのフタばかり、かぶせている。
皆さんは、そういう馬鹿だ。
そして俺は、そのフタづくりに参加する気もない、もう一つの馬鹿だ。
わたしもフタづくりをする気のない大馬鹿です・・。
Posted by ブクログ
久しぶりに恥ずかしくならない純愛小説を読んだ。
登場する男どもが実にかっこいい!特に、人生という言葉から「虹」を連想するジローの器の大きさと懐の深さに憧れる。
そして、愛する女性から「わたし、うまれてきて、よかった」って言われるなんて男冥利の極みである。
Posted by ブクログ
この人の話を読むと、世の中悪い人なんていないんじゃないか、という暖かい気持ちになる。
常識ではこんなことありえないとは理性はわかってます。でも、理性とは関係のない自分はこんな素敵な出来事を信じてる。
辻内さんのハッピーエンドはいつも心地良いです。むずむずしないハッピーエンド。
Posted by ブクログ
客観的に見れば、優れた作品では無いかもしれない。でも何故かグッと来てしまう本があるものです。
50を過ぎたオジサンが「良かった〜」と言うのは気恥ずかしいような純愛御伽噺(ちなみに単行本のサブタイトルが「TOKYOオトギバナシ 」です)。
だから、人には薦めません。
ミュージシャン崩れで人が良いばかりで売れない四十歳の小説家と、心に大きな傷を持つ二十歳の娘の純愛ですからね。さらにそれを取り巻くのが「親父」と呼ばれる退職刑事とその気の良い奥さん、さらに子供の頃に妹を亡くしてしまった孤児上がりのヤクザ。
ある意味ありふれた設定だし、クサいようなところもあるのですが、辻内さんらしい優しさの表し方と、ちょっとしたオチによって心地良い笑いが浮かんだりするのです。