【感想・ネタバレ】もつれた蜘蛛の巣のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「赤毛のアン」より、本人不本意なアンスピンオフ連作集が好きな自分にはこちらの方が面白い。
ダーク家とベンハロウ家というひとつの共同体が主人公(?)です。
この血族は結婚相手を基本的にお互いからしか選ばない、一歩間違えたら近親相姦一族。
その家族の中で代々伝わってきた「水さし」という家宝。
いきさつや実物も出てきますが、そんなにすごいか??というしろもの。一族以外は骨董としての価値しかないでしょう、みたいな皮肉な描写がモンゴメリらしい。
赤毛のアンを読んだことなく、高畑監督のアンのイメージしか知らない方はモンゴメリの作風を優しく清らかと勘違いしているかもしれませんが、かなりの皮肉やです。
リンバロストの乙女なんか読んだらわかりますが、そういう朝ドラヒロインしか知らなかった読者にとって、ちょっと意地悪でお馬鹿さんなアンは等身大のニューヒロインとして熱狂的に愛されるようになったわけです。
さて、特定のヒロインこそいませんが、核となる女性は何人か出てきます。

まず、美少女ゲイ。美女という表記をすべきでしょうが、ティーンエイジャーはどうしても少女のイメージ。さらにゲイのロマンチックな気質や意地悪あざとい従姉妹ナンと比べてのへたれぶりはどう考えても少女。彼女は水差しなんかよりできたばかりの彼氏に夢中。けれど、一族の男ではないという理由で反対されている。
次にジョスリン。幼馴染と恋に落ちて結婚。しかし初夜にドレス姿から新居から逃げ出して別居。その理由は?
さらに文学少女こじらせちゃったオールドミスマーガレット。家庭を夢見ながら、おどおどまわりを気にして居候。マーガレットのへたれぶりに一番共感したけど、そんなひと多いんじゃないかな。
途中、独身こじらせちゃった男と婚約するのですが、そのふたりのやりとりが「ああああ」となる痛さ。
ほかに戦争未亡人連合から突然情熱が墓場からよみがえるドナ。しかもその相手がよりにもって嫌いだったアイツ。
彼女らの恋愛(?)模様もさることながら、ほかもいろいろ事件が起こり、そこにこの水差しが微妙に絡んできてとにかくおかしい。
結末もモンゴメリらしく、物語のお手本のような終わり方です。
みずさしの行方もね。
アンで有名な作者ですが、ほかの作品もなかなか面白いっていうか、なにせ物語作りの基本を押さえて代金ぶんきっちり読ませる職人ぶり。
これだけのものをかけが彼女が、生涯自分を縛り付け、ほかの作品を書く機会を結果的に奪った赤毛のあの子をだいっきらいになってしまうのはいたしかたないことかもしれません。

0
2014年11月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

≪内容覚書≫
代々続くダーク家とペンハロウ家。
婚姻を繰り返し、仲が悪いような良いような関係の両家。

毒舌のベッキー叔母が受け継いでいた家宝の「水差し」を、
受け継ぐのは一体誰なのか。

叔母が残した遺言に振り回される一族のロマンスを、
時に冷ややかに、時に温かく、生き生きと描く。

はたして「水差し」は誰の手に。

≪感想≫
人間の描写が、相変わらず、面白い。
最初は、一斉に登場する、一族の面々を覚えきれず、
誰がどれ?となるが、
把握できてしまえば、あとは、ぐぐっと引き込まれるばかり。
そこまでいけずに挫折する人もいそうな作品だな、とは思う。

小さな社会の中で、よくありそうなちょっとしたロマンス。
ユーモアと皮肉のスパイスを混ぜ込むことで、
面白おかしく、読ませてくれる。

また、時代は違えど、ああ、いるね、親戚にこういう人、と、
うっかり知り合いを思い出してしまう。

そんなどこにでもありそうな状況、
どこにでもいそうな人間を、
こんなに魅力たっぷりに描いてくれる作品はそうないと思う。

私の本好きの原点は、
やはりモンゴメリだなー、としみじみ実感。

それにしても、この時代のオールド・ミスへの冷たい視線!
今の時代に生きられて、良かったと思わざるを得ない。

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2011年09月13日

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