あらすじ
インド出張中に勤め先がつぶれた挙句、帰国してみれば、故郷である奈良県ちはや市で唯一の総合病院院長だった父親が急逝していた。遺された病院も倒産寸前と発覚! 元・サラリーマンで医師免許も持たない主人公の青年・風祭翔は、急遽父のあとを継ぐかたちで病院理事に就任することに……。知識も経験もない逆境のなか、父の遺した病院を赤字経営から救えるか?! タイムリミットまではあと三か月。産婦人科医の辞職、医者の勤務体系問題、病院経営と銀行、患者の不満と不安、医療難民、消えた院内アンケート……。著者・福田和代氏の綿密な取材を下敷きに、地域医療の危機と青年の成長が丁寧に描かれる。医療技術が発達することで選択肢と可能性が増えていく一方で、治療のありかた、病院のありかた自体にかかわる課題もまた山積みになっていく――きれいごとだけではやっていけない病院の“今”がわかるエンタメお仕事小説、登場! 「ヒポクラテスのため息」改題。
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Posted by ブクログ
病院小説。
急性期病院の経営面と医者を取り巻く問題に着目している本作。病院に勤務している身なのでつい手がのびていまいました。フィクションながらも現実感のあるような、ないような。
主人公の翔さんは院長先生の実子でありながらも医療とは別社会で生きてきて、勤めていた会社の倒産と父親の訃報のダブルパンチ、そして同時に3か月間という期間限定の「理事長」職につきました。
優秀な人材は企業にとっての何よりもの宝。
理想と情熱で必ずしも彼らをとりまく世界を変えることはできないかもしれないが、それでも、それらがないと、この世知辛い世界に立ち向かえないのも事実だ。少年漫画のようにはうまくいかないのが現実だ。わかりたくない大人の事情もだんだんわかってきてしまい、自分も年齢を重ねてしまったものだ……、とそんなことを思ってしまった一冊。
Posted by ブクログ
祖父が作って父が育てた地方の中堅病院を立て直そうと奮闘する、医療経営小説です。
主人公は海外出張から戻ってきたら会社が倒産しており、ある日突然無職になってしまった青年。しかも、海外で連絡が取れなくなっていたせいで、その間に奈良県ちはや市で唯一の総合病院院長だった父親が急逝していたことを留守電から知る。あれよと言う間に理事の一人に就任することになったのだが、この病院も倒産寸前ということが発覚する。医師ではない主人公は、医療のことに関しては全くの素人。タイムリミットは三か月、その間に病院の経営を立て直していくことができるのか、奮闘の日々が始まる。
病院や医療を扱った話は何冊か読んだことがありますが、病院経営についての話を読むのは初めてだったかもしれません。面白い視点だったと思います。
病院経営というのは、確かに難しい話です。そもそも医療で儲けることができない仕組みにしているのは国の制度ですが、利益がなければ安定した医療の提供も病院の維持もできない。そういったジレンマをよく捉えています。そして、病院の院長は医師でなければならない。医療と経営を分離していない中堅病院などは、医療のプロである院長が専門外の経営分野まで対応しなければいけないというのが現状だろうと思います。様々なものが高騰する中で、黒字経営ができている中小病院は多くはないでしょう。そういう意味では、リアルな展開だったのかなと思います。
最終的に主人公が下した判断は、もしかしたらとても達成が困難な道なのかもしれないですが、試行錯誤したことも、挫折したことも含めて、自分で進むと決めた道ならきっとどんなことも成長につながるのだろうと思います。
もし続編があれば読みたいと思える一冊でした。
Posted by ブクログ
連休2日目、友人に合う待ち時間に一気読み。
同業の友人につい、話したくなった事を書きます(笑)
医療の世界は厳しい。特に地方の中堅病院はかなり厳しい。確かに綺麗事ばかり出来ないもどかしさ。儲けるためには患者さんのためにならないことをやらなくてはならずこれは国の社会保障政策の歪みが病院を苦しめている。
理事として頑張る翔は、こんな病院では何度と無く行われている策をやり始めるが、やはり上手くはいかない。読みながら諦めに近い感情か主人公とともに沸き上がる。そして結末は私が想像したとおりの結末(笑)
これもうそろそろ、翔かまたこの病院に戻ってくる続編希望
Posted by ブクログ
ちょっと珍しいだろう、医療経営小説。自分が全く知らない分野なので興味深く読みましたが、勉強になる半面、エンターテイメント性は薄くて、盛り上がり不足で終わってしまった感が少し。リアルと言えばリアルなのか。