あらすじ
一七九二年九月、フランス革命下のパリ・血に飢えた民衆によって、日夜ギロチン送りとなる貴族たちを救うべく、彼方イギリスから謎の秘密結社“べにはこべ”がやって来た。騒動の中、絶世の美女マーガリートは、夫パーシイ卿の正体を怪しむようになり…。冒険とミステリーと愛憎劇が織りなす、古典ロマンの傑作。若き日にこの作品に心酔した村岡花子の名訳で贈る。
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Posted by ブクログ
著者は、安楽椅子探偵の先駆けとも言われる『隅の老人』を書いた、ハンガリー生まれの英国女性作家。1905年発刊の本作は、宝塚の上演作品になったり、訳者は『赤毛のアン』で有名な村岡花子さんということで、てっきり女性向けラブロマンス小説かと躊躇していました。しかし、フォロワーさんお気に入りの本とのことで読んでみましたが、いい意味で期待を裏切る内容でした(natsuさんに感謝)。
時は、貴族たちが次々と断頭台に送られるフランス革命下。彼らを救い出してイギリスに逃亡させる”べにはこべ”なる秘密結社が活躍していました。ある時、イギリスのパーシイ卿に嫁いだフランスの花形女優だったマーガリートは、親同然に慕っている兄のアルマンの身の安全を保障する代わりに、その”べにはこべ”の謎の解明に協力するよう、フランス大使に脅迫されます。はたして”べにはこべ”の正体とはいかに……というストーリー。
前半は、この”べにはこべ”のヒーロー的な活躍の噂と、それに憧れつつも危機に陥らせてしまう自身を不甲斐なく思う主人公が、伏線として、過去にサンシール侯爵一家を断頭台へ送ることになった事件や、それを結婚後に夫のパーシー卿に話してからの冷めた関係などが、絡み合う人間関係などと共に語られています。転機は、16章”リッチモンド”で訪れて、そこから後半はハラハラするスリリングな進行で、終盤は驚きの展開が待っていました。そんなラストはハッピーエンドで清々しい読後感でした。また、マーガリートの愛する人を思う一途な気持ちからの行動力と苦悩に心打たれましたが、それ以上に”愚鈍な知性の持ち主”と揶揄されていたパーシー卿が実は明晰な考えと行動力の人だったことに感銘をうけましたね。今回、読むことが出来て良かったです。
それにしても、イギリス人から見たフランス人観や、ユダヤ人に対する偏見や嫌悪が半端ないことなど、当時のヨーロッパの世相の一端が垣間見れた気がして興味深かったですね。
正誤(初版)
P236の14行目:
もはや彼女はアルマンの上を気遣わなくなった。
↓
もはや彼女はアルマンの身の上を気遣わなくなった。
Posted by ブクログ
【あらすじ】
フランス革命下のパリ。ギロチン送りになる貴族を助けるために奔走する、イギリスからやってきた謎の秘密結社〈べにはこべ〉。
イギリス貴族に嫁いだ絶世の美女マーガリートは、愛する兄を人質に取られ〈べにはこべ〉の正体を探るよう脅される。
彼女が〈べにはこべ〉を追う中で、結婚後に愛を失った夫パーシィが浮かび上がってくる。
【感想】
一言で言うなら「高級ハーレクインロマンス」。
名家で長身イケメンの夫パーシィが冷たく見えて、実はマーガリートに深い愛情を持っている! とか女性が好きな要素が詰まっている。
そして、文章の豊かさが素晴らしい。
上流階級の持って回った言い方や豊富な語彙が作品に彩りをもたらしてくれる。
ストーリー自体は良くも悪くも単純明快だが、イギリスやフランスの情景描写を堪能するために読んでもいいかも。
Posted by ブクログ
以前に呼んだのは子供向けの簡易版だったのかな?記憶より詳細だったような。
マーガリート、途中まで「おいおい」って思ってたけど、舞踏会の後のシーンくらいから俄然、応援したくなった。頑張った!
ハッピーエンドで良かった!
Posted by ブクログ
子供の頃、春陽堂少年少女文庫が好きだった、と言いながら、読んだことのなかった『紅はこべ』。先月出かけた東京国際ブックフェアで、村岡花子訳の『べにはこべ』を見つけたのでもちろん購入。
感想。子供の頃感じた読書のワクワク感が再び味わえて大満足。
思えば子供の頃に読んだ本って、言葉遣いがちょっと古風なものも多かった。最近の本は字も大きくて読みやすいけど、なんとも薄っぺらい印象のものも多いんだよね(もちろん一番重要なのは内容だと理解していますが)。
で、『べにはこべ』の内容。前半は多少冗長だけれども、中盤、マーガリートが夫の正体に気づきフランスへ追いかけて行ったあたりから、いきなり話が面白くなる。
これは子供の頃に読んでいたら夢中になっただろうなぁ。なんていうのか、こういう気持ちを思い出させてくれてありがとう。
Posted by ブクログ
表紙がかわいくて買った本。
頭がよくてタフな女の子ががんばる話、大好きです。
16章、マーガリートの心が動き、パーシイの心が動き、それでも触れ合えないもどかしさ!リズムの良い描写に入り込まされます。
主体的な努力、情熱、そして敬意を忘れないということは、冒険する少女たちの、ますます磨かれていくべき強さとして描かれたのでしょう。
純粋にストーリーのみ楽しんでしまいました。とっても面白かった。しあわせです。
Posted by ブクログ
<べにはこべ>は誰なのか、私の正義とは。
宝塚を観てきたので読んでみたシリーズ。主人公がマーガリートですね。人間関係も結構違います。アルマンは8歳上の兄、両親を亡くしてからマーガリートの親代わりとして二人生きてきた。アルマンはアンジェルド・サンシールを愛したが、身分の為にサンシール侯爵にひどい目にあわされた。マーガリートはそれを忘れず、サンシール侯爵とその家族を告発してギロチンに送り込んだ。それを侯爵のいとこであるトルネイ伯爵夫人は恨んでいる。娘のスザンヌはマーガリートの学友であり、彼女を懐かしんでいるのだが。マーガリートとパーシィ卿の仲は冷え切り、昔馴染みのショウブランは倦んでいる彼女に接近する。
マーガリート視点なのでパーシィが本当に謎。燃え上がった恋愛の日々は本当にどこに行ったんだ、というくらい、不仲状態でずっと進む。マーガリートは兄アルマンのために誰かの命を危なくしてしまうのだが、このアルマンは心配されるアルマンじゃない。そこもマーガリートの弱さとして愛おしい感じだけど。何気にアンドリュウ・フークス卿が大活躍。ラストの大逆転は舞台とは違って、ある意味ちょっと地味だけど、夫婦の物語としてはよい終わり。