【感想・ネタバレ】エセー5のレビュー

あらすじ

モンテーニュは、16世紀フランスの思想家、モラリスト。彼が残した『エセー(随想録)』は、知識人の教養書として古くから受け入れられ、その真理探究の方法、人間認識の深さによって多くの思想家に影響を与え、今日まで古典的な名著として多くの人々に読みつがれている。「わたしは何を知っているのか(ク・セ・ジュ)?」という句は、モンテーニュの言葉であるが、人間の理性、判断力、知識には限界があることを謙虚に認め、試行錯誤を恐れずに真理を追究しようとしたモンテーニュの思想をよく表している。本巻には、「栄光について」「嘘をつくこと」「怒りについて」など25編を収録。モンテーニュのイメージを一新する平易かつ明晰な訳文で古典を楽しもう。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

モンテーニュにとっての『栄光』とは、今でいう『矜持』とか『プライド』のようなもののような気がします。

”われわれが、正しくふるまうというルールを自分自身のなかから引き出さないならば、そして、罰せられないことが正義だというならば、われわれは毎日、どれほどの悪事に耽るかしれない。”
”神という目撃者が、つまり、わたしが思うに、自分の良心という目撃者が存在することを、忘れてはいけない”

これは『四知』ですね。
天知る、地知る、我知る、君知る。
誰にも知られないということは、ない。

”われわれは、自分のことが話題になるのが気になって、いかに語られるのかは、あまり気にしない。自分の名前が人々の口から口へと伝われば、どんな状況で伝わろうとも、それて十分満足なのだ。”

過剰な承認欲求。

”国家においては、すべてが、子供たちをいかに育て、いかに教育するかにかかっていることは、だれでもわかっている。なのに、人々はこれを親任せにしている――親が常識はずれでも、意地悪でもお構いなしに。”

児童虐待について、モンターニュの時代からあったんですね。
というか、子どもの人権なんてなかったってことですね。

”怒りというのは、ひとりよがりの、思い上がった感情である。われわれは、まちがった理屈に心を揺り動かされているときに、誰かに正当な弁護とか弁明をされたりすると逆に心理や潔白さそのものに八つ当たりすることがよくある。”

自分への戒めとしてよく覚えておこう。

”女たちもこれと同じであって、恋愛の法則にならって、相手に逆に怒ってほしいからこそ、自分で怒ってみせるのだ。”

ちょっと何言ってるのかよくわかりません。
モンテーニュさん、女性と何かあったんでしょうか。

”わたしとしては、先にのべたような賢い人となりを見せんがために、自分の気持ちを窮屈にするくらいならば、むしろ、少しばかり八つ当たりぎみでもいいから、召使いのほっぺたにびんたでも食らわせることをお奨めしたい。わたしは感情を自分のうちに抱え込んで、辛い思いをするよりは、それを外に表すほうが好きなのだ。”

え?え?
八つ当たり、結局OKなの?

”わたしはいつも、《悲しみの少ない女たちほど、派手に泣く》という名言を思い出さずにはいられない。”

わたしもいつも《仕事をしない人ほど、文句が多い》と思っています。
同じですね。…同じかなあ…?違う?

”人間の思考のもっとも普遍的な性質とは、多様性にほかならないのである。”

400年前からこう言われているというのに、未だ進んでいない多様性を受容する社会。
多様性を受け入れるということは、想像力があり、寛容でなければならないということ。
それは難しいことだけど、難しいけど、そうあろうと目指そうよ。

ところで最終章のタイトル『子どもが父親と似ることについて』について。
50ページもあるこの章のほとんどが、医者と医療行為への不信なのです。
ただ、章の最初と最後に、先祖代々医者嫌いの一族と書いているので、間違いではないのでしょうが、正解でもないですよねえ。

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2023年04月26日

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