あらすじ
青年よ、旅に出よ――。大学生の「僕」は、学園祭で講演に来た「花村」という作家にそそのかされて、北への独り旅に出かけた。旅先の下北半島で「僕」は様々な光景に出会い、成長していく。一方、作家である「私」は沖縄をさまよっている。ユタと出会い、色街を歩き、娼婦たちと関わり…。北へ、南へ、旅を続ける男たち。神宿る風景を素描し、「私小説」を擬態した傑作短編集。
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Posted by ブクログ
「金城米子さん」:
既存の言語や文法で表現し得ないもの、あるいは論理体系の外でしか把握し得ないもの、そういったものに遭遇した時、言葉を紡ぐことを業とする作家は如何にしてそれを御すか、という問題についての一例示のような作品。
観音像、七福神、造花、仏様、孔雀の置物、神社のお札、あげくピカチュウまでもが祀られて、もう神仏習合を通り越して、神仏任天堂大習合になっている祭壇。そして、「憑霊型シャーマン」ユタ、金城米子さん。そんな素材の混沌さに呼応して、作品中前半、混沌に満ちた文章になっています。ガチガチの論理も正しい文法もそこにはなくて、描写のみがそこにあるわけです。そして、ユタ、金城米子さんに示唆を与えられる一瞬、その一瞬を境に、ガラリと作品の様相が変わる。作品前半で、これでもかってくらいの描写をドタマに入れられて、その転換は卑怯だよー。やらしいよー。気持ちよすぎるよー。
とまあ、うまい具合に精神的浄化(カタルーシス)が達成されるわけです。難解そうに見えて、意図は汲みやすい。意表をついた好作品でした。